【2024.12.28Live】2024年ヘルスケア市場総括:主要トピックと今後の展望
<Geminiによる2024年12月18日のYoutube Liveの記事です>
本稿は、YouTubeチャンネル
「【Live】2024年のヘルスケア市場 総振り返り【加藤浩晃、有村琢磨】」
のライブ配信内容を基に、2024年ヘルスケア市場の主要トピックを整理し、今後の展望を考察したものです。
配信では加藤浩晃氏と有村琢磨氏が、重大ニュースを選定し、市場トレンドや各社の動向について議論しています。
2024年の10大ニュース
I. 保険適用をめぐるサスメドの苦闘と今後の展望
2024年1月、サスメドが開発した認知行動療法アプリの保険適用申請が厚生労働省の医療技術評価検討会で却下されたことが、大きなニュースとなりました。
この決定は、サスメドに保険適用希望書の取り下げを促し、大きな打撃を与えました。
加藤氏と有村氏は、この出来事について、単なる保険適用失敗ではなく、複数要因が絡み合った複雑な問題であったと指摘します。
まず、保険適用に関する制度変更のタイミングと重なったこと、サスメド側の情報発信の遅れや不透明さ、そして上場企業としての情報開示の難しさなどが挙げられました。
しかし、サスメドはその後、アプリの改良を行い、8月には修正版の承認申請を提出。
来年初旬には再審査の結果が判明する見込みです。
この事例は、治療用アプリの保険適用という未開拓領域における困難さと、情報発信の重要性を浮き彫りにしました。
保険適用は、市場拡大に不可欠な要素であり、今後のサスメドの動向は、治療用アプリ市場全体の進展に大きく影響を与えると予想されます。
医療機関への導入、患者への処方、そして収益化という段階を経て初めて事業が成功するモデルであるため、保険適用後の市場浸透の成否が鍵となります。不眠障害という大きな潜在市場が存在するだけに、今後の展開に注目が集まります。
II. ソフトバンクとTempusによるジョイントベンチャー設立とゲノム医療の可能性
ソフトバンクが、アメリカのゲノム医療企業Tempusとジョイントベンチャーを設立し、300億円規模の投資を行い日本市場に参入したことは、2024年ヘルスケア市場における最大級のニュースと言えるでしょう。
13の日本の主要病院との提携も発表され、アメリカのがん患者770人分のデータも活用する計画です。
この取り組みは、従来の癌治療における疾患別アプローチから、ゲノム情報に基づいた個別化医療への転換を示唆しています。
ゲノム解析に基づき、最適な抗がん剤を選択することで、治療効果の向上を目指します。
しかし、配信では、当初の期待感とは裏腹に、具体的な進捗状況に関する情報が乏しい現状が指摘されています。
病院の設立や薬事承認の取得など、複雑な課題も多く、当初予想されたような急速な展開には至っていないようです。
このジョイントベンチャーの成功は、ゲノム医療の普及、そしてソフトバンクのヘルスケア分野における戦略の成否を左右する重要な要素となります。
今後、具体的なサービス展開や臨床データの蓄積、そして新たな医療インフラの構築が、市場へのインパクトを左右するでしょう。
III. 生成AIを活用した医療ソリューションの台頭と今後の展望
2024年は、生成AIを活用した医療ソリューションの開発が活発化しました。
特に、診察時の音声書き起こしやカルテ自動作成ツールは、多くの企業からリリースされ、多くの病院で実証実験が行われています。
加藤氏は、この領域の盛り上がりを「外来での診察音声の電子カルテへの変換」と「既存データの加工・要約」の2つの側面から分析しています。
前者は新市場開拓、後者は業務効率化に貢献するものであり、市場拡大には段階的な成長が見込まれます。アミボイスを始めとした先行企業は、既に高いシェアを獲得しています。
加藤氏は、生成AIツールが単なる業務効率化ツールにとどまらず、医師の個人アシスタントのような役割を果たす可能性を指摘しています。
予約管理、処方箋発行など、医師の業務を支援するAIエージェントとしての進化が期待されます。
ただし、本格的な普及には、時間的な猶予が必要であると予想されており、市場の拡大は、段階的なものになるでしょう。オンライン診療の普及にも3年程度の時間を要したことを踏まえれば、同様のカーブを描く可能性があります。
IV. ユカリアの上場と病院経営支援モデルの拡大
医療機関経営支援や介護施設運営、ヘルステックベンチャー投資などを手がけるユカリアが上場したことも大きなニュースでした。
同社は、病院経営支援を軸に、DX推進や地域包括ケアモデルの構築など、幅広い事業展開を計画しています。
加藤氏は、ユカリアの成長性資料を分析し、同社の収益構造や成長戦略について考察しています。病院経営支援事業は、収益の柱であり、1病院あたりの収益規模や、MS法人モデルにおける収益性などが詳細に示されています。
