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歯医者で出会った彼女・第19話「UFOキャッチャーとミニスカート」
今日、水曜日は歯医者の日。しかし僕と直美ちゃんは
もうあの歯医者には行くことが出来なかった。
とにかくもう喜美江さんには関わりたくない。
それに直美ちゃんとの約束だから絶対に守らなくては……。
治療中の歯はまた別のところで治療するしかない。
また直美ちゃんと一緒に行く歯医者を探そうと思う。 ということで空いた時間、僕は直美ちゃんをデートに誘った。といっても街の中心部にある人気のパスタ専門店でのお食事デートだった。
僕等は店の近くにあるゲームセンターの入り口で待ち合わせをした。待ち合わせの時間は16時だったが
今日は授業が早く終わったので1時間も早く着いてしまった。
でもただ待っているのはあまりにも脳がない。僕は
UFOキャッチャーでテディベアに限りなく似ている熊のぬいぐるみをGETするため100円硬貨を20枚、手に握りしめ子供のような無邪気な気持ちでここにやってきた。
1回200円、500円で3回遊べる「お得なキャッチャー」ではあるが、
僕は2回で落とす!そう決めてまず最初の200円を投入した。昔の機種と違い最近の機種はアームの爪が甘く、しっかりとぬいぐるみを掴むことは非常に難しくなっている。だからこそ「押し込み」や「引っかけ」などの高度な技術、そしてその動きを予測する物理的な判断力が必要になる。しかし僕は物理が苦手だ。
自慢じゃないが100点満点で16点という悍ましい点数を取ったことがある。でも今現在、生活する上で物理学が必要とは思わない。
まずは獲物のロックオンから始める。落とし口の近くにある
アームが熊の首元に回るものを選んだ。首に引っかけて落とし口の近くまで引っ張ろうという魂胆。希望通り熊は三分の一ほどが落とし口に迫り出していた。
ここまで来たらアームの爪を熊に当てて押し込んでやるだけ。緊張の2投目。
ゆっくりと200円を投入し、アームをほんの少しだけ動かす。あとは僕の拙い物理学が正しければヤツは落ちる!
アームはゆっくりと開いたまま下に下がっていった。そして片方のアームの爪が熊の喉を突き刺した。そのまま熊は引っ張られてゆっくりと落ちていった…。
「やったぁ~!GETだぜぇ~!」
僕はポケモンのサトシのような声を張り上げて一人小さくガッツポーズを決めた。身長30cmに満たない小さな熊だけどこれが400円ならまさにお値打ち!
僕の魂を込めたこの熊はもちろん直美ちゃんにプレゼントするつもり、そのためにここで待ち合わせたのだった。彼女と一緒にUFOキャッチャー
をしてそこで落としてそのままプレゼントしたらどれほどカッコいいだろ?とも思ったが、僕は彼女のためにどうしてもこの熊をプレゼントしたかったので敢えて石橋を叩いて渡った。
カウンターの女性にぬいぐるみを入れる袋をもらい
熊を入れた。これで彼女に渡せるそれらしいプレゼントになった。
ここへ来て約15分、まだ時間があるからもう少しトライして見ようか? と思ったその時、待ち合わせの時間より40分以上も早く制服姿の直美ちゃんが現れた。
びっくりしたのは彼女のスカートの丈の短さだ。今までは膝がスレスレで見えるかどうかという長さだったのに今日の彼女は膝小僧が露わになっているだけではなくそこから10cm以上は上がっていた。
「あら、荒木くん、もう来てたの?早いのね。」
「そういう直美ちゃんだって早いじゃない、どうしたの?」
「今日、先生方の会議で5時間で授業が終わるの、忘れてた。だから早くここに来ちゃったからゲームでもしようかと思ったんだけど……もしかして荒木くんも同じ?」
「そう、同じ!でも直美ちゃんのように忘れてはいないよ。僕が早くここに来たのは……こういう事!」
そこで僕は先ほどGETしたテディベアに程近い熊のぬいぐるみの入った袋を取り出し中を見せると直美ちゃんは大きな目を細めてにこやかな顔で
「あー可愛い~! え、これ荒木くんがGETしたの?凄い~!ありがとう、とても嬉しいなぁ!」
と満面得意な笑顔を僕に見せてくれる直美ちゃん。
「直美ちゃんへのいろいろな謝罪と感謝とお礼と…
そしてこれからまたよろしく!というご挨拶の品!という事で受け取って。本当にありがとう…。」
そのいろいろあった時からの再会の初めての言葉は語彙力の無さが露呈して上手く言えなかったけど、直美ちゃんは僕の顔を見て、最高の笑顔を返してくれた。
「こちらこそ……またお友達……いやお友達以上恋人未満から始めましょうね。」
「こ、恋人未満?今、そう言ったよね?え?どういう事?」
「荒木君はもうただのお友達という枠ではない、でもまだ恋人同士でもない!だからそう言っただけ!」
屈託のない笑顔でそう答える直美ちゃん、
淡いピンクの頬、グロスが光る唇、そしてなによりも
今まで見たことのない短い丈のスカート、その下から
覗く白くて細い脚……。
恋人未満を恋人にする時間はそれほどかからない。
僕は確信した。
〜第20話に続く〜