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池袋サンシャインDAY

近未来都市『池袋ネオサンシャインシティ』を舞台に繰り広げられる、
『イカレ時計屋』とその仲間達の活躍、ハードボイルドな物語



声劇台本です。
どこかなにかで使っていただけたら幸いです。
「使ったよ」とでもコメントいただけたらありがたいです。
いつかどこかで誰かのお役に立ちますように。



■登場人物
〇メイン
【正樹】池袋にある時計屋のオーナー。着物姿でメガネをかけた笑顔が似合う若旦那。

【あんな】モノの声(時計限定)の声が聴こえる能力を持つ高校生

【武(たけし)】あんなの兄。妹と同じくモノの声が聴こえる能力を持つ。

【山崎】焼き鳥屋「乙女塾」のマスターのオカマ。

【ささみ】高校生。乙女ロードの常連。若手同人作家。

【つくね】高校生。乙女ロードの常連。コスプレーヤー。

【遊人(ゆうと)】池袋中央署に勤務する若きキャリア警部なヘタれ

【石本】石本組の若頭。雑司が谷を心から愛する切れ者。

【アルマーニ】石本組構成員。アルマーニをこよなく愛す。

【アルテミス】池袋サンシャインシティの敷地内に立てられた時計台の時報人形。

〇サブ
ー穂富
ー時計さん
ー溝口
ー豊島区長
ー構成員
ーSP1・2
ー警官
ー時計台


■第一話


○豊島区長の講演
※ネオサンシャインシティの計画についての演説
講演風景。人のザワメキやカメラのシャッターなど

豊島区長「池袋は今日(こんにち)、副都心という位置に甘んじております。時代の流れとは早いもので、かつてサンシャイン60も東洋一高いビルと呼ばれた時代がありました。私はもう一度、池袋に東洋一と呼べるものを作りたい。私は、ここにお集まりいただいた同じ志を持つ投資家の皆さんと共に、サンシャインシティの拡大計画を宣言いたします。池袋は…ネオサンシャインシティは生まれ変わり、日本の中心として再び輝きを取り戻すのです。」

人々の拍手

夜空にアルテミスの歌が流れる

○池袋サンシャインアルテミス時計台(夜)

歌を歌うアルテミス。武が歩み寄る。
ビル風が吹く時計台。アルテミスが歌を歌う。

アルテミス(M)「歌を歌っていた。それが私の仕事。サンシャインシティと呼ばれるこの場所で。時計台と呼ばれるこの場所で。決まった時間に変わりなく、たくさんの人間たちに時間を教えるのが私の仕事。私の仕事は『時報』と言うそうだ」

歌を歌うアルテミス

アルテミス(M)「この街は好き。眼下を見渡す町並み、人の群れ。たくさんの人たちが生きていて、たくさんの人たちが生きている音が聞こえる。夜の街。散りばめられた灯りはまるで宝石のよう。人の息吹を伴奏に、街の灯りをステージに、私は歌う、たくさんの人たちのもとへ歌が届くように」

歌を歌うアルテミス武の足音

武「やぁ、はじめまして。時計台の歌姫『アルテミス』」

アルテミス(M)「(不思議そうに)あなたは、だぁれ? こんな夜更けに、どうしたの?」

武「どうしたの? って聞かれても。君に用事があるから来たんだよ? 仕事中、悪いね。少し僕の話を聞いてくれないかい?」

アルテミス(M)「(驚いて)あなた、私の声が聴こえるの? 機械の私の声が?人間なのに? どうして?」

武「なあに、些細なことさ。これだけたくさんの人がいるんだ。その中で一人くらい不思議な力を持っていてもおかしくないだろう?」

アルテミス(M)「そうね、そうかもしれないね。でも嬉しいな、私と話が出来る人間がいるなんて。それで、話ってなあに?」

武「実は、アルテミス。君に手伝ってもらいたいことがあるんだ。なぁに簡単な…伝言さ」

ポケットから工具を取り出す武

○池袋雑司が谷。お寺の境内

正樹を訪ねる、あんな。
蝉の鳴き声墓場を一人歩くあんな

あんな「ミンミンゼミ様? 暑中お見舞い申し上げます。お願いだからそんなにがんばらないで?…暑苦しいので…かしこ」

蝉の鳴き声

あんな「ああ…暑い。ていうかここどこよ?墓場?なんで東京の真ん中にお寺があるの?…東京、池袋って聞いてたから、もっと人がいっぱいいて賑やかなイメージだったけど、一本道を入ったら、なによ、こんな田舎のような町並み。ほんとに池袋?…(遠くを見て)あれ? サンシャインタワーよね? じゃあ池袋か…ああ、もう!」

ドカと座る、あんな

あんな「お腹すいたなぁ……(首を振って)ああ、だめよ、あんな。今一瞬お供えもののおはぎを見たでしょう? それはダメ、絶対にダメ!お腹が壊れる以前に人として何かが壊れるからだめよ、あんな。それは人として最後の防衛ラインなのよ」

蝉の鳴き声

あんな「蝉ぃー! うるさい蝉ぃー! 食っちまうぞおー?…はぁ…。道を聞こうにも墓石か地蔵様しかないし…いっそ幽霊にでも道を聞いてみる? なんてね」

正樹「迷子はいねーがー?」

ズザザと身を屈める、あんな

あんな「…ぎゃー、出たー!」

正樹「迷子はいねーがー? 墓場に腰を下ろす罰当たりな迷子はいねーがー?…一瞬お供えものを食べようと思った迷子はいねーがー? そんな悪い子はオラがくっちまうぞぉ?」

あんな「きゃー! ほほほ、ほんの出来心なんです!だから私を食べないでー!」

正樹「…はは、あははは。あんな、俺だよ、俺。顔を上げて、みそ?」

あんな「…え…、あ…あ! ま、正樹先輩!? 先輩!」

正樹「いつまでたっても来ないから、迷ってるんじゃないかと迎えに来たぞ」

あんな「…た、たすかったぁ」

○正樹の時計屋

店に戻る正樹。石本組が依頼に来る。
引き戸を開けるたくさんの時計の針の音が聴こえる

正樹「ようこそ、我が城へ」

あんな「(店内を見渡して)わぁあ、時計がいっぱい…」

正樹「そら、時計屋だからな(笑)そこ座っといで。今麦茶でも持ってくるから」

あんな「…」

正樹「ああ、気が利かなかった。お中元の羊羹ぐらいしかないが腹の足しになるかね?」

あんな「(嬉々として)はぁい、ごちになりまーす!」

引き戸を開け奥に行く正樹たくさんの時計の針の音が聴こえる

あんな「チックタックチックタックチックタック」

時計(鳩時計)「ポッポー♪ポッポー♪」

あんな「(喜んで)おー! ポッポー! ポッポー!」

あんなの拍手引き戸を開け、麦茶と羊羹を持って来る正樹

正樹「おいおい、高校1年になって『ポッポー』はないだろ(笑)」

あんな「いいんです、感受性が良いほうが人生楽しく生きられますから。それに高校2年生ですよ。17歳です」

正樹「そうか、もう17歳だっけか…時が経つのは早いもんだ」

たくさんの時計の針の音が聴こえる

あんな「時計っていいですね」

正樹「ん?」

あんな「いつまでも変わらず、規則的に時間を刻んでくれる。嬉しいときも、悲しいときも、いつも平等に、カチコチと」

正樹「良いことだけじゃないさ。休まず延々と時間を刻んでるんだ。いつかは歯車は磨り減りくたびれて、針が狂っちまう」

あんな「でも、それを直すが先輩の仕事ですよね? 素敵だと思いますよ」

正樹「そうか? そう言ってくれると嬉しいね。…ふふふ(ふくみ笑い)、それだけ仕事に理解があるということは、まかせていいよな?」

あんな「…え? 何をですか?」

正樹「店番」

あんな「えええ!? 私、働くの?」

正樹「当たり前だ、働かざるもの食うべからず!ただで家に居候させるもんかい。…まぁ、バイト代は出すよ、時給500円+出来高」

あんな「んな!500円!?や、安すぎです!それならコンビニかファミレスで働いたほうがずっと…って、え?出来高って?」

正樹「仕事はいたって簡単。店番さえして、時折やってくる依頼主の応対をするだけさ」

あんな「応対?」

正樹「まぁ、うちはただの時計屋なんだけどね。たまぁに特別なお客さんが来るんだ」

あんな「特別なって…そうか…池袋ですもんね!?…まさか、撮影ものですか? 純情可憐な女子高生のけなげに働く姿を、カメラで抑えたり…あ、待って、そういえばテレビで見たことがあります。見ず知らずの人から極悪な通話料の電話がかかって来て、他愛もない話をして引き伸ばすという仕事?…うそ!? できないですよ!?私みたいな田舎育ちの女子高生にそんな器用こと!」