また、1.8兆円規模の病院委託市場への進出戦略も示唆されています。
ユカリアの事業モデルは、病院経営の効率化と収益向上に貢献するものであり、今後の市場拡大が期待されます。 上場を機に、更なる事業拡大と人材獲得が進むと予想されます。
V. 健康保険証廃止と電子カルテへの移行
2024年12月2日より、現行の健康保険証の新規発行が停止され、電子化への移行が本格化しました。
厚生労働省は、標準型電子カルテの開発を進めており、2026年10月からの本格運用を目指しています。
この移行は、医療情報システムの改革に大きな影響を与え、API連携によるデータ共有の促進や、マイナポータルとの連携強化が課題となります。
生成AIを活用した医療情報提供書や紹介状の自動作成なども、この流れの中で発展していくと予想されます。 電子カルテの普及は、医療DXの基盤であり、関連技術やサービスの市場拡大に繋がるでしょう。
VI. LINEドクターの閉鎖とオンライン診療市場の再編
LINEヘルスケアが提供していたオンライン診療サービス「LINEドクター」の閉鎖は、オンライン診療市場の動向を象徴する出来事でした。
LINEドクターは、コロナ期間中の健康相談では高い利用率を誇ったものの、サービス単体では市場での地位を確立できませんでした。
加藤氏と有村氏は、LINEドクターの失敗を、LINEの戦略やプラットフォームの変遷、競合サービスの台頭といった複数の要因から分析しています。
スーパーアプリ構想とミニアプリの普及率の低さ、そして若年層のLINE離れなどが、サービスの成功を阻んだと考えられます。
この事例は、オンライン診療市場の競争激化と、プラットフォーム戦略の重要性を示しています。
VII. 医療従事者の「直美」問題と医療従事者を取り巻く環境の変化
2024年は、医療従事者、特に看護師の美容業界への転職問題が社会問題化しました。 この現象は「直美」という言葉で表現され、医療業界の慢性的な人材不足と、労働環境の改善の必要性を浮き彫りにしました。
加藤氏は、眼科領域におけるLASIKのときの同様の現象を例に挙げ、人材流出の背景にある要因を分析しています。
また高収入やワークライフバランスの良さなどが、美容業界への転職を促す要因であると指摘します。
しかし、美容業界においても、採用環境やキャリアパスは変化しており、必ずしも楽園ではないことを指摘しています。
医療業界全体では、医療従事者の労働環境改善、待遇向上、そしてキャリアパスの多様化が喫緊の課題となっています。
VIII. 医療事務代行市場の拡大とクリニック経営の変化
クリニックを中心とした医療事務業務のアウトソーシング(代行)市場が拡大しています。
人材不足や採用難が背景にあり、特に一人開業医が増加する歯医者などの分野で、その需要が高まっています。
加藤氏は、医療事務代行サービスの導入が、一人開業医の増加やクリニック経営の多様化を促す要因であると指摘しています。
業務効率化とコスト削減を実現するサービスであり、AIを活用したソリューションとの共存関係にあると予想されます。
IX. HOKUTOの資金調達と製薬企業向けマーケティング戦略
ヘルスケア領域のマーケティング支援企業である北斗は、2024年に9億円の資金調達を実施しました。
同社は、製薬企業を顧客として、低コストで高価値なマーケティング支援を提供しています。
加藤氏は、北斗の成功要因として、製薬企業との強固な関係性構築と、低コストでのPV獲得戦略を挙げています。
M3やケアネットといった大手企業とは異なる戦略で、製薬企業のマーケティングニーズに対応することで、市場での地位を築きつつあります。
X. 認知症領域への参入拡大とプラットフォーム戦略
認知症ケア領域は、依然として課題が多く残る分野です。しかし、2024年は、様々な企業が認知症ケアプラットフォームの開発やサービス提供に乗り出しました。 認知症プラットフォーム事業に本格的に参入しています。
加藤氏は、認知症領域におけるプラットフォーム戦略の重要性を指摘しています。 大企業との連携によるサービスデリバリーが、市場浸透の鍵となると予想されます。
また、製薬企業が、創薬のみならず、ヘルスケアプラットフォーム事業へと進出する動きも出てきており、今後の展開に注目が集まります。
結論:
2024年のヘルスケア市場は、保険適用、AI活用、プラットフォーム戦略、人材不足など、様々な課題と可能性が複雑に絡み合った年でした。
これらのトピックを踏まえ、今後、AI技術の進歩、データ利活用、そして医療従事者を取り巻く環境の変化が、市場の構造を大きく変えていくことが予想されます。
継続的な市場の監視と、変化への対応が、企業の成長に不可欠となるでしょう。