SAIKAI@MIYUKI・第6話「美幸の告白…。」
程なくして美幸からLINEの続きが送信されてきた。
高校3年になってお互い忙しくなって連絡を取らなかった頃、お父さんが同じ会社の女性の事務員さんといい仲になってしまって…お父さん
本気になっちゃって 私とお母さんを置いて
出て行ってしまったんだよね…。
何ヶ月か過ぎて正式に離婚届を提出してきちんと離婚はしたんだけど…お母さん、慰謝料はもらっても養育費の話し合いは無視して自分で私を育てる!って一切受け入れなかった。だから親権もお母さんが強引に奪い取ったようなもの、それでお母さんは実家のある名古屋に私を連れてしばらくは祖父母の実家でお世話になったんだ…。
お母さんは元々 立花だったので離婚が成立した際に元の立花に姓を戻したんだよね。それで私も立花の姓を名乗ることになったの…。
一番大事な時にそんな事があったり、転校してきて環境が慣れないまま、勉強にもついていけず、いろいろな事が嫌になって…不登校になっちゃったんだ…。
ここまで数回に分けてLINEを送信してきた美幸、今までのこの文章を読んでいても一番大切な時に大変な人生の変化に美幸は振り回されてきたのかと……俺は心を痛めた。
わかったことが2つある。両親の離婚で名古屋に引っ越した事。今、美幸が名古屋にいるのはそのことが理由。
そして「立花」を名乗っているのもそれが理由。
しかしながら疑問な事が一つある。俺との連絡は住所が変わったからとか電話番号が変わったからって出来ると思う。しかしその後、彼女からの連絡はなかったという事。心情を察するにそんな余裕はなかったと思いたかった。そのことについても裕華はLINEしてきた。
ヒロちゃんに何度、電話しようと思ったことか…手紙を書こうと思ったことか…。
でも、こんな家庭の恥ずかしい事情をその時の私はヒロちゃんに知られたくなかった…。
私の中ではもう少し時間が欲しかった。それに私はその高校が嫌になって辞めてしまったの。これからどうしようかと思っていたので、まずは自分の事をしっかりと考えなきゃ、と思っていたので連絡することを自分から遠ざけてしまっていたの…。住所も電話番号も変わってしまっていたから私が教えないと当然、ヒロちゃんからの連絡はなくなるわけで……。
それは自分も同じだった。大学は絶対に行って欲しい両親の願いとどうしても捨てきれなかった音楽への道に進むことと、どちらの選択が自分にとっていいのか悩んでいた。今となっては大学に行って音楽の道に進めばいいこと。そんな簡単な妥協点さえも「若さ」という暴走は見出すことができなかった。気づかせてくれなかった。いずれにしてもその音楽の道も頓挫して今は情けない人生を送っているわけなのだが…。
というわけでそんな俺も余裕がなくなって美幸との連絡を閉ざしてしまっていた。だから美幸の事は当然責められはしなかった。俺は美幸の言いたかったことを聞けて納得したのでLINEを送信した。
美幸ちゃん、辛かったね…俺も同じように進路に迷っていた時期だったから連絡はしたかったんだけど出来なかった。
お互い様だよ…自分を責めないで…。
するとすぐさま 美幸から返信が入った。
ねぇ、ヒロちゃん、今もひとりって聞いたんだけど……。
どうして?ヒロちゃんならいくらでも素敵な女の子と一緒になれたんじゃないの?
まさかの美幸からの切り込みだった。それは本来、俺が切り込むべきところであって、いきなりの美幸からの切り出しに正直驚いた。
しかしその疑問は俺も同じだった。こんな事を言うのもおかしい話だが、あの美幸なら男どもがいくらでも寄り付くと思っていた。
ずるい男とは思いながら 俺は美幸に返した。
ゆりから美幸がひとりだっていうことは聞いていた。不思議だよ。結婚とかしなかったの?
それとも結婚はしたけど……別れたの?
この勢いに任せて、一気にどストレートな質問をぶつけた。ことの事実によっては俺と美幸の関係は急展開を迎えるかもしれないと思った。
美幸はのらりくらりと、はぐらかせてくると思ったのだが…その返信は意外なものだった。
ううん、ずっとひとり、結婚もしないでひとり…。結婚しようと思った相手がいた事はいたんだけどね…。
美幸は意外にも素直にすんなりと打ち明けてくれた。残念だったのは俺の事をずっと忘れられなくてひとりでいた…という回答ではなかったこと。 そして追伸のLINEが……
まだ……いろいろと私の半生、続きがあって…
もうこれで話すのはやめようと思ったけど……
やっぱりヒロちゃんに聞いて欲しくて……
聞いてくれる?
まだ何かあるのか?私の半生、という言い方は言い換えれば「波瀾万丈な人生」ということか?もちろん聞かない理由はどこにもない。
美幸に了承のLINEを送って、俺は美幸からの返信を待っていた…。
〜第7話に続く〜