正樹「馬鹿もん。ドキュメンタリーものの見すぎだ。違う違う、特別なお客さんっていうのは…」

店の外に車が止まる音。

正樹「…おや、ちょうど特別なお客さんが来たかな?」

引き戸が開いて、男が入ってくる

アルマーニ「そいやー!先生!また、ひとつ仕事をお願いできますかい?」

正樹「どうした? 石本組の若いの。たしか…アルマーニ!」

あんな「組!?何組!?」

アルマーニ「先生、アルマーニはよしてくだせえ(笑)」

正樹「そんな立派なアルマーニを着てアルマーニと呼ばずなんと呼ぶ? まぁたおニューを買いやがったな、おまえ?」

アルマーニ「へへ、いいでしょう?秋冬の新作なんすよ、これ?」

正樹「まったく、この暑いなか、よぉ着込むことで」

アルマーニ「それはお互い様でしょう。この暑い中、着物を着込んでる先生に言われたくないなぁ(笑)。それに、こいつは俺らの制服みたいなもんすからね。ビシッと決めねえと!」

正樹「おいおい、服の自慢をしにきたんかい? アルマーニよ?」

アルマーニ「おっと、いけね。…いや、時計の調子がおかしいんで。こりゃもしやヤバイもんではと若頭がおっしゃるんですわ。だから先生になんとかしてもらえと」

あんな「ヤバイ??時計?」

正樹「わかった。伺おう。ちょうどいい、あんな、付いてきな。早いうちに慣れたほうがいいしな」

あんな「ちょ、ちょちょ、うは、なんか不安なんですけど」

アルマーニ「ささ、先生、外に車を待たせてますんで。お急ぎ下さい」

引き戸を開けるアルマーニ。出迎える数人のスーツ姿の男と黒塗りのベンツ

構成員1「そいやー!先生、乗ってくだせえ!安心してくだせえ!防寒防弾完備でさぁ」

あんな「きゃー!?、黒塗りベンツ~!」

○石本組(庭)

黒塗りのベンツが止まる。構成員達のざわめき。
玄関を目指す正樹とあんな。

構成員2「あん? この娘なにもんだ?」

構成員1「ここいらじゃ見ねえ顔だがな。…おう、よぉ見ると童顔だけどべっぴんだぜ?」

構成員2「おほっ!おう姉ちゃん、ちょっと小遣い稼ぎしてみないかい?なぁに悪いようにはしねえさ!」

あんな「ひい、あの私は、店番の仕事が、店番が、500円が!あの、あの!」

正樹「そんなに怯えなさんな。口は悪いが根は良いやつらさ。ほいほい、通しておくれ」

アルマーニ「おめえら、こちら先生のお連れさまだ!道を開けねえか!」

構成員1「そいやー!足元んに気ぃつけてー!お通りくだせえ、お嬢さん!」

正樹「うんうん、部下の躾が良いね、さすがアルマーニ」

アルマーニ「へぇ、恐縮っす!」

あんな「…先輩、先輩って…何者?」

○石本組若頭の部屋

時計の修理。正樹の仕事(裏)

正樹「失礼します」

石本「おう、入ってくだせえ」

ふすまを開ける正樹

正樹「どうも、時計屋です」

石本「やあ、これは先生。お忙しいところすまないね。…おや?そっちの娘さんは?」

正樹「まぁ、助手といったところで」

石本「今度の助手は、ずいぶんと若いんですね。どういったご関係で」

正樹「親友の妹でね。身寄りがなくて、とりあえず預かってまして、それで?ヤバイ時計ってのはどれだい?」

置時計を置く石本

石本「これですわ。ある筋から譲り受けたアンティークものなんですがね」
正樹「ほいほい。では失礼して」

時計をいじる正樹

石本「明治時代初期のドイツ製のものらしいんですがね。あの年代のものにしてはどうにも歯車の音がおかしいんですわ。こりゃ用心に越したことはないと思いやして」

正樹「恨みを買うのがあんたらの仕事だからな。それに…いやいや、さすが若頭、そっちの方では良い目利きをしてる。仕込んであるな、時限式だ」

石本「あちゃー…やっぱりかぁ、まいったなぁ」

あんな「…仕込んである? 何を?」

正樹「(棒読み)何って? 爆弾(はぁと)」

あんな「ばばばばば、爆弾!?」

正樹「解体するのも面倒だ。神田川にでも持ってって爆発させた方が安くすむぜ?」

石本「馬鹿言っちゃいけない、川にゴミを捨てるなんてもってのほかだ!『地域密着』がモットーの石本組の名がすたる!」

正樹「じゃあ、解体で?」

石本「解体じゃない、修理だ。元通りに頼んますよ、先生?(ニヤリ)」

正樹「へい、毎度あり。だそうだ、あんな」

あんな「…え?」

正樹「プラス出来高の仕事だよ」

(以下、正樹、サービスシーン)

正樹「そう…初めて会ったときから目を付けていたんだよ…あんな」

あんな「目を付けてって…せ、先輩…顔、顔が近くないですか?…恥ずかしいです」

正樹「ダメだよ、あんな。目をそらさないで? もっと…良く見せておくれ…きみの…その体を」

あんな「体って…こんなところに連れてきて…プラス出来高の仕事って…やっぱり、そういうことだったんですね…。ひどい、騙したんですね…先輩…。やっ、顔を近づけないで…息が…かかって、くすぐったいです…離れてください」

正樹「綺麗な足だね、スベスベして柔らかそうだ」

あんな「ちょ、どこ見てるんですか? は、恥ずかしい…みないで!」

正樹「つれないことを言うなよ、あんな。いっしょにしようよ? ねえ、あんな? 俺とじゃ? いやかい?」

あんな「…先輩のいじわる…。いやじゃない…いやじゃないけど…いまはダメ…心の準備が…もう少し待って…」

正樹「あんな…俺は待てないよ、いくよ、あんな」

あんな「…だ、だめ、まっ、先輩、先輩!!」

(サービスシーン終了)

