EXTREAMERS the beginning_#07
EXTREAMERS 3.1 運動会
ナノさんのはからいで、総合学校の全校生徒に新しいLMX/瞬足が寄付された.
ダイのLMX/瞬足のナノマシンDNAを培養した最新ヴァージョンのLMX/瞬足である。
のどかで楽しい元気な運動会。
低学年の徒競走の最中にあおいは異変を感じた、大津波?はじめはそう思った、風景が波をうつ。
津波のように地面が大きく盛り上がり押し寄せる第一波が通り過ぎる、走り出した一年生の子供たちの走るトラックがまるで生き物のように空中へ大きな波となる。
瞬足を履いた子供たちは、気づかずに走っている。
危ない!最後尾の女の子が転んだ、ダイが駆け寄る一歩先をあおいが行く。
ダイ!この子をおねがい!抱き起こしてダイに託し先頭をゆく子たちを追う。
一瞬、瞬足のダブルウエッジに触れる、反応するようにわずかに輝く、パワフルに加速するあおい。
ダイと子供の間にゆいが滑り込む、ゆいにまかせて!
うん!ダイもダブルウエッジに手を触れる、光る。ジェットエンジンのような力がみなぎる、瞬足!ダーッシュ!あおいを追う、まだその先には波をうつレーストラックを知らずに競争している3人の子供がいる。
子供たちの前で仁王立ちで衝撃波に怒りをあらわにするテラ・アキレス博士、目的は何だー?
はじけ飛ぶ、パパー!ナノ・アキレスが叫ぶ。
第二波が押し寄せる、セイヤとまどかが子供たちの集団のなかにいる。
逃げ場がない、みんな手をつないで伏せろ!そう言って、駆け出そうとするセイヤを制し、レオナがザックを降ろす、僕が行く!ダブルウエッジに手を触れる、光る、全力でダッシュする!
誰よりも鋭い加速で追い上げるレオナ。速い!
子供たちとセイヤ、まどか、ゆいに第二波が襲いかかる、手をつなぎひとつのかたまりとなった子供たちは、嵐の海に浮かぶ小舟のように翻弄されるが彼らのLMX/瞬足のソールが踏みとどまる、ダブルウェッジが光る。
第一波の先にあおいがいた、少しでもスピードを落とすと暴れる大蛇のようなトラックに追いつかれる。
すぐ先に3人の子供たち、視野の端に大きくうねるトラックをものともせずに追いかけてくるダイ、レオナが見えた。大丈夫だ!そう思った瞬間、レオナが追い抜いた!
来るよ!後ろ!
先頭をゆく子供をレオナは抱きかかえる。
あおいは最後尾の子供を、追い抜くダイは中間の子供を。
同時に第一波が、トラックを鞭のようにしならせた。
子供を抱えた3人は、丘から飛び降りるような形で宙に跳ね上げられた。
うわ!視界の先の風景が嵐の海原のように見えた。
第二波が近づく、丘がせまってくる。
3人の足下を丘が通り過ぎてゆく。
その瞬間、あおいの、ダイとレオナのダブルウェッジが光った。彼らの瞬足がLMXに変わる。
チェーンジ!LMX!
丘から斜面に、着地する。
止まれー!
バランスをショックをコントロールしながら、子供をかばって着地する。
うっ!
ひざ、ひじを地面にすりながら止まるあおい。
勢い余って、転がるレオナ、止まる、腕の中の子供が大喜びしている。
LMXのグリップをスキーのように左右に使いこなし上手に減速するダイ。
黒い大きな影に振り返る、遠くの風景が盛り上がってそそり立っている、それは人の形をなしている。
空間がゆがみ陽炎が立つ、太陽を頭上に戴く黒い衣を纏った女性のすがた。
子供たちを慈しむような悲しいまなざし、すこしだけ微笑んだようにあおいには感じた。
子供たちをかばうナノとアキレス博士、セイヤ、まどか、ゆい、そしてダイ、レオナ、あおい。
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厳しい優しさの気配を残してそれは、ゆっくりと雨上がりの虹のように、空にとけていった。
イナンナ、、、 テラ・アキレス博士の心の中でその名が浮かぶ。
が、しかし何故、、、。
すっごーい!びっくりしたねー!
おどけたゆいの声が、子供たちを笑わす。
さあ!かけっこのつづきはじめるよー!
空気が笑顔にかわる、みんなが動き出す。
運動会の再開だ。
(つづく)20220330
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