My Love ~高校生編・第13話「愛はかげろう」
それからというもの裕華と僕の距離はぐっと縮まっていった。それからの1ヶ月、学校ではいつも隣の席で、休み時間や放課後は男の友達よりも多くの時間を楽しく過ごした。
そして…1ヶ月が過ぎ…2人に別れが訪れる。
2ヶ月ごとというクラスの決まりで席替えになり、2人は離れ離れになるのだった。「なんだ、そんな事かー!」と言われそうだが僕にとってみれば彼女と一緒の時間が剥ぎ取られるような辛い事だった。でも……
僕らはもう普通の関係じゃない。最もキスだけの関係ではあるが…離れても大丈夫!あれから何回も何回もキスしているし、大人のキスも上手にできるようになったし……今の若い子達が見たらきっと笑われるだろうが……。
でもいつも隣に裕華がいる事が当たり前だったのでやはり寂しい……とやっぱりちょっと思うのだった。
また一緒になる確率を信じたが、くじ引きの結果、僕の隣は高木ひとみちゃんというバレー部のとにかく騒がしい子…。僕の一番苦手なタイプ。最初の裕華も騒がしい子だったが、今ではとってもおしとやかな可愛い女の子になってきた。
自分のせい?そうだ、自分のせいだ。と、どこまでも自惚れている僕だった。
退屈な英語の時間、いよいよひとみちゃんとの会話が始まった。
「ねーねー荒木君、いや、ヒロちゃんって呼んだほうがいいかな?」
「やめろよ、お前にヒロちゃんって呼ばれる筋合いはないよ!」
「あらぁ、ずいぶんひどい事言うのねぇ。せっかく彼女の事、褒めてあげようと思ったのに、可愛くてヒロちゃんとお似合いよねぇ~って…。」
「え、ひとみちゃん、裕華って女の子から見てもやっぱり可愛い?」
「うん、とっても可愛くていい子だよぉ、女子のほとんどが言ってるよ、荒木君は大泥棒だって」
「大泥棒?みんなよくそこまで言えますねー、
はい、僕は彼女のハート、盗んでしまいました。なんてねー。」
「いやぁ、はんかくさい(どうしようもない)!荒木君」
そう言ってひとみちゃんの右手が僕の肩にヒットした。バレー部の期待の新人アタッカーのアタックはまさに激痛だった。
痛い!黄金の右は素晴らしい!痛い!痛い!コミュニケーションの一つだとは思うが彼女が思うよりも力が強い。前に彼女の隣の席だった石川君は日々の右のアタックで肩を腫らしたとか…。
これさえなければ、スタイルもかっこいいし笑顔も可愛いと思うから、もっとモテるのになぁーといつも思っていた。
一方、裕華、隣の席になったにっくき男は優しくてイケメンで頭も良く、欠点が見当たらないサッカー部の期待の新人、坂井隆行だった。
なんで、あいつになっちゃったんだよぉ。
僕とは全く釣り合わない男、不安がよぎった。
英語の時間が終わり、休み時間になった。たまらなくなってすぐに裕華を捕まえて話をした。
「裕華、隆行と何かしゃべったのか?」
「うん、坂井くん意外と面白い人だった。あんな人だとは思わなかった。」
やばい!彼に好印象を持ってしまった。正直、何をとっても彼には勝てるわけがない。そんな僕の不安を察知したのか、裕華が続けた。
「でも私にはヒロちゃんがいるからね!ねぇヒロちゃん!」
「なんか、つけ足しみたいな言い方だな!」
「何それ?あ〜ヒロちゃん、妬いているのぉ~?いやだぁ…。」
「そ・そんなんじゃないよ。」
まさに図星、顔を真っ赤にしてしまった。
「ヒロちゃん、可愛い。でも、うれしいな。ヒロちゃん、また公園デートしようね。」
「うん、絶対だよ!」
お互いの気持ちに変わりはなかった。それを確認出来たことで僕の不安はなくなった。
しかし…この席替えはまさに「愛が陽炎に変わっていく」序曲だった…。
〜第14話に続く〜
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