正樹「なんせ、時限式なもんでねっ、さっさと仕事しないどぉ…っこいしょっと」

トンと置時計を、あんなの膝の上に置く正樹

あんな「…え? はい?…きゃー!! 爆弾が!? 爆弾が私の膝の上にー!!」

正樹「はい、暴れない。暴れると衝撃で爆発しちゃうよ? 作業中の振動を抑えるクッションが必要なわけで、あんなのムッチリ太ももは出番だね?」

あんな「やー!?私そんなに太ってなー!爆弾!爆弾がー正座した膝の上ー!なにこの江戸時代の拷問みたいなしちゅえーしょーん!?」

正樹「爆弾を膝枕するなんてオツなもんじゃないか、あははー…ちょいちょいっと(爆弾をいじる)」

あんな「せんぱい…楽しんでますね…いじわる…」

時計のフタを開ける正樹

正樹「ほい開いた。…おいおいこりゃ火薬の羽振りが良すぎないかい?雑司が谷から石本の屋敷が無くなるとこだった…」

石本「ほぉ、こいつは…手の込んでそうな…。裏でもここいらじゃあ見たことねぇな…プロの仕業か?」

時計を直す(爆弾を解体する)正樹

あんな「…わた、わたし、膝枕、爆弾、ひざ、ひざまくら…目の前、まっくら…あう、あうう」

時計(M)「…ンタグ?」

あんな「…え?」

時計(M)「グーテンタグ?(こんにちわ)」

あんな(M)「…だれ? だれの声? これ?」

時計(M)「グーテンタグ?(こんにちわ)」

あんな(M)「時計…さん…?」

時計(M)「…イングリッシュ、オーケー?(英語ならいいかい?)」

あんな(M)「え、あ、えっと、い、いえすいえす…すこし」

直す手を止める正樹

石本「どうなさって? 先生?」

正樹「こいつは…本当に手の込んだ…この技は…まるで…」

石本「先生…先生? 大丈夫ですかい?」

正樹「(石本に気づき)え? ああ、いや。やっかいだな。奥のほうで右と左のリードが入れ替わってる。たぶん右のリードを切るのが正しいと思うが…これは…」

あんな「…右…だと、思う」

石本「は?」

あんな「…右であってると思う…」

正樹「あんな、どうしてそう思う?」

あんな「…」

正樹「あんな?」

あんな「思うっていうか…右のこめかみ?の辺りが痛いって…時計さんが言ってるような気がして?…えっと、ライトって右でいいんだっけ?あの…」

石本「お嬢さん、冗談はよしなせえ。何を馬鹿なことを言って…」

正樹「時計が右と言ったんだな?了解」

石本「ちょっ、せんせ、あっ!」

ニッパーでコードを切る正樹時計の針が鳴り始める

正樹「はい、終了。終わりましたぜ、若頭」

石本「…(胸を撫で下ろして)…ふう、ちょっと、先生。冗談は止めてくだせえ。心臓が止まるかと思った。もともと右のコードってわかっててやったんでしょう?」

正樹「あはは、驚きました? いら、すんません。あんまり楽勝だったんで、ちょっとお茶目しちゃいました」

時計の音

石本「…ああ、そうだそうだ、この音だ。流石ドイツもの。音が違うわ。やるねえ先生」

正樹「いえいえ。腫れ物も取れて時計さんも喜んでるようで」

石本「まったくだ。まるで時計が『ありがとう』と言っているようだな」

時計の音

あんな「(膝の上の時計を見下ろし)…ダ、ダンケ、シェーン」

○雑司が谷路地(夕)

ひぐらしが鳴く雑司が谷の路地を歩く正樹とあんな。
祭りの季節であり、神輿が通りすぎる『わっしょい、わっしょい』

正樹「すっかり長居しちまったな…。石本のやつ、アンティークと雑司が谷のことになると延々と話が長くなるんだ、困ったもんだ」

あんな「…ひどいです、ほんと…ひどいです」

正樹「だろ?…まぁ、ガラは悪いけど気の良い連中さ、そのうち慣れる」

あんな「違います、ひどいのは先輩です!プラスαの仕事ってどんだけプラスなんですか!? αどころかγ(がんま)っていうかΖ(ぜーた)ですよ! これじゃあ、しけた時計屋の店番時給500円のほうがオマケのプラスαじゃないですか!」

正樹「あんな…いま、さらっと、うちの店をしけたとか言ったように聞こえたが?(汗)」

あんな「先輩はそういう人でした! 忘れてました! 私をほったらかして、いつもお兄ちゃんとつるんでて、用があるときだけ来るのが当たり前のように呼んで、呼ばれたら呼ばれたで馬鹿騒ぎに巻き込まれて!説明もなし!7年振りに会えたと思ったら爆弾処理ですか!? いい加減にしろ馬鹿ー!」

正樹の胸をグーで殴るあんな

正樹「いたいたいたいた! わっ、悪かった、あんな! がはっ、いいパンチ持ってやが…俺もいろいろあったんだって! 時計屋だけじゃ食っていけないし、かといって、あんなを引き取らないわけにはいかないし」

あんな「(殴るのをやめて)…それでも大事なことは説明してくれないんですね」

正樹「…ん」

あんな「………私のこと、試しましたね?」

正樹「…」

あんな「…先輩は本当のことを言ってない。お兄ちゃんはどこに行ったんですか?…先輩は何を考えてるんですか?教えてください」

正樹「…」

あんな「…」

正樹「…焼き鳥」

あんな「…え?」

正樹「焼き鳥食いてぇなぁって考えてた。俺の知り合いがやってる店がこの近くにあって、この辺じゃ一番の店で…まぁ、マスターがちょっと、あれなんだけど」

あんな「…」

正樹「…」

あんな「(話題を切り替えようと)そうですね!! お腹好きましたね!! その焼き鳥屋さんほんとにおいしいんですか?」

正樹「もっちろん、☆みっつだ。味だけは保障する!」

あんな「もうみっつでもよっつでもいいです! お腹の時計が鳴りまくりです。行きましょー!」

あんな(M)「7年振り会った先輩は、変わってなかった。下手なウソは『聞くな』のサイン。欠けた歯車はみつからない…時計の針は、まだ、動かない」


■第2話


○雑司が谷 焼き鳥屋「乙女塾」店の前

店の前に立つ正樹とあんな

あんな「ねえ…正樹、先輩」

正樹「なんだ?あんな?」

あんな「ここ、焼き鳥屋さんなんですか?…なんか…なんかあれというか」

正樹「どうした?何かおかしいとこあるか?言ってみろ」

あんな「思いついたところで3つ。何故ショーウィンドーにゴシックロリータと呼ばれる服が飾ってあるのか?何故『いらっしゃいませ』ではなく『おかえりなさいませ、ご主人様』という貼り紙が貼ってあるのか?…しかも達筆な筆書きで。そして何故、店の名前が『乙女塾』というおおよそ焼き鳥屋と名乗るには程遠いものであるのか?」

店の引き戸を開ける正樹

ささみ「おかえりなさいませ、ご主人様ー!」
つくね「焼き鳥乙女塾ー!ご主人様とお嬢様のおかえりでーす!」

正樹「期待していいぞ。中身も似たようなもんだ」
あんな「…」

○雑司が谷 焼き鳥屋「乙女塾」 店内

店内に入る正樹とあんな。焼き鳥を焼く音が聞こえる。

山崎「おかえりなさいませー。あ、ああ?マサちゃん、おかえりなさい(はぁと)」

正樹「よぉ、マスター。相変わらず繁盛してるね」

山崎「そうなのよぉ、忙しくて困っちゃうー。ふふふ、ふふ(♪)」

正樹「あの潰れかけてた焼き鳥屋がよくぞここまで…やっぱり石本の若頭は切れもんだな」

山崎「ほんとよねー♪商才あるわ、あのコ。ヤクザにしとくのは勿体ないわ…ああ、ちょっと、ささみちゃん?」

ささみ「あ、はーい」

山崎に駆け寄るささみ

山崎「腕、ひじのとこ。トーンの63番の切れ端がついてるわよ」

ささみ「あ、ほんとだ、すみません」

山崎「今時デジタルに頼らないで漫画を描き上げる職人根性や良し、だけど、お店に出る時は気を付けて!ほら、タイも曲がってる。(タイをなおして)…よし、いい、女の子は外見も大事なの。服装の乱れは心の乱れ、いい?」

