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フィッシュマンズ"Uchu Nippon Tokyo" 2025.2.18 東京ガーデンシアター所感

いやあフィッシュマンズ2025.2.18 東京ガーデンシアター良かったですねえ。未だに余韻が抜けません。2021年の「映画フィッシュマンズ」公開からずっとフィッシュマンズについて書きとどめて来ましたので想いを整理するためにも書き連ねて見たいと思います。今回のポイントとしては

  • 東京ガーデンシアターという過去最大規模のキャパシティの会場をソールドアウト(6,600人?)させたこと

  • 全国でライブビューングを実施、また海外へ同時配信を行ったこと

  • スペシャルゲストにUA、ハナレグミ、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)に加えさらに新規参加の君島大空、GOMAを迎えたこと

  • アルバム「宇宙日本世田谷」の構成を中心にしたこと

  • 同アルバムの最終曲に収められている「DAYDREAM」を久しぶりに演奏したこと

  • 入念なリハーサルにより全ての演奏曲を新たにアップデート、バンドにさらなる前進を加えたこと

FISHMANS"Uchu Nippon Tokyo"
2025.2.18 @東京ガーデンシアター
SET LIST
M-1. Weather Report
M-2. いかれたBaby
M-3. MAGIC LOVE
M-4. IN THE FLIGHT -interlude- 〜バックビートにのっかって (Vocal:ハナレグミ)
M-5. ひこうき (Vocal:ハナレグミ)
M-6. BABY BLUE〜なんてったの (Vocal:君島大空)
M-7. 感謝(驚) (Vocal:君島大空)
M-8. Go Go Round This World! (Vocal:UA)
M-9. WALKING IN THE RHYTHM (Vocal:UA)
M-10. LONG SEASON (Didgeridoo:Goma)
M-11. DAYDREAM〜それはただの気分さ -epilogue- (Vocal:マヒトゥ・ザ・ピーポー)
EN-1. ナイトクルージング (ALL CAST)
EN-2. 新しい人

FISHMANS are
茂木欣一(Dr,Vo)
柏原譲(Ba)
HAKASE-SUN(Key)
木暮晋也(Gt)
関口“dARTs”道生(Gt)
原田郁子(Vo)

まずは広い東京ガーデンシアター、自分はアリーナのDブロックにいましたがちょっとステージは遠い、通路からは近かったので見やすい場所ではありまして演奏中もZAKさんがウロウロしながら会場の鳴りを確認するのが見えました。最初に「POKKA POKKA」のイントロのエレピが鳴り響きメンバー入場、メンバーは小さかったです!フェスのステージとは違って天井も高くホールのステージの広さを改めて感じます。

M-1. Weather Report
M-2. いかれたBaby
M-3. MAGIC LOVE


冒頭の3曲はフィッシュマンズだけの演奏、欣ちゃんと原田郁子さんのヴォーカルで進行します。やはりホールが広いので残響音がたっぷりでしたが欣ちゃんと譲の鉄壁のリズムセクション、木暮氏とダーツさんのギター組も安心のサポートです。「MAGIC LOVE」では木暮氏がオートチューンヴォーカルを担当、前回のツアーもオープニングのメンバー紹介曲からオートチューン担当になっていますね!あと後半のギターソロ掛け合いでダーツさんが久々に速弾きソロを聴かせてくれました。ダーツさんが一段と頑張る理由は後にわかることになります(笑)。
そして途中で知らないサブドミナントっぽい響きの曲が挟み込まれましたが聴き覚えのあるメロディとともにエレクトリックヴァイオリンソロが流れましたがこれはセトリを見ると「IN THE FLIGHT」の後奏部分で恐らくHONZIさんのマテリアルを使ったものだったと思います。とても自然な流れでしたがここで改めてこのライブのテーマが"Uchu Nippon Tokyo"であることを思い起こさせます。

M-4. IN THE FLIGHT -interlude- 〜バックビートにのっかって (Vocal:ハナレグミ)
M-5. ひこうき (Vocal:ハナレグミ)


