HAKASE_SUNのハモンド・オルガンが全てを繋げてくれた。
フィッシュマンズのオリジナルメンバーである鍵盤奏者、HAKASE_SUNの6年ぶりのソロアルバム「 Let It Shine ! Let It Shine !! Let It Shine !!!」(外国人ぽくLet It Shine !!を3回繰り返すのだそうだ)の発売(アルバムの発売は10/20)に合わせて開催されたリリースパーティに行ってきた。代々木上原の駅近くのhako galleryと言うところで開催、代々木上原も何十年ぶりだろう?学生時代のバンド仲間の実家が大山町にあったのでちょくちょく来たことがあったが一段とオシャンティな街にアップデートしていた。1Fのギャラリーでアニメ「音楽」で注目されている岩井澤 健治監督の原画展をやっていて独特な原画が見れてとても良かったが今日はHAKASE_SUNの演奏に集中することにした。
2Fのイベントスペースに上がるとHAKASE_SUNがあっさり居た。受付で入場フィーを払いHAKASE_SUNの新作CDが会場先行で販売していたので同時購入。まだ先客も数名だったのでHAKASE_SUNに声をかけてみた。「久しぶり!30年ぶりですね!」と自分のことを思い出してくれてよかった。20年ほど前にHAKASE_SUNがthe brilliant greenのバックを手伝っている時に「POP JAM」かなにかの番組出演のNHKホールでばったり会ったことがあるのでそれ以来だと思う、HAKASE_SUNは覚えていないだろうけど(笑)。近況を話しながら自分は2019年の音魂行ったり「映画フィッシュマンズ」の新宿バルト7の舞台挨拶に行ったりHAKASE_SUNがまたフィッシュマンズに戻ってきてくれて演奏しているので嬉しくなり今日のライブも見に来たと伝えた。HAKASE_SUNは30年前と全く変わらない訥々した話し方で答えてくれた。本当にHAKASE_SUNは変わらない。
段々と他の客も入り始めて来たので一旦話はそこで終わり、HAKASE_SUNも他のゲストに対応したりセッティングをチェックしたりしているうちに開演時間になった。いつの間にかあまり広くないイベントスペースは人でいっぱいになっていた。HAKASE_SUNはおもむろにオルガン、HAMMOND XK-1に向かっていた。「今日はお集まりいただいてありがとうございます。HAKASE_SUNの1年ぶりのソロライブをやらせていただきます!アルバムの発売前なので誰も聴いたこと無いと思いますが順番にやっていきます!」と1曲めがスタートした。アルバム1曲めに収録されている「Please Mr.Sunshine」の明るいカリプソ調のバックトラックがスタートしてHAKASE_SUNがオルガンに触れて音が鳴り出した瞬間に、フィッシュマンズの30年前のラママのライブで1曲めにハカセが弾いた「アローン・アゲイン」のオルガンの音色を思い出したであった。
とても優しいハモンド・オルガンの正弦波の音とHAKASE_SUNの包み込むような丁寧な和音が30年前のラママと2021年10月の今日のHAKASE_SUNのソロライブのイントロで繋がった!この時の記事は情けない音色って書いてしまったが撤回したい。この優しいハモンド・オルガンの響きこそが自分が大好きだったHAKASE_SUNのサウンドだったことに気がついた。歳をとったからメランコリックになったのかもしれないけどこの1曲めのオルガンサウンドだけで僕は泣きそうになった。
2曲めのイントロにナレーションが入っていたのでアルバム2曲めに収録されている穏やかなレゲエナンバー「bFGF」、そして先行シングルとして配信されていたかわいいロックステディ曲「子午線ブリーズ」などほぼアルバムの収録曲順に演奏されたと思う。
HAKASE_SUNはひたすらHAMMOND XK-1だけを丁寧に演奏する。告知用のアーティスト写真ではNORDの赤いキーボード(Stage3?)を前にしていたけど今日はハモンド・オルガンしか持ってきていない。曲に合わせてハモンドオルガンの倍音構成を変化させるドローバーと電子ロータリーを操作しながら美しい音色を奏でていく。オルガンの上に載せたギター用のディレイマシーンを弄りながらリアルタイムでダブをかけていくのもかっこいい。
途中のMCも訥々と話すHAKASE_SUN。客席にはミュージシャン仲間もたくさん来ているようで客席側からも多数ツッコミが入っていた。そう言えばHAKASE_SUNは演奏しながらゲストプレイヤーのソロパートになると「オンギター、秋廣真一郎!」みたいに必ず演奏者の紹介を入れていた。昔から変わらず律儀な男だ、HAKASE_SUNは。