ささみ「はい!」

山崎「それと、影は62番。ベタフラッシュは控えめに。訴えたいシーンがあっても濃すぎる演出は読者には届かない!」

ささみ「マスター!な、なぜそれを!」

山崎「心の乱れはネームの乱れ。私はなんでもお見通しよ。さぁお行きなさい、ささみ!今は接客の時間よ!」

ささみ「了解です、マスター!」

3番テーブル席

つくね「おまたせしました、ご主人様。塩の盛り合わせと瓶ビールでーす」

溝口「ああ、悪いね、つくねちゃん」

つくね「…あれ?溝口さん、元気ないですね…どうしたんですか?」

溝口「ああ…ちょっとね。家に帰りたくなくてね」

つくね「ええ、どうして?前は母ちゃんは綺麗だし娘は可愛いしマイホームサイコーって言ってたじゃないですか」

溝口「ううん…ちょっとね、その娘が高校の受験を控えて神経質になってんだ。家に帰るなり、しけた顔見せんなジジィ…なんて…はぁ…昔はあんなに懐いてくれたのに」

瓶ビールをコップに注ぐ、つくね。

つくね「ああ、わかります!私も高校受験の時は荒れてました。未来が見えない不安っていうんですか?今思うと小さいことで悩んでたなぁって笑っちゃいますよ?…そうそう、私もお父さんに散々当たり散らしたっけ…今思うと懐かしいな。あ、今はお父さんと仲良しですよ(笑)」

溝口「…へぇ、つくねちゃんにもそんな時期があったんだね」

コップを置いて

つくね「溝口さん…私で良かったら相談に乗りましょうか?同世代の女の子の悩みなら、ある程度お答えできますよ?」

溝口「ほんとうかい?…すまないね。じゃあお言葉に甘えようかな」

つくね「かしこまりました。(カウンターに向かって)3番テーブル『家庭の愚痴』入りまーす!」

山崎「はぁーい」

あんな「ほんまもんや…ほんまもんのサービスがここにある…」

山崎「おっとっと、マサちゃん、カウンターでいいかしら?いま空けるわね」

正樹「ああ、すまないね」

椅子を動かす山崎。隣の席でつっぷしていた遊人が目を覚ます。

遊人「(目を覚まして)ん、おお、…すんません…寝ちゃった…(正樹と目が合って)ああ、お前!いかれ時計屋!」

正樹「おや、誰かと思えば、遊人(ゆうと)ちゃんじゃないかい?」

あんな「知り合いなんですか?先輩」

正樹「池袋署の署長だよ」

あんな「ええ?署長さん!すごーい」

正樹「そうそう、すごいの。もっとも今は社会の荒波に揉まれてサンシャインシティの平和な乙女ロード地区を散策するのが仕事らしいけどね」

遊人「ううううるさい!僕を馬鹿にするな!これでも国立出のキャリア組だぞ!公務執行妨害で逮捕するぞ!」

正樹「はいはい、エリートさん、思いつきで物騒なこと言わないの。…どうしたい、えらく荒れてるじゃないか?」

遊人「誰のせいだ、まったく!お前といい石本といい…いつもいつもお前らにかき回されて、キャリアの面子がズタズタだよ!とうとうこの僕が、このキャリアの僕が、人形探しだぞ?馬鹿にしやがって!」

正樹「人形探し?」

遊人「アルテミスだよ!サンシャインシティの時計台の時報人形!あれが盗まれたんだと」

正樹「…アルテミス?アルテミスが盗まれたのか?」

遊人「(自信なく)…いや!盗まれたかわからないけど…人形だから歩けるわけないし…盗まれたとしか…。僕にもわからないよ。きっとどっかの熱狂的なファンが連れ出したんだろ?どうでもいいんだ。もともとあそこは本庁の管轄なんだ」

あんな「本庁?え?だって、池袋でしょ?署長さんの管轄じゃないんですか?」

遊人「…まぁ、民間人が知らないのは当然か。今のサンシャインシティは特別なの。ある意味試験的な都市計画だから偉い人がいろいろと複雑に絡んでてさ。とはいえ…面子を保つためにウチからも誰か出なきゃ、署長頼みますよ、どうせヒマでしょ?…ふ、ふ、ふ…ふざけるなー!僕は署長だぞ!部下が上司に命令するなー!僕はキャリアだぞ!キャリアなんだー!」

あんな「あちゃー、すっかり出来上がって…あれ?…先輩、どうかしたんですか?」

正樹「ああ、いや。なんでもない。…アルテミスの歌声は雑司が谷まで聴こえるからな。それがしばらく聴けないとなると寂しいなと思っただけさ。それより、あんな、今日はタダメシにありつけそうだぞ?」

あんな「…え?」

正樹「おーい、ささみちゃーん!」

ささみ「はーい!なんでしょう?ご主人様」

正樹「こちら、乙女ロード地区の平和を護る偉い署長さんなんだ」

ささみ「えええ、まじっすか?それまじっすか?」

遊人「え?ああ、まぁ…広い意味では…うそではないが…」

ささみ「すごーい!所轄の署長っすか?尊敬しちゃうなぁ」

遊人「…尊敬?…僕が?」

ささみ「あったり前じゃないすか。本店に啖呵切ったりするんでしょ?『うちの部下をなんだと思ってるんだ、馬鹿野郎!』って」

遊人「え?ああ、まぁ…たまにはわね。たまにだよ」

ささみ「まじっすか!?うわぁ、聞きたいなぁ!教えてくださいよ、署長って普段どんなことやってるんですか?気になるなぁ(←どうやらこいつの新刊は刑事モノらしい)」

遊人「聞いてくれるの?僕の話、聞いてくれるの?…本当、本当かい?…いや、普段は大したことはないんだよ、その辺はサラリーマンと変わらないというか、でもいざ事件が起こったら俺達は命がけで、そう!命がけで(続けられるならアドリブでクダ巻いてください)」

手を叩く正樹

正樹「はいはーい。カウンターのお客様『現場の愚痴』入りマース、遊人君のごちになりまーす」

山崎「はぁーい、毎度ありー」

遊人「おらー!焼き鳥でも酒でもじゃんじゃんもってこーい、俺ぁ署長だぞー!!」

正樹「あんな、食えるときに食っとけ。それと偉いやつにたかれ。それがこの街のルールだ」

あんな「先輩…容赦ないね」

○中川時計店 店前(夜)

家路につく正樹とあんな。へべれけになった遊人を抱えてあるく正樹

遊人「いいかぁ!?事件は会議室なんだ!俺はキャリアのひよっこじゃねえんだぞ、くろつきぃ!年上だからって署長に命令すんなぁー!くそぉー偉いんだぞ俺はー!」

正樹「はいはい、えらいね、えらいね…よしよし、よぉしよし」

遊人「えらいんだー!子ども扱いするなーぐぉおお(寝)」

正樹「おおい!急に寝るな、もたれかかるな、重い、重い!」

あんな「相当酔ってますね…署長さん(汗)」

正樹「ったく…こんなんで署に戻ったら部下にどやされんぞ?…しょうがない、ウチで寝かせていくか…まったく、世話のかかる署長だことで」

あんな「…ふふ、なんだかんだいって優しいんですね、先輩」

正樹「まぁ、こいつ言うとおり、俺や石本のせいで肩身の狭い思いをしてるのは本当だしな。この辺で恩返しでも…(よろけて)おっとっと…」

あんな「わっ、ちょっ、大丈夫ですか?先輩」

正樹「…おお、まずいな、俺もちょっと飲みすぎたか…とと。まぁ、今夜はあんなの歓迎会も兼ねてたからな、めでたいことは盛大にやっとかないと、とと」

あんな「…」

正樹「…ん?どうした?あんな?」

あんな「…歓迎されてますか?」

正樹「ん?」

あんな「私、先輩に歓迎されてますか?」

正樹「…」

あんな「…それとも、迷ってますか?自分と深く関わったら不幸になるかもとか、そんなこと考えてませんか?例えば…そう、お兄ちゃんみたいに」

正樹「…あんな…お前」

あんな「ああ!何があったなんか知りませんよ?ただなんとなくそんな感じかなーって、乙女のカン?」

正樹「…」

あんな「今考えると、いなくなる前のお兄ちゃん、なんかおかしかったなーって思うんですよ。きっと人と違う力を持ってると心にも負担がかかるんですかね?」

正樹「…そうか。やっぱりお前も力を持っていたんだな?」

あんな「ああ!いえ!私のはお兄ちゃんみたいに凄くないです!時計だけですよ。お兄ちゃんも知らなかったんじゃないかな?」

正樹「時計だけ?」

あんな「…ええ、たぶん時計だけだと思います。それも時計と話せる程度のしけたもんです(笑)。だから人に威張れるほどのもんじゃないです。…でも凄いと思いませんか?時計だけですよ!ピンポイントで!」