そのまま「WALKING IN THE RHYTHM」に行きそうな勢いでしたがここからハナレグミ永積タカシさんが登場し「バックビートにのっかって」「ひこうき」を歌います。永積さんはこの日最もオリジナルの佐藤伸治のスタイルに忠実に歌ってくれた印象だったと思います。ここまでかなりテンポよくライブが進んでいった印象があります。

M-6. BABY BLUE〜なんてったの (Vocal:君島大空)
M-7. 感謝(驚) (Vocal:君島大空)


ステージが暗転してナイロン弦のガットギターの響きがホール中に鳴り響き、君島大空さんが歌う「BABY BLUE」が始まります。ナイロン弦とブラジル音楽風の和音、真っ暗な広いホールのステージでスポットライトを浴びながら繊細で儚げな君島さんの歌声が空間に広がっていくようで、これまでのフィッシュマンズのライブでは存在しなかった光景に会場は全員、息を呑んで見守っているように思えました。続けて演奏された「なんてったの」もまるで若い頃の佐藤伸治が乗り移ったかのような輝きに満ちた幸せ感を纏っていました。まるで君島さんはフィッシュマンズの皮を一枚剥がしたかのような、陳腐な言い方で恐縮ですが新しいケミストリーがステージの上で起こっていました。あれは何だったのだろう。続けて演奏された「感謝(驚)」も君島さんのガットギターによるサンバのリズムでスタート、自分だけの思い込みかもしれませんがバンドの演奏もブラジル音楽寄りのタテノリリズムに変化していた気がします。ハカセのオルガンがドライブしまくり、君島さんのヴォーカルもとてもパワフルで「感謝(驚)」はライブ前半のピークになっていたのではないでしょうか。

M-8. Go Go Round This World! (Vocal:UA)
M-9. WALKING IN THE RHYTHM (Vocal:UA)


そして中盤から登場したのはUAさん。2023年のツアーからほぼレギュラー的に参加しているUAさんですが君島さんの好演に負けじと圧倒的な存在感のヴォーカルを見せつけます。「Go Go Round」ではバンドのテクニカルな演奏が応酬する超弩級ファンクに呼応するような支配力に満ちたヴォーカルを披露、続くダークなヴォーカリゼーションとドラマチックな楽曲展開を魅せる「WALKING IN THE RHYTHM」はここ数年に渡り欣ちゃんとフィッシュマンズで様々なヴォーカリストと実験してきたチャレンジの成果を示したものと思いました。めちゃくちゃ圧倒的なヴォーカルを見せつける女王のような存在感のUAさんですが、曲間のMCで喋ると自称「ウーコ」となり、めっちゃお茶目で本当にフィッシュマンズで歌うことが楽しいんだなと言うことが伝わりました。

M-10. LONG SEASON (Didgeridoo:Goma)
M-11. DAYDREAM〜それはただの気分さ -epilogue- (Vocal:マヒトゥ・ザ・ピーポー)


音楽はさらに深いところに潜ります。押し寄せる波の音と同時に後方のスクリーンが開放され海面をイメージしたヴィジュアルエフェクトが流れます。"Get round in the season"をモチーフにしたファンキーなリフから始まったので「LONG SEASON」はフルでは演奏しないでリズミックな短縮バージョンでもやるのかなと思ったらファンキーなブレイクからそのままダーツさんのあのシンセのようなテーマリフといつものピアノアルペジオが出てきてフルサイズの「LONG SEASON」がスタートしました。再び欣ちゃんと原田さんのヴォーカルに戻り「LONG SEASON」の世界が紡がれていきます。中間部のパーカッションパートはディジュリドゥ奏者のGOMAさんとのセッションバトルに突入、前回のツアーでは欣ちゃんのドラムヒストリーを表したようなドラム・ソロでしたが今回はGOMAさんが吹くディジュリドゥとのバトル展開、GOMAさんの吹くディジュリドゥはとても低音が出ていてまるでシンセ・ベースのようでしたが、それに反応する欣ちゃんのドラミングはまるでイエスの「海洋地経学の物語」の最終曲「リチュアル」におけるアラン・ホワイトのシンセをトリガーにしたドラムソロ・パートのようにも聴こえました(プログレおじさん構文ですみません)。
その間もバックに流れる映像は気泡のような海底のような映像が続きます。途中でダーツさんのギターのフィードバックと映像がピッタリとシンクロしていたので音声で映像をコントロールしているのかと思ったほどです。最後はハカセのアコーディオンとともに欣ちゃんと佐藤くんの映像がクロスフェードインしてリフレインし「LONG SEASON」は終わりました。最高かと思った前回2023年のツアーを上回るほどの圧倒的な完成度でした。ここから感動のあまりもう記憶がないのですがしばらく無音状態が続いた後、マヒトさんの語りとギターのエフェクトが響きあまりにも悲しい「DAYDREAM」のドラムブレイクが始まりました。この曲はこんなに悲しい曲だったのかと今更気づくのも遅すぎますが、ダーツさんのギターもマヒトさんのヴォーカルも悲しみと寂しさを携えており「LONG SEASON」から押し寄せてくる感情が止まらなくなりました。「死ぬほど楽しい毎日なんてまっぴらゴメンだよ」と歌うマヒトさんのヴォーカルがガーデンシアター内に悲しく響き渡りました。

