SAIKAI@MIYUKI・第5話「お互いの気持ち…」
こんな事があるのか?
考えていなかったことが もしかしたら…という思いに変わり、さらにそのわずかな期待がまさか現実となるとは……
これぞまさに「驚愕」という言葉を使わざるを得ない、これ以上の言葉は他にない今の俺の心境だった。
と同時に思ったのは「どうして?」ということだった。まさか俺と同じように美幸も俺の事が忘れられなくて……そんなはずなどないだろう。実は女性のほうが恋愛に関しては前向きに進める。男はいつまでも前の恋を引きずる弱い生き物だ。という事でそれはないような気はする。そしてもう一つこれが最大の疑問。
名字が違っている。
山崎から立花に変わっている。結婚はしたけれど別れた?という過去形なのかもしれない。それなら現実的だ…と、俺の過剰過ぎるさまざまな妄想が頭の中をめぐり続ける。自分が思うような展開が続いている今、これから想像することも当たってしまうのでは?と自意識過剰になってしまうのは当然のことだと思った。
連絡の取れなかった1年が、彼女の人生を変えてしまったのはおそらく間違いないと思う。そう思うと彼女からのLINEが急に待ち遠しく思えた。
ゆりには何と返信したらよいのだろう?
「え~!ビックリ!でも教えてくれてありがとう!」と 当たり障りのない文章にしておいたほうがよいのか?もしかしたら……ゆりはやり取りをして既に美幸の過去のこと全て知っているのでは?
美幸から直接聞きたい気持ちは勿論だが、正直怖いという思いもあった。もしゆりが大まかな事でも知っているのなら、このもやもやとした心の葛藤が少しは晴れるような気がして…その思いで、ゆりにLINEを送信した。
正直びっくりしたよ。美幸が一人でいるなんて…結婚したけど別れたのかな?
まだまだ書き足したいことはあるけれど…焦らずに少しずつ聞いていかないと……ただでさえ今、俺の頭の中は衝撃の事実とあらゆる妄想が堂々巡りしている最中、そうしないと頭の整理がつかなくなるかもしれない。
それから程なくして ゆりからの返信が来た。
やはり……俺の頭はこの文章で混乱した。想定外だった。
ううん、美幸はずっと ひとり、結婚もしていないよ。
結婚していない?じゃあどうして立花という性を名乗っているのだ? どうしてなんだ?ゆりは本当の事、知らないのでは? 俺を攪乱しようと冗談でも言っているのではないのか?
情報の伝達とその処理に脳が追いつかない…。
でもゆりがそんなことを言う女性だとは思わない。高校時代からの性格はよく知っている。どれほどの年月を重ねようとそんないい加減なことを言う人間ではないことは親しくない俺でもわかっていた。
一休さんのとんちのような現実……真相を知りたい。しかし逆にこれからの美幸の「告白」が恐ろしくもさえ思えてきた。
とは言え さすがに眠くなってきた。少し仮眠をしようと俺はソファーに横たわった。
「ヒロちゃん、起きてよ~!早くしないと幻の
カツサンドがなくなっちゃうよ~!」
俺は高校時代のあのときに戻っていた。退屈な4時間目の英語の授業時間、すっかり寝てしまっていて一緒に購買でパンを買おうと約束していた美幸に起こされていた。
「ごめん、ごめん、行こう!」
美幸に手を取られて教室から引っ張り出され廊下に出た瞬間、慌てていたので転んでしまった。
夢はそこまでだった。俺はソファーからしっかりと転げ落ちていた。しかし……とても懐かしい夢だった。そんなことが確かにあった。今になって夢として思い出すなんて……不思議なものだった。
気づけば2時間も寝てしまっていた。日本の東にある街の夕日は沈む時間となっていた。寝ている間にLINEの着信はないかと確認しようと思ったその時、スマホからLINEの着信音が流れてきた。美幸からのものだろう。心を静めてから
開こうと思っていると、次から次へと着信音が鳴り響く。
若者ぶって、短い文章を連投しているのか?
美幸らしさは健在だった。4度ほど鳴り終わった後暫し時間が空いたので 恐る恐るLINEを開いてみた。
ヒロちゃん、こんばんはー😊美幸だよー💕
ご飯まだ食べてないでしょ🙂私のLINEが気になって…
これから話すこと、読んだらますますご飯食べられなくなるかも🤭
じゃぁ……話すね…。
いよいよ美幸の過去の告白を知ることになる。
そして……これからの俺たちの人生を左右することになる美幸の「告白」が始まろうとしていた……。
〜第6話に続く〜
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