水の都の冒険
ヴェネツィアに向かう電車の中から海が見えた。
海を渡って、そこには着く。
隣のボックス席でくつろぐイタリアの人達もリラックスしているように見える。
カモメが上空を飛んでる。
くたびれたアパートが立ち並ぶ通りには活気が溢れている。
赤レンガ造りの家の脇、タイル5枚分の細い道を縫うように歩いてく。
もう、帰り道なんて忘れた。
ひげの生えた爺さんが路上で物乞いしてる。
その横の犬も、遠目に見ると瞑想でもしているみたいに動かない。
壁にはポスターを貼る用の場所みたいのがあるんだけれど、全部剥がれてる。
明るいうちに宿を探さないと、随分と迷った気がする。
本当に迷路みたいな街だ。
子供が仮面を被って歩いている。
この街のくたびれ方も苔の感じも好きだ。
宿には無事に着けたけど、見つけるのは一苦労だった。
コーヒー飲んで充電して、バッグを「ポーン」って置いといた。
俺は運いいから物を盗まれたりしないんだけど、みんなは気をつけてね。
貴重品はシャワーの中にも持ってった方がいいんだ本当は。
よくこんな迷路みたいな街で宿屋見つけられたよな。
橋の上でヴェネツィアの絵を売ってる方がいる。
彼女はきっと街の絵描きなんだね。
「好きな事に時間を使う」って素敵だ。
静かに街を歩いて何個靴を履き潰しただろう。
僕はヴェネツィアのサン・マルコ広場に出た。
舞踏会の時に被るような仮面を売っているお店の前を通った。
気付けば夕日が傾く。
僕等の影がうっすら伸びていく。
石の壁は赤みを増す。
もうずっとこの世は僕の想像なんて遥かに越えてくる。
マルコの近くの塔を見上げたら、三ヶ月が出ていた。
僕はここで夜の帳を見たかもしれない。
誰かが表現した、夜のとばりはたぶんこんな色だ。
海の上に浮かぶ教会の裏側に夕暮れが落ちていく。
暗がりな波にボートが佇む。
海は驚く程穏やかで、夕暮れが落ちた後のどす黒い赤い空が遠くに見えた。
向こう岸はその僅かな光をバックにシルエットを作る。
たなびた雲が浮かぶ。
サン・マルコ広場に出た。
さっきよりも月が傾き光を放ってる。
宿でもあまり人と会わない静かな夜。
僕はパンを齧ってコーヒーを飲む。
ボートがエンジン音と共に煙を吐いて進んでいく。
観光客はまたどこからか広場に出てきていた。
僕はフェデリカとの待ち合わせまで街を歩いた。
落書と、継ぎはぎの路地をくねくねと歩いてく。
昼間はいくら迷子になっても大丈夫だ。
あの子は日本に留学に来てたことがあって日本語も少し話せる、でも得意なのはトルコ語らしい。
イタリアにいた頃はまだトルコに行くなんて思ってもみなかった。
この時もフェデリカと一緒に街を歩きながらこれまでの旅の事と、これからの旅の事を話してたんだ。
テラス席でヴェネツィアで有名なお酒を一緒に飲む。
「オリーブとワイン」それからまたフェデリカと街を歩いた。
僕はまたサムにお世話になる。みんなで食卓を囲んだ時もみんなは優しかった、サムの親父は職人をしている。
そんなこんなで、ボローニャへ戻ったんだ。
そして遂にイタリアの港からアドリア海を渡って、東ヨーロッパに入るんだ。
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