正樹「…ん?」

あんな「だって、まさに先輩の仕事のお手伝いするためにある力じゃないですか?これってタダの偶然じゃないですよ、きっと」

正樹「…」

あんな「今まで先輩に何があったか知りません。言いたくないなら教えてくれなくてもいいです。…でも、これからのことは二人で考えましょう?私、一生懸命ついていきますから」

正樹「…あんな」

あんな「…ね?」

正樹「…すまんな」

あんな「えへへ…。…というかぁ…」

正樹「?」

あんな「女子高生にヤクザと爆弾を見せた時点で、もう普通じゃないですよぉ?」

正樹「…え?あー…そういうもんなのか?」

あんな「自覚、なし?…もしかして、先輩の過去ってそれ以上の…?」

正樹「…」

あんな「えー!!何故そこで黙るうううぅぅぅ!?…どうしよう…私ちゃんと先輩についていけるかなぁ…」
正樹「あっはっは!大丈夫だって!俺が面倒みるからには、あんなを危ない目に…(店前の扉を見て)…ん?」

あんな「ん?どうしたんです?」

正樹「あんな…俺、出かける前に鍵かけたよな?」

あんな「え?ああ、たしか」

正樹「…鍵が、空いてる?」

あんな「え?本当ですか?誰だろ?お客さんですかね?」

正樹「…いや。…あんな、これ頼む。お前はここで待ってろ」

あんなに遊人を渡す正樹。店内へ静かに入っていく。
あんなにもたれかかる遊人

あんな「え?え?先輩…ちょ!ちょっと署長さん、お、重いぃぃ」

遊人「はけー、さっさとはいちまえ。はかないなら…僕が吐くぞ…おろ、おろろ…」

あんな「!!いやー!はかないでー!!」

○中川時計店 店内(夜)

店内に忍び込む正樹。店内は真っ暗である。
(シーン補足)
店内にはアルテミスが潜んでいる。火薬の臭いは三話の伏線であり、アルテミスに仕込まれた爆弾である。
それを正樹は拳銃の薬莢の臭いと勘違いした。
アルテミスは自動歩兵のプロトタイプであり、拳銃を構えた正樹を敵と認識して戦闘モードに切り替えて応戦する。
アルテミスの武器は店内で拾った鉄パイプであり、アルテミスの体内電池を使って電磁警棒とした。

正樹(M)「間違いない…暗がりの中、わずかに火薬の臭い…爆弾か?いや、人間ひとつ分の気配がする…人がいるということは…拳銃か?…用心に越したことはないな」

着物の袖から銃を取り出す。

正樹(M)「…誰だ?石本がらみか?それとも…。どちらにせよ…石本組の見回りをかい潜れるほどの…」

カタッと物音がする。
物音の方に銃を構える正樹。

正樹「!?誰だ?出て来い!いるのはわかってる!抵抗しないなら撃たない、保証する。さぁ銃をこっちに」

アルテミス「(機械的音声で)拳銃の所持を確認。危険人物と断定。迎撃します」

暗闇の中、バチッと青白い電気の火花が走って正樹を襲う。

正樹「なっ!くそっ!」

火花を見てよける正樹。鉄パイプが空を切り、店内の時計に当たり派手に壊れる。

正樹(M)「電磁警棒!?銃を使わない?何故だ?」

アルテミス「(機械的に)回避されました。迎撃を続行します」

いくつも青白い火花が散る。よける正樹。店内のモノが壊れる。

正樹(M)「くそっ!なんで暗闇でも俺の位置がわかる!?」

アルテミス(M)「意外としぶとい!でも、とらえた!そこっ!……ん!?いやっ!エネルギーが…立っていられな…い」

ドサッと倒れるアルテミス。鉄パイプが床に落ちる。
引き戸をあけ店内に駆け込むあんな。

あんな「先輩!今すごい物音が!?大丈夫ですか!」

正樹「馬鹿野郎っ!くるなっ!あんな!!」

あんなはパチッとスイッチを捻り、店内の灯りをつける。

正樹「(まぶしくて)うっ!」

あんな「わっ、まぶしっ…え?ええ!?ひどい!店内がめちゃくちゃ…(アルテミスに気づいて)…え?にん、ぎょう?」

正樹「…アルテミス…」

アルテミス「(M)(うなされて)助けて…胸が痛いの…助けて…お父さん」

■第三話


○ネオサンシャンシティ 時計台(夜)

静かなビル風が吹く時計台。武が座っている。
時計台と話す武。

武「んん、良い景色だ。それに風が心地いい。夏なのにここは涼しくていいね。…さぁて、彼女は無事たどり着いたかな?町の人に迷惑がかかるから、途中で壊れていなければいいけど、なんてね(苦笑)」

時計台「…」

武「…ええ?いやだなぁ、そんなに不機嫌にならなくてもいいじゃないか。キミの相方をいじったことは謝るよ、ごめんて。…でも彼女は僕らにとっても少々思い出のあるモノなんだ。伝言を頼むには彼女しか思いつかなかった、許しておくれ」

時計台「…」

武「…さぁて、感動の再会となるか、今生の別れとなるか。…期待しているよ、正樹」

○サンシャインシティ 時計台周辺(夜)

広場を歩く人々。建物の影から時計台を見張る黒服でサングラスの男。耳には無線通信用のイヤホンをつけている。

SP1「こちら、α‐1。アルテミス時計台の指定地点に着いた。オーバー」
SP2「(無線)こちら、β‐1、了解。ターゲットは目視できるか?オーバー」
SP1「いや。まだ時計台の上にいるようだな。今からターゲットに接触を試みる。オーバー」
SP2「(無線)一人でか?軽率だぞ?ボスには充分気をつけろと」
SP1「なぁに、おかしな力を持っているとはいえ生身の人間だ。俺達はプロの掃除屋だぜ?」

○サンシャインシティ 時計台屋上(夜)

ビル風が吹く時計台の屋上。
SP1がアポロン改に吊るし上げられ、

武「…良い風だ。夜景も素晴らしい、ここは落ち着くねぇ」

SP1「う…ぐ…ううう…今井…武ぃ…」

武「君達?見張るならもっとこっそり見張ってくれない?(アポロンを見て)アポロン、放せ」

アポロン改に投げ出されるSP1

SP1「ぐはっ!…あ、アポロンだと!自走式戦闘人形プロトタイプ!どこでこいつを手に入れた!」
武彼かい?まぁ古い友人なもんでね。ちょっと壊れて動けなくなったから助けてあげたのさ。…それより、ねぇ、サンシャインの連中にも伝えてくれないかい?僕の周りをうろちょろしないでくれと。…黒いのが視界に入って目障りなんだよ。そうゴキブリみたいで」

