第十一章 荒城の月
関東の街で、僕は心が砕けそうになる毎日を過ごしている。
誰も助けてはくれず、耐え抜くしかない日々の中で、それでも僕の心は壊れなくなった。
君への思いだけが、僕を支える最後の光となっている。
何度も送っても返事がないメール。
それでも諦めずに送った言葉たちが、君に届くことを信じていた。
突然君から返事が返ってきた。
その瞬間、僕の心は震え、止まっていた時間が再び動き出したように感じた。
メールでのやり取りができるようになった毎日は、僕の過酷な日常に小さくはない光を灯してくれる。
君がまだ、僕の言葉に応えてくれるなんて、これ以上ない喜びだ。
僕が耐え抜いてきた日々に、ようやく意味が見えてきた気がする。
君は今、大分県の竹田にいるらしい。
竹田――
その名前を聞くたびに、僕の心は遠くへと飛び立つような気持ちになる。
僕は君のいるその場所を知りたくて、竹田についてたくさん調べた。
どうやら、竹田は荒城の月で知られる瀧蓮太郎の街らしい。
君がいるその街に、僕は知らず知らずのうちに憧れを抱くようになっていた。
瀧蓮太郎が思い描いた荒城の月。
静かに佇むその城跡を、君は見たことがあるのだろうか。
君は歴史に興味がないから、あまり知らないかな。
夜の帳が降りる頃、月が空高く昇り、その光が古い城壁を照らし出す瞬間を、ぼくと君のその目で見たい。
僕はその情景を思い浮かべながら、いつか君と一緒にそこを訪れたいと願うようになっていた。
荒城の月が映し出す竹田の風景は、君がいるからこそ美しく見えるのだろう。
竹田の街を歩きながら、君は何を思うのだろうか。
僕がいないその場所で、君は僕を思い出すことがあるのだろうか。
風が吹き抜ける石畳の道、静かに流れる時間の中で、僕のことをほんの少しでも思い出してくれるなら、それだけで僕は幸せだ。
どれだけ距離が離れていても、君の存在が僕の心を支えてくれる。
いつか君と一緒に、竹田の街を歩きたいと思う。
荒城の月が照らす夜空の下で、君と共にその風景を眺めたい。
その日が来るまで、僕はここで耐え続けることができる気がする。
君がいる限り、僕の心は壊れることはない。
たとえどれだけ遠く離れていても、君への思いが僕を支えてくれる。
竹田の街で君が見ている景色が、いつか僕の目にも映る日を夢見て、僕は今日も耐え続ける。
君がいるその場所を思い描きながら、僕は関東の空の下で静かに息をする。