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EXTREAMERS the beginning_#06

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EXTREAMERS 2.7 並行世界

あわわ、にがてー、あきれた表情でお手上げなダイがたすけてとナノを呼ぶ、

驚いて早足で駆け寄るナノ、立ち尽くすセイヤ、

あおいがすみませんでした失礼しましたと静かに電話を切ると唇を咬んだ、

涙がこぼれた。

レオナは騒ぎをよそにナノ博士のいたコンソールのシートにすわり評価データーから何かを見つけようと眺めはじめた。 

どこだ、ここは? 

セイヤがつぶやく。

遠く、女の子たちの先にある大きな窓からの景色にさっきからセイヤは目を奪われていた。

一見とても自然な景色、なのに違った景色。

それはセイヤだから気づくわずかな差異。 

海が、近い。

レオナの後ろからアキレス博士が声をかける。 

レオナくん、 I.N.A.N.N.A イナンナのこの2つのグラフ、サブルーチンドグマ占有グラフとヴァーチャルマシン内気圧変化グラフ、どう思いますか?

あ、グラフを見てレオナは息をのんだ、やっぱり、、、そうなんだ。

でも、なぜ? ぼくたちが、、、。

息をととのえるように深呼吸をしてレオナはそっと考えを声にする、

飛躍していますが、、、僕たちはなぜか突然やってきてしまった、

並行して存在する世界のひとつに。

そして、、心配しています。元の世界に戻れるといいなあって、、。

振り返らずにモニターを見つめて話すレオナの声がわずかにくぐもっている。

アキレス博士はレオナの頭に手のばしその大きな手のひらで優しく強く包む。

キーボードの上のレオナの小さな手の甲に涙が落ちた、

だれにも気づかれないようにその手をパーカーのポケットにレオナはゆっくり移動させた。

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EXTREAMERS 3.0 ウォーターワールド 

セイヤは窓を大きく開けた、南太平洋の潮風が部屋を満たしドアから研究所の廊下へ抜けてゆく。

きゃー、どこかの部屋のドアが風圧で勢いよく閉まり、どこかの部屋の中から何かが飛ばされる。

水平線から空いっぱいに立ち上がる積乱雲を眺めながら、セイヤはくすっと笑った。

みんな〜ごはんよー! ラウンジからナノ博士の声がする、さあ!手伝って,働かない子は食べさせてあげないからね!

それぞれの部屋のドアが閉まり、妙に明るい元気な声でラウンジに走ってゆく6人の子供たち。

ダイ、セイヤ、レオナ、あおい、まどか、ゆいの6人やってきたこの世界は、

2012年の大海進によって海面が30m上昇した世界だった。

その原因はポールシフトによるものでこの世界の地球の地軸は傾き、カナダ、アルバータが北極、インド洋に南極、日本は赤道に近い緯度に位置している。 

6人はアキレス研究所に暮らすことになった。

ちいさな倉庫、実験室、会議室にベッドや机が運び込まれ共同生活が始まった。
さらに、数キロ離れた総合小学校に臨時転入生として通い始める。

総合学校。

国語、算数、理科、社会、外語、
農林水産、技術家庭工業、保健医療、そして班行動。
5歳から始まる学校は9年間、集団で生活し自給自足のための技術を中心に学ぶ。
生徒100人に対し先生3人、卒業生7人の体制で教え、さらに10人の用務員が子供たちの衣食住に関する生活を補助する。班はそれぞれ6歳から12歳男子の班員7人で構成される生活班。

学年別の授業以外の野外活動はすべて班行動、

男女あわせて約150の班が分担して、農業、畜産、漁、生活、修繕、保育、研究などの野外活動を持ち回りで行う。

持ち前の明るさと元気さで、最高学年の5人と5年生のゆいたちはすぐに総合学校にうちとける。

というより、低学年、2012年の大海進後に生まれたベビーブーム第一世代の5〜6歳児が生徒の30%を超える。いっきに6人にはかわいい小さな弟妹ができたようなものだ。 

弟のいるあおい以外、他の5人は末っ子か一人っ子、なれない低学年の世話に手を焼きながらも数日後には立派な班長になっている。

テラ・アキレスとナノは、並行世界からやってきた6人の原因を追求していた。もちろん彼らのつくったバーチャルマシンにはパラレルワールドを超えるための機能などない。

時間、未来、選択、可能性、可塑性、6人が証言した黒い岩盤、止まった時間、もうひとりのゆい、黒い服のイナンナ。彼らの2012年に大海進、ポールシフトのなかった可能性の世界のこと。


柔らかな未来。テラ・アキレス博士の考える時間の概念〈時間は主観的で能動的に、存在するものの意思と運動量に関わり、可能性と無限の選択肢のなかを移動していく〉、 そして6人はまさにそれを実証している。

ウォーターワールド、6人はこの世界と自分たちの世界を区別するためにそう呼びはじめた。
そう名付けることで、まるで旅行気分である,海外留学の気分、いつでも帰れる気分、ナノは彼らの小さな強さとポジティブな明るさのうらにある帰りたい気持ちを感じて、必ず還してあげる。そう思った。

最初にノイズを実感したのはダイだった。班の子供たちにわかったかー!と口癖のようにどなるたびに、はーい!という返事にちょっと遅れて聞こえる。

それがLMX/瞬足を構成しているナノマシンのレスポンスだと気づくのにそうかからなかった。そのことをナノさんにいったら、すっごーい!といってその次の日に、みんなのLMX/瞬足に何かを注射した。えー?と、思ったけどとってもうれしそうだった。

シューズの側面のダブルウェッジ、あのマークをさわるとナノマシンの反応が良くなることに気づいて、みんなといろいろ話した。

そうして、雨期は過ぎてゆく。

彼らのいう初夏、こちらでは雨期のおわり総合学校の運動会が行われる。班対抗の楽しいイベント。

それぞれの班ごとに旗をつくり、さまざまな競技で戦う,子供たちはわくわくする時期がやってきた。

そして、あの不可解な黒い力は再びやってきた。

(つづく)20220327

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