SP1「この…なめやがって!殺してやる!」

銃を構えるSP1.アポロン改が駆け寄りSP1を蹴る。銃が転がる。

SP1「ぐはっ!…(殴られて)…がはっ!…(殴られて)ごっ!」

武「アポロン!その辺でやめておけよ。人間は壊れたら直せないんだ、片付けが面倒だろ?」

殴るのをやめ、SP1を放り投げるアポロン改。

武「…さぁて…正樹、君のほうはどうだい?」

○(回想)穂富(中川)時計店

洋服姿の中川正樹が店内に顔を出す。

正樹「師匠ー!師匠ー!」

引き戸を開けて店内に入る正樹。

正樹「穂富師匠ー!」

穂富「…正樹、また来たのか…こんなしけた時計屋に顔を出すたぁ、お前も相当暇だな」

正樹「つれないこと言わないで下さいよ。それより、これ見て欲しいんですが」

設計図を広げ、穂富に見せる正樹。

正樹「アルテミスと時計台をリンクするモジュールなんですけどね…理論上ではこれでいいはずなんですが…」

穂富「…ほう…こいつは…。よぉ、こいつはお前さんが考えたのか?」

正樹「ああいえ、俺は手伝っただけで。ほとんどは武が」

穂富「武…あの小僧か」

正樹「武は力はどんどん成長してますよ?機械なら触るだけで会話もできるそうで。…でも、流石にこいつの動力炉の構造は複雑すぎて、制作者の力を借りようってことで」

穂富「ほっほっ、小僧らもまだまだということか。…とはいえ。時代の流れが早くなったのか、それとも神様の気まぐれか。…なぁ、正樹よ…時計の針はな、戻らねえんだ。進むことは出来てもな。だがな、壊すのは意外と簡単なもんさ」

正樹「…はい?」

穂富「老いぼれの独り言よ。そのうちわかる日がくる。せいぜいコツコツ頑張りな。…さて、ワシは石本の爺と囲碁でもしてくるかな」

正樹「ああ、ちょっと。師匠?師匠ー!」

○中川時計店 (夜)

破片で散らかった店内。あんなが片付けをしている。物思いにふける正樹。

あんな…ふぅ、片付いたと…先輩、先輩?…正樹先輩ってば!」

正樹「え!?あ?ああ、あんな…どうした?」

あんな「どうした?じゃないですよ。片付け終わりましたよ?こんなもんでどうですか?」

正樹「あ、ああ、すまんな。ちょっと惚けてた。ああ、いいんじゃないか?」

あんな「…?。それにしても…アルテミス、ただの人形じゃなかったんですね」

正樹「…」

あんな「…正樹先輩?」

正樹「…アルテミスはな、俺の師匠が作ったんだ」

あんな「え?」

正樹「俺の師匠、穂富東午(ほとみとうご)が作った。時報の歌を歌うだけの人形じゃない。サンシャインシティをコントロールする人工知能搭載型インターフェースなのさ。きっと調子が悪くなって師匠を訪ねてきたんだろう。…多分、俺じゃ治せない」

あんな「…」

正樹「…これ以上は話せない。あまりお前にサンシャインのことを話したくないんだ」

あんな「…無理しなくていいですよ。私はここにいられるだけで充分ですよ、へへ。…さぁて、このコはどうしたもんかなぁ。朝になったら店先で寝てる署長さんに連れてってもらうとして…どこか寝かせておける場所は…ううん…機械だから重いのかなぁ…あれっ?」

正樹「どうした?」

あんな「今、ピクッて動いたような…気のせいかな…うわっ、このコの手すべすべでやわらかーい…うう、うらやましいぃ」

アルテミス(M)「…苦しい」
あんな「…え?」

除々に大きくなる時計の針の音(イメージ)

アルテミス(M)「…胸が苦しい…」

あんな「…アルテミス?あなたの声?時計じゃないのに?どうして声が?」

正樹「…時を歌う…『時報人形』」

あんな「アルテミス?どうしたの?胸が苦しいって、どこかおかしいの?」

アルテミス(M)「…胸が…胸が苦しいの…助けて…お父さん!…ッ!」

カチッという音が店内に木霊する。

あんな「…え?なんの音?」
正樹「わずかに火薬の臭い…まさかっ!あんなっ!」

あんな「は、はいい!?」

正樹「アルテミスから手を離すな、いいなっ!」

アルテミスの服を破る正樹。

あんな「ちょ、ちょっ!先輩!人形だからって女の子なんですから、乱暴は」

正樹「(アルテミスの胸に手をあて)間違いない、この振動音…時限式!人間の体温を感知してスイッチが入る仕組みか…手の込んだマネを…武!」

○サンシャインシティ 時計台屋上(夜)

ビル風が吹く時計台。

武「ん?落ち着かないね時計台君?どうしたの?…ああそうか、君と彼女は繋がっているんだったね、時計台くん…そう、ゲームが始まったんだね?…大丈夫だよ。正樹なら、これくらいどうってことないはずさ」

○中川時計店 (夜)

アルテミスの爆弾を解体する正樹

正樹「あんな!アルテミスの手をはなすな!?はなしたら爆発するぞ!」

あんな「せ、先輩ぃ!」

正樹「大丈夫だ、俺が…俺が助けてやる。俺が…!?…こいつは」

正樹(M)「時限装置と動力炉がつながってる!?…くそっ、どうりで火薬の量が少ないと…本命は動力炉の誘爆!?…やってくれたな!」

○サンシャインシティ 時計台屋上(夜)

武「正解…カウントダウン、スタート!」

武、指をパチンとはじく

○中川時計店 (夜)

※「アルテミスの声」の方は機械的に。

アルテミス(機械的に)動力炉に異常発生。理論値を超える発熱を確認」

アルテミス(M)「ううう、ああ!あつい!あついー!」

あんな「先輩!アルテミスが!アルテミスが!」

アルテミス「(機械的に)警告。60秒以内に爆発の可能性あり。防壁による隔離、半径50m外の退避を推奨します」

アルテミス(M)「いや!いやぁあ!」

あんな「先輩!先輩!」

正樹(M)「くそっ、どうしたらっ!」

あんな「先輩!……えっ!?…なに、アルテミス!?……難しいよ!もっかい言って!アルテミス!?」

正樹「あんな?」

あんな「…お父さん、言ってた?7番ユニット?は取り外しても平気?まるごといいの!?…先輩!」

正樹「…わかった!」

解体を続ける正樹

アルテミス「警告。誘爆まで30秒」

正樹「これだな!あんな、次は!?」

アルテミス「15秒前」

あんな「右から3番目のバイパスを外すと?電源供給が?止まるの?ディップスイッチを2番、3番、5番オフ?あとは基盤ごと外していいのね?…先輩、早くっ!」

アルテミス(機械的に)「10秒前、9、8、7、6、5、4…」

正樹「う、うぉおおおお!」

アルテミス「3、2、1……」

パチッという音

正樹「…止まった…か?」

アルテミス(M)「あう…うう…」

アルテミス「(機械的に)異常が回避されました。システム再起動後、セーフモードにてリカバリーチェックを行います」

ブゥンとアルテミスの電源が落ちる。

正樹「…ふう…」

あんな「…よ、よかったぁ…へへ。私、役に立ちましたか?…先輩…(気を失い倒れる)」

正樹「あんな、あんな!」

○サンシャインシティ 時計台屋上(夜)

ビル風が吹く時計台。武が中川時計店の方を見下ろして、

武「…ゼロ。爆発しない?すごーい、正樹やるぅ!…さぁ、おいで。僕はここだよ?ここで待ってるよ?この。思い出の場所でね」

○中川時計店 店内(夜)

