光の中を旅してたを書き始めた街
海を見すぎた反動なのか、山に入りたい。
ヴェリコ・タルノヴォの街に着く。
街までは少し距離があるから、タクシーに乗ってリンダの家方面まで。
リンダって言うスコテッシュのおばさんが今度の俺の雇い主。
ブルガリアの緩い雰囲気が好き。
山を削って作ったような街で、階段が多いし段差もたくさんある。
裏道には野良猫がいっぱいいて、メインのサモヴォドスカチャルシャ通りには可愛いお土産屋やレストランが並んでいた。
夕暮れが遠く沈んでく。
朱色の屋根が多い街。
リンダの家に向かう時間まで散歩して暇を潰した。
穏やかな日々、緑を揺らす風、ぽかぽかが木漏れ日から落ちてくる。
リンダは僕の事を快く受け入れてくれた。
隣の部屋にステイしていたのはジュリアンだ。
ジュリアンはアメリカから旅をしに来ていて、数日前からここに滞在していた。
ジュリアンに相談したんだ。
「どうやったら、俺にも本が書けるかなぁ」って。
ジュリアンは自分の本を出している男だった。
そしたらさ、「書く事だ」って教えてくれた。
俺には「すとん」と、その言葉が入ってきた。
毎日5分でもいいから、一行でもいいから書く事。
それの積み重ねだ。
君に出会えて良かった。
本当にその通りだ。
山に入ってきて良かった。
ジュリアンとは本の話をした。
ヴェリコで少しゆっくりとした時間を過ごしたんだ。
僕等はリンダの運転で何度かリンダの別荘のある山の奥まで行った。
途中で休憩する山間のカフェでコーヒーを飲んで休憩した。
忘れ去られたような山奥の村のさらに奥。
そこには二軒の家が建っていた。
どんなモノ好きがこんなところに家なんか建てたんだろう。
それを買う人もちょっと変わっている。
それがリンダだ。
夏になるとここの家に来て、ボランティアを募って家等の改善改築をするのだそうだ。
手伝える事があるならやらせてもらった。
ジュリアンと僕で部屋の掃除から、トイレの設置。
穴掘り、草取り等やれることはやった。
そのままヴェリコに帰ることもあれば、僕とジュリアンだけ山の上に残って留まったこともあった。
広場からの展望台でまた違う角度からヴェリコの街を眺める。
日中はリンダの手伝いやらなにやらしてたもんだから、時間の出来る夜に部屋に入って『光の中を旅してた』を書き出した。
街にいる猫たちがたまに路地裏で寝転んでた。
坂道の途中のカフェでビールを頂いた。
書いておきたい事が山ほどある山の中、僕は次の街に行かなくちゃいけない。
新しい国はトルコ、街はイスタンブール。