EXTREAMERS the beginning_#04
EXTREAMERS 2.6 混濁した時間
ただいま~!おなかすいた~!コントロールルームに入る6人。
ナノさんがいる、アキレス博士がいる。なに?なんか変だ。
6人とは違う方向に振り返ったままのナノさんが凍りついたように動かない、アキレス博士、そしてコントロールルームのすべてのものが、、、
うそー!女の子たちがナノさんの振り向いた先を見ている。いままさに駆け出そうとするゆいが、
もうひとりのゆいがいる。
そしてフリーズしたモニターのむこうに、つまりここから見るバーチャルマシンの中で、何か話しているまま動かないもうひとりのあおいとまどか。
あれ~もうひとりのわたしったらキャップかぶってるよー!ゆいが何か言ってる。
時間が止まっている、、、。
ダイ、セイヤ、レオナ、まどかの心に、なにかここにいてはいけない嫌な感じがよぎる。
あおい!ゆい!走れー!早く!!
ダイがセイヤが叫ぶ、6人が同時にいま来た非常用通路を戻り始める。
理由はわからない、だけどあそこにあのままいてはいけない。走りながらレオナがポケットからマトリックスボールを取り出す。
忘れていた、、、。マトリックスボールは真っ赤に光っていた。
どうしたの?なんなのこれ、レオナのうしろへあおいが追いつく。
ゆい!ついてきてる? いるよー!先頭だよー!
非常ゲートからバーチャルマシンへ、ゼロポイント・スターティングエリアに同じ並び方で立つ。
さあ、どうしよう。レオナはマトリックスボールを見る、まだ赤いままだ。
みんなお帰り~!じっとしててね、ジャックアウトモードにするから、、。
え~!?いつもの明るいナノさんの声が響く、
同時に6人の立っているスターティングエリアが回りながら沈んでゆく。
戻った~!笑顔に戻る6人、
レオナの手の中のマトリックスボールはいつの間にか正常モードに戻っていた。
暗がりに入る一瞬、みんなはそれを見る、理解できない何かが起こりつつある。
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EXTREAMERS 2.61 差異
ナノ・アキレス博士は出来る限りのいつもと変わらない笑顔と元気な声で振る舞おうとしていた。
子供たちがかえってきた。
ただいま~、おなかすいた~、つかれました~、
全身びしよぬれの子供たちが。
まぁー?ずぶぬれじゃない!さあ、シャワーが先ね、着替もあるから、
そしたら温かいもの食べようね!
あのねあのね、人魚がいたんだよ~!
ーーアキレス研究所内のヴァーチャルマシンは、子供たちを物理的に活動させる巨大な環境ロボットである。
アキレス博士が苦心したのは、その安全性であった子供たちの運動能力を最大限に発揮させる為の状況を高度に設定すると事故の危険率が高くなる。
100%の安全性を確保する為に彼は I.N.A.N.N.A イナンナを開発しヴァーチャルマシンの最高位にこの保護監視プログラムを走らせる。
このプログラムは子供たちの運動能力と性質、状況の常時解析から事故の予測を行う。
このおかげで子供が足を滑らせたりする瞬間には、圧縮空気や水、床の材質、形状、位置との連携で見えないエアバッグのように子供を吹き上げ安全に着地させることが可能になった。
100%以上の安全性があってはじめて子供たちをテストできるヴァーチャルマシンが、6秒間も子供たちを見失ったのだ。
コホン!父であるテラ・アキレス博士が子供たちをスタンバイエリアへ誘いながら、
ナノに注意を促す。
私は I.N.A.N.N.A イナンナの様子を見てくる、子供たちを頼みましたよ。
コントロールルームにひとり残ったナノは、ほぼ数分前のテスト記録をプレイバックする。
パーソナルモニターに12分割された12台の記録カメラの映像が映し出される。
00.00.00.00 3人のテストパイロット、あおい、まどか、ゆいがコントロールルームでナノからブリーフィングを受けている、楽しそうにはしゃいでいる風景。
>>早送り
00.01.01;35 3人がナノに促されてヴァーチャルマシンゲートへ
>>早送り
00.03.41.59 ヴァーチャルマシン、テスト開始。
光の中にトンネルが出現し3人が光のゲートに向かって走り出す。
トンネルの向こうには、ショッピングモールとスポーツ施設がひとつになった南の海に浮かぶシティゾーン/トリトン、
200人ほどのヴァーチャルピープルがそこで遊んでいる。
00.05.04.22 ショッピングモールをのぞく3人、画像の揺らぎ、3人消失。
00.05.10.23 ゼロポイントにあおい、まどか、ゆい、そしてダイ、セイヤ、レオナの6人が出現。
コントロールルームでは、その間のナノとアキレス博士の動揺が記録されている。
3人を乗せたヴァーチャルマシン、画面の揺らぎ、約6秒の消失と追跡不能、そして突然あらわれたテスト非番のはずのダイ、セイヤ、レオナ。
<<早戻し
00.00.01.41 ヴァーチャルマシンゲートから戻ってきてコンソールに向かった瞬間、振り返るナノ、キャップをかぶりながらあわててヴァーチャルマシンゲートにむかうゆい、あれ?っとその後を追いかけるようにゲートへむかうナノ。狐につままれたような面持ちでコンソールに戻りテストの最終シークエンスを始めた。
あははは! はらへった~!!
子供たちの明るい声がする。プレイバックをやめて大きく息を吐くとナノはテンションを子供たちに合わせた。
みんな~!おなかすいたでしょう!カフェテリアにレッツゴー!
それからサンプリングしましょうね!
暖かくいつものように元気元気!
そういい聞かせながら子供たちとカフェテリアにむかう。
ナノさん、いま何時ですか? レオナがやってきて低い声できく。
ぼくらの時計とマトリックスボールのクロックみんな5時間進んでいるんです。
何があったのですかここで?
(つづく)20220321