正樹が寝ているあんなに布団を被せ、

正樹「あんな…力を使いすぎたか。無理をさせちまったな…よしよし」

あんな「(髪を撫でられて、眼を覚まさずに)う、ううん…」

あんな(回想)「今まで先輩に何があったか知りません。言いたくないなら教えてくれなくてもいいです」

あんな(回想)「でも、これからのことは二人で考えましょう?私、一生懸命ついていきますから」

正樹「(髪を撫でながら)一生懸命ついていく…か。あの時から髪伸ばしてたのか、女らしくなるために?約束を守るために?…馬鹿だな…本当に…馬鹿だな」

○(回想)中川達の故郷の大学 敷地内

田畑と田舎道に囲まれた敷地内。ゼミが鳴く。
木々に挟まれた校舎へ続く道を、正樹がノートをうちわに仰ぎながら歩く。

構内放送「学生自治会からお呼び出しします。工学部、原田研究室の若山さん。工学部、原田研究室の若山さん。サークル棟までお越しください(繰り返し)」

正樹「はぁ…暑いねぇ…温暖化はついに北の片田舎までやってきましたかい…こんなんじゃあえて地方の大学を選んだ意味ないなぁ…まったく…ん?」

正樹が見上げると木の枝にあんなが立っている。

正樹「おおい?そこの座敷わらし?木登りすんな?落ちたら怪我すんぞ?」

あんな「(無視)」

正樹「…おいおい無視かい。おおい、降りてこいよ?危ないぞ?」

あんな「(無視)」

正樹「(ぼそっ)見えてんぞ…ネコパンツ」

飛び降りる、あんな。正樹の顔目掛けドロップキック。

正樹「ぶっ!」

スタッと両足で器用に着地する、あんな。

正樹「がはっ、眼がっ!?眼がぁ!?馬鹿野郎、俺を踏み台にしたな!?…あぶねっ、眼鏡割れたらどうすんだ!」

あんな「ロリコン、スケベ、オヤジ」

正樹「あほぅ!オレはロリコンでもスケベでもオヤジでもないわ!…それよりお前、こんなとこで何してんだよ?」

あんな「兄ちゃんが遊んでくれないから木登りしてた」

正樹「兄ちゃんって…ここの学生か?」

あんな「学生じゃないもん『とくたいせー』だもん。『とくたいせー』は遊んでくれないから嫌いだい」

正樹「特待生?…まぁいいや。だったら友達と遊べばいいじゃないか?いんだろ?学校の友達とか」

あんな「今井さんちのあんなちゃんは親がいなくて変だから遊んじゃだめなんだってさ、ちぇっ」

正樹「今井…?お前、今井武の妹か?」

あんな「おじさん、兄ちゃんのこと知ってるの?」

正樹「おじさ…。いや、工学部の今井武は有名人だからなぁ。…この時間だと研究室か。しょうがない、連れて行くか。ほら、一緒にこい?」

あんな「ダメ。知らないおじさんについてっちゃいけないって、小出先生が言ってた」

正樹「おじさ…あのなぁ…。じゃあどうしたらいいんだよ?」

あんな「(即答)結婚して」

正樹「…ぶっふぁっ!…はぁ!?結婚っておまっ、どういうことかわかってんのか?」

あんな「知ってるもん。結婚したら家族でしょ?家族なら一緒にいてもいいんでしょ?知らない人じゃないもん」

正樹「…(あんなを感根深そうに見て)…お前、変わってるなぁ…」

あんな「よく言われる」

正樹「…わかった。結婚してやろう」

あんな「ほんと?おじさん」

正樹「ただし、条件がある。まずは女らしくなれ。女らしくなったら結婚してやる」

あんな「どしたら女らしくなるの?、おじさん?」

正樹「…難しいこと言ってもわからなそうだな、こいつ…。そうだなぁ…カタチから入るか。まずは髪でも伸ばせ。そしたら少しは女らしくみえっから」

あんな「うん、わかったよ、おじさん」

正樹「…それから貴様、お兄さんと呼べやこら」

あんな「兄ちゃんは2人いらない」

正樹「…こいつ。…そうだなぁ…『正樹さん』も違う気がするし…まぁ…ひとまず…」

○中川時計店(夜)

あんな「(寝言)正樹…せん…ぱい…」

正樹「…すまんな…やっぱり俺には約束、守れそうにない」

立ち上がり、襖を開け部屋を出る正樹。

○中川時計店 店前(夜)

引き戸を開けて外に出る正樹
※穂富の声は正樹の幻聴。

穂富「よぉ、正樹。答えは見つかったか?」

拳銃に弾を込める正樹

穂富「そいつが答えか?」

正樹過去が追いかけてきた。今回は振り切れそうにない」

穂富「お前もついてないな、過去と未来が同時にやってくるとは」

正樹「もともと俺には無理だったのさ。武のように特別な力もない。師匠のような才能もない。コツコツやれば手に入るかと思ったが、やっぱりなかった…俺に未来を護る力は。少しだけ楽しい夢が拝めた気がする。それで満足だ…。『時計の針は戻せない、壊すのは簡単だ。さて俺はどうしたい?』…答えは出たよ、師匠。壊せばいい、気になるもの全部」

穂富「…まぁ、それもいいだろう。せいぜい悩め、苦しめ。そして、すすめ、若人よ」

店を後にする正樹。

○あんなの家 夢(夕) ※回想と夢の狭間

※あんなの家は正樹たちが通っていた大学がある田舎である。今井家ではない、正樹達がお世話になった教授の家。武達がサンシャインの研究に関わって忙しいので預けられている。
田舎の一軒家。廊下の電話が鳴る。あんなが駆けてきて電話を取る。

※正樹は受話器越し。

あんな「はい、原田です。…もしもし?」

正樹「(電話越し)…」

あんな「…あれ?もしもし?もしもし?…どなたですか?」

正樹「(電話越し)…俺だよ、俺」

あんな「…おれおれさぎー?(・▽・)」

正樹「(電話越し)阿呆!俺だよ!正樹だよ」

あんな「……(間)…Σ(・◇・)きゃー!うそ!?正樹先輩ですか!?ほんとに!?きゃー!」

正樹「(電話越し)ちょ、声でか!耳痛いって!」

あんな「だってだって!正樹先輩でしょー!?お久しぶりです!元気でしたか!?」

正樹「(電話越し)まぁな。お前は相変わらず元気そうだな」

あんな「はい!ろんもち元気ですよ!それよりどうしたんですか?突然電話してくるなんて」

正樹「(電話越し)ああ…ちょっとな…原田先生に相談が…いや。…なぁ、あんな、約束覚えてるか?」

あんな「…え?」

正樹「(電話越し)約束だよ、約束。その…なんだ。…そろそろいけるかな…と思ってな」

あんな「…はい?」

正樹「(電話越し)…池袋で、一緒に暮らさないか?」

あんな「…え?」

正樹「(電話越し)武もいないし、いつまでも原田先生の世話になるわけにもいかんだろう。随分待たせちまったが、俺も一人でなんとか出来るようになった。だから俺が面倒みてやるよ。…嫌か?」

あんな「…いや?…いや…い、いやったー!やったどー!先輩と暮らすんだー!やったどぉー!」

受話器を投げて飛びはねる、あんな。

正樹「(電話越し)もしもし!?声が遠いぞ?あんな!?受話器とれ、受話器!もしもーし!?」

あんな、受話器を拾い上げ、

あんな「絶対ですよ!絶対ですからね!すっとんで行きますから待っててくださいよっ!」

正樹「(電話越し)おいおい、行くってどこへ行くつもりだ?住所わかんねえだろ?」

あんな「住所なんて後回しです。さぁー!支度するどー、わくわく」

正樹「(電話越し)…おーい。…うわぁ…お前全然変わってないなぁ…なんだか俺不安になってきたよ(汗)」

あんな「そんなことないですよー?私ちょっとは変わりましたよ?」

正樹「(電話越し)ほんとかー?どのへんが?」

あんな「(自分の髪をいじって)へへー、内緒でーす。会ったときに驚いて下さいね」

正樹「(電話越し)ほう、そいつは楽しみだな」

ブツ、ツーツ。

あんな「…あれ?切れちゃった?もしもし、もしもーし?」

あんなの後ろに正樹。

正樹「…あんな」

あんな「…え?あれ?正樹、先輩?どうしてここに?…あれ?」

正樹「…すまんな…やっぱり俺には約束、守れそうにない」

あんなを背にして去る正樹

あんな「…え、ちょ、まっ」

○中川時計店 店内(夜)

