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SAIKAI@MIYUKI・第1話「君を見つけた朝」
ずっと一緒に いられると そう思っていた…。
俺は荒木ヒロユキ、50を4つほど過ぎたいわるおっさん、高校時代の恋愛をこの歳までずっと引きずっている情けないおっさん、この歳になるまで俺は一度も結婚をしたことのないひとり身のおっさん。
もちろんその後、恋愛をしなかったわけではないが生涯を人生を共に歩んでいこう、という女性に巡り合わなかっただけ。最もそれはとても都合の良い言い方で、自分でそう正当化しているだけかもしれない。そんなひとり身でも、これまで何の苦労も寂しさもなく過ごすことが出来ていた。
両親は4年前に他界し、兄妹も日本各地に飛び散っていき、親戚付き合いもなく、いつ孤独死で発見されてもおかしくない状況なのは間違いなかった。
しかし最近になってそんな寂しい結末だけは避けたいと思うようになった。友達の少ない俺だったけど5年前から始めたfacebookを通じてたくさんの友達らしき人々と繋がることが出来た。そう「友達らしき…」
冷たい言葉ではあるが、あくまでもSNS上での友達であり、リアルに付き合えるとしたら地元のfacebook友数人かもしれない。
でも、そんな「友達らしき」友人でも今の俺にとってはかけがえのない大切な人々だった。
一応、生きるため最低限の仕事はしている。23時から早朝5時までコンビニのアルバイトをして、そこが終わったら5時半からホテルのレストランの早朝バイキングの会場設営、たくさんの料理を並べ食器を整えて……というようなバイト、そこを9時に終えるとあとは自由の身となる。家庭持ちでは到底食べていけないような給料でも、ぐうたら極まりない俺には十分すぎる収入。贅沢さえ望まなければ幸せな生活が出来るというもの。というか物欲も性欲もなく、唯一ある欲は最低限の食欲。そんな平々凡々とした日々がまさかこれから劇的に変わっていくとはその時は思いもしなかった…。
ある日の仕事終わり、眠い目を擦りながらコンビニの熱いコーヒーをすすりながらスマホでfacebookのチェックをしていた。
友達リクエストの通知が目に入った。
名前は 「立花 美幸(たちばな みゆき)」
名字は違えど 間違いなくあの美幸に違いない。興奮を抑えられず facebookを開けた…。
もう30数年経っているのに彼女の顔は変わらなかった。いや変わっているのかもしれないがあの彼女への思いが強すぎて、その面影以外は何も目に入らなかった。
俺が高校時代の恋愛を引きずってひとりでいる
その張本人からのリクエストだった…。
メッセンジャーのメッセージも付いていた。
山崎だった名字が立花に変わったということは……当然結婚をして子供もいて暖かい家庭を築きながら幸せに暮らしているのだろう。
だとしたらなぜ、今更この俺と繋がろうというのか?彼女にとっては良い思い出となっているのかもしれないが、俺にとっては未だその先を進めない現在進行形。情けない話だ。おそらくお互いの立場は全くの真逆ではないか、と…。
そんな自分勝手なことを思いながら 俺は彼女のメッセンジャーのメッセージを開ける前に 今の彼女の情報は他にないのか、もう一度彼女のプロフを確認した。
立花 美幸
北海道 釧路市出身
愛知県 名古屋市 在住
プロフィールの表示はそれだけだった。
顔だけで判断してしまって実はよく似た違う人間だったら……という冷静さがあったのは幸いだった。間違いなくあの「山崎美幸」だった。
心の準備を整えてやっとの思いで 俺は重いメッセージのマークをタップした……。
〜第2話に続く〜