「DAYDREAM」の持つ潜在的な悲しみの感性は言葉が違う海外の人達にもすでに伝わっていたようです。X上で知り合ったシカゴに住むフィッシュマンズファンは「海外のファンはDAYDREAMを披露されることを待ち望んでいた」とポストしています。

本編最後はどのように終わったのか記憶がないのですが一気に脳天気なクワイアのようなパートが出現したように記憶しています。「それはただの気分さ -epilogue-」とセトリポストに書いてありましたが翌日購入していた「HISTORY OF FISHMANS」に収められていた1998年日比谷野音での「それはただの気分さ」の超長尺版を聴いたことで解決出来ました。とてもすごい演奏なのでみなさんもぜひ聴いていただきたいと思います。

個人的な考えですが2022年からスタートした「HISTORY Of Fishmans」を巡る欣ちゃんの想い〜特に後期フィッシュマンズ楽曲との向き合いについて一つの到達点として完成したような素晴らしいライブでした。いろいろな方がネット上で「2005年ライジングサンでのフィッシュマンズ再始動以降最高のライブ」と発言が多かったのも宜なるかなと思います。

EN-1. ナイトクルージング (ALL CAST)
EN-2. 新しい人

アンコールはあまり覚えていないです。全員出てきて「ナイト・クルージング」、フィッシュマンズだけになって「新しい人」を歌ったという記憶だけ。それだけ「LONG SEASON」「DAYDREAM」の印象が強すぎました。改めて思い出すのはオリジナル・スリー〜欣ちゃん、譲、ハカセと木暮氏、ダーツさん、原田さんはもう一つのバンドとして一体化していて完璧なサウンドを生み出していて完璧なフィッシュマンズだったこと。それでもダーツさんのギタープレイが年長者としての振る舞いを示していたこと、要所要所でダーツさんのギターがバンドのサウンドを支配しているような場面がありました。これは君島大空さんがゲスト参加して達者なギタープレイを披露するのを見て相当刺激を受けたことが曲間のMCでも欣ちゃんが暴露していました。あと原田郁子さんは自身は前面に出ることなく欣ちゃんのヴォーカルの寄り添う役に徹したのも見逃せません。欣ちゃんと原田さんのピタリと揃ったコーラスワークも完璧でこの2年余りでのフィッシュマンズの新たな魅力になって来ていると思います。

秋には初の台湾公演も開催されるということでますますフィッシュマンズの音楽が世界中で聴かれることを願ってやみません。今回は初めて一人ではなく年下の友人たちと一緒にライブを見ました。たっぷり3時間以上演奏した終演後でしたが飲み会を開催し楽しかったです。友人の一人は原田さんや君島さん、マヒトさんと交流もある男なのでより情報を聞いてフィッシュマンズの音楽をさらに深堀りしていきたいと思います。

シティポップに関する著作で有名な栗本斉さんによるライブレポートがありましたので掲載します。

また2023年末に開催されたフィッシュマンズのツアーのレポートはコチラになります。


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Hiro Kashimi_音楽マーケッター
最後まで読んでいただいたありがとうございました。個人的な昔話ばかりで恐縮ですが楽しんでいただけたら幸いです。記事を気に入っていただけたら「スキ」を押していただけるととても励みになります!