セッティングを変更しながら「一人でやっているんでね。サクサク進まなくてすみません。」とHAKASE_SUNが言うと「そこが素敵!」と客席から返る。途中ピアニカの調子を見ながら「5年前に出したアルバムから」と紹介があって「Dolphin's Blues」というしっとり目な曲を演奏。HAKASE_SUNのピアニカも久しぶりだ。
この曲で前半が終了。15分ほど換気タイムがあって後半がスタート。新作アルバム「 Let It Shine ! Let It Shine !! Let It Shine !!!」から「Poco a poco」という暗めのボッサっぽいHAKASE_SUNの中ではちょっと異色な曲を演奏。個人的に好きなテイスト。そして再びピアニカと手に取り「今回のゲストプレイヤーでこだま和文さんにトランペットを吹いてもらった曲。元々のピアニカバージョンで演奏します」と「cafe a la dub」を演奏。「ピアニカのキー『Am』に作っているので管楽器はとても吹きにくい調ですがこだまさんはみっちり練習してレコーディングに臨んでくれた、さすがです」と語るHAKASE_SUNにこだま和文さんへのリスペクトがにじみ出る。この曲もすでにこだま和文さん&HAKASE_SUNのVerでストリーミング配信されているのでぜひ聴いてほしい。
途中、ファンの方の誕生日を祝うコーナーやスカメドレー「Ska Glorioso~ARAGAMA SKA」なども演奏されいろんなハモンド・オルガンの表情を魅せるHAKASE_SUN。最後の曲はタワー・オブ・パワーばりのアッパーなファンク調の曲だった。「この曲をかっこよく聴かせる50代は俺だけと思います!」と語った曲はHAKASE_SUNのものかカバーだろうか分からなかったけどとてもかっこよかった!
鳴り止まないアンコールの拍手のままステージに戻ったHAKASE_SUNはアルバム最終曲でハッピーな「Lovey Dovey Stylee」を演奏、オルガンのエコーの余韻を残して終わるが客席は一向に拍手が鳴り止まない。
そのままHAKASE_SUNが語る。「私が若いころ参加していたフィッシュマンズが今年は映画になってあんなに反響があってそして今でも若い人たちに聴き継がれているなんて20代の頃は想像もつかなかった。ただガムシャラにやっていたので。ここでフィッシュマンズの曲をやります。」というとまたピアニカを取り出した。ブルージーなピアノのトラックをバックに演奏されたのは「いかれたBaby」。30年前のフィッシュマンズのワンマンなどでたまにやっていた佐藤くんとハカセのブルースなジャムを思い出してまた泣きそうになった。この日最大の歓声、拍手が止まらない客席、そしてさらに「今日はもう1曲弾きたいな」とHAKASE_SUNが言う。プロコル・ハルムの「青い影」をオルガン&ピアノのトラックをバックにHAKASE_SUNのピアニカで演奏した。プロコル・ハルムは直接フィッシュマンズのインフルエンスに上がってこない世界線だがこの聖歌のようなナンバーも佐藤くんの描いていた世界と繋がっていると個人的に考えている。このことについてはいずれ書きたいと思う。
終演後、HAKASE_SUNと話すことが出来た。「素晴らしい演奏だった。音楽がまた繋がったよ」と伝えることが出来た。HAKASE_SUNも久しぶりの演奏だったけど自分の中で納得感があったのだろう。言葉には出さないけど演奏しきったという手応えを感じていたに違いない。そこも30年前のフィッシュマンズの頃と変わっていない。
あまりにも素晴らしい演奏だったので来週週末にHAKASE_SUNが参加する2つのバンド〜OKI DUB AINU BANDとこだま和文さんのグループ、KODAMA AND THE DUB STATION BAND〜で出演する富山のフェス「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」が気になっていて「来週末、富山にも行くよ」と思わず言ってしまった。さてこれから来週末に向けてスケジュールを組み直さければいかない。
HAKASE_SUNの次のワンマン・フライヤーももらったので貼っておきます!
《追記》この日のライブでの1曲「cafe a la dub」の動画がYoutubeでアップされました。OKI DUB BANDのマネージャーであるOKI YOSHIさんのチャンネルから。暖かいライブの様子が伝わると思います!
《さらに追記》
HAKASE_SUNのニューアルバム「 Let It Shine ! Let It Shine !! Let It Shine !!!」がストリーミングでも解禁されました。お使いのサービスでまずは聴いてみてください!配信はコチラから ↓ !!