布団を上げ起き上がるあんな。店内から時計達の音が聞こえる。

あんな「先輩っ!待って!……あれっ?…夢、か…嫌な夢みちゃったなぁ…」

あんな、辺りを見渡し。

あんな「…あれ?…先輩……どこ?」

時計達が静かに鳴る。

■第四話


○サンシャインシティ 地下通路 (夜)

時計台へ続く無人の地下通路を歩く正樹。通路内に正樹の足音が木霊する。

正樹「ここは何も変わってないな…俺達がいたときのままか…ん?」

正樹、通路の壁をコツコツと叩く。壁を力ずくで外すと中には爆弾が詰められていて、

正樹「こいつは、遠隔操作…といったところか。しかしまぁ…デカイなぁ…。池袋ごと爆破するつもりかい?まったく、相変わらずとことんやるやつだなぁ…武よぅ」

複数人の駆け足。正樹の前に黒服でサングラスの男達(SP)が立ちはだかる。正樹に銃を向け、

SP1「時計屋の正樹」

正樹「おや、こいつはサンシャインの。お揃いで夜のお散歩ですかい?」

SP1「動くな。大人しくすれば危害は加えない」

正樹「おいおい、銃を構えてそれはないだろ?相変わらずお前さん方は物騒だねぇ」

SP1「答えろ。今井武と接触するつもりだな?アルテミスをどこに隠した?お前たちの目的なんだ?」

正樹「…そうか、やはりこの先に武がいるんだな?なら、進もうか…過去へ」

SP1「(銃を構えなおし)中川っ!動くなっ…動けば(正樹発砲、SPの銃が弾かれて)…うおっ!?」

拳銃が転がる。歩みよる正樹。

正樹「黒いのがぞろぞろと…池袋のゴキブリどもが。そうさ、昔っから気に入らなかったんだよ…人の周りをカサカサ這いずりやがって。…なぁ、お前ら。どうして俺がこの道を選んだと思うか?暗くて陰気くさい地下通路を?…誰にも迷惑かけず、存分に暴れられるからに決まってんだろお(一人逆ギレ)!」

SPたちの悲鳴。

○中川時計店 店内(夜)

店内を駆け回り正樹を探すあんな、手当たりしだいに引き戸、窓、ドアを開けていく。

あんな「先輩!先輩!先輩っ!いない、どこにもいないよう!…どこに行ったの?嫌だよ!おいてかないでよう!」

店を出ようとするあんな、アルテミスが立ちふさがり、

アルテミス(M)「待って!あんなちゃん!」

あんな「!?アルテミス?どいてっ」

素通りしようとするあんなを掴んでとめるアルテミス

あんな「ちょ、手、離して!?アルテミス!」

※ここから先、あんなの能力によるアルテミスとの会話。他の人には聞こえない。

アルテミス「待って!落ち着いてっ!あんなちゃん!」

あんな「…アルテミス?」

アルテミス「良かった!お話できた…あんなちゃん待って。追いかけちゃだめ!危ないの」

あんな「…危ない?」

アルテミス「時計屋の人に頼まれたの。もしあんなちゃんが自分を探そうとしたら止めてくれって」

あんな「先輩が?先輩はどこへ行ったの?」

アルテミス「わからない。私は普通の人と話すことが出来ないから聞けなかった…けど、多分…」

あんな「時計台ね?」

店を飛び出そうとあんな、アルテミスが引き止め

アルテミス「だめっ!危ないの!…あそこには怖い人がいるのっ!そう、怖い人…優しく微笑んでるはずなのに機械のような冷たい人…。時計屋の人を呼んで来てって、君が行けばわかるからって…」

あんな「…その怖い人に会いに行くために、どうして私が引き止められなきゃいけないの?…危ないからついて来るなってこと?冗談じゃない!また一人ぼっちにさせられてたまるかー!」

アルテミス「待って!あんなちゃん!落ち着いてったら!」

騒ぎで目を覚まし、よろよろと起き上がる遊人。

遊人「うーん…騒がしいなぁ…一人でなに叫んでるんだい?…(アルテミスを見て)…どわっ!アルテミス!?どうしてここに!?」

引き戸が勢いよく開き、店内になだれ込むSP達。遊人が蹴飛ばされ転がる。

遊人「どわっ!」

○中川時計店(夜)

あんな達を囲うSP

あんな「えっ!?なんですか!あなたたちは!?」

アルテミス(M)「あなたたちは…サンシャインの!」

SP2「(無線を使い)こちらβ‐1。いました、アルテミスです。…いえ、目撃者が2人います。…了解(無線を切る)。アルテミスの確保が最優先だ」

アルテミスに歩み寄るSP2

遊人「…んーたた…ちょっと、君達。何やってるの?家宅侵入はいけな(SPに殴られて)いたっ!」

転がる遊人。

遊人「うわぁ、痛いよぉ!おまわりさーん!なぐられたよぉーいたいよー!」

あんな「署長さんっ!?何するんですか!乱暴しないで下さい!」

SP2「さぁ、アルテミス、来るんだ」

SP2がアルテミスの手をつかんで引き寄せる。

アルテミス(M)「…いや…怖いっ、やめてっ!」

SP2「人形のくせに…大人しくしろっ(あんなに手をつかまれ)…ん?」

あんな「やめてください!アルテミスが嫌がってます」

SP2「手を離せ、小娘!」

あんな「嫌です!…先輩の店で…好き勝手しないで!」

SP2「我々の任務はアルテミスの確保が最優先だ。障害は速やかに排除する。もう一度言う、手を離せ」

あんな「…嫌!」

SP2「…そうか、なら死ね」

あんなの頭に銃をあてるSP

アルテミス(M)「だめ、あんなちゃん!手を離して!殺されちゃう!」

あんな(M)「…先輩…先輩…助けて…先輩!」

勢い良く店内に飛び込むアルマーニ。SP達を次々殴り倒す。

アルマーニ「そい、やあぁー!そいやー!そいやそいや!そい、やあぁぁ!」

SP達の悲鳴とうめき声。アルマーニ(上着)を脱ぐアルマーニ。

アルマーニ「貴様らあぁ!誰の断りなく雑司が谷を荒らしまわっとるかあ!この、ゴキブリどもめぇ!」

SP2「なんだときさまぁ!!」

銃を構えるSP2

あんな「だめっ!アルマーニさん避けて!」

アルマーニ「ふんっ!」

SP2にアルマーニ(上着)を投げつけるアルマーニ。

SP2「うぉっ!服が!?前が見えっ!」

アルマーニ「そいやー!」

SP2「うぁっ、うぁああっ」

発砲するSP2。弾がそれアルマーニ(人)の頬を掠める。アルマーニ(上着)ごとSP2を殴り倒すアルマーニ(人)。SP2が倒れる。
アルマーニ(上着)を拾うアルマーニ(人)。アルマーニ(人)はアルマーニ(上着)の埃を払いながら、

アルマーニ「ふんっ!秋冬の新作に穴ボコが空いてもうたわい!」

あんな「アルマーニさん!」

アルマーニ「おう、お嬢さん、怪我はないですかい?」

あんな「は、はい。あ、いえ!助かりました!…でも、どうしてここに?」

アルマーニ「時計屋の先生から連絡があったんですわ。黒服の連中からお嬢さんを護ってくれって。ワシらも事情はよくわからんのですが…ここにいても危ないですわ。取りあえずウチの屋敷に来ておくんなせえ」

○石本の屋敷 大広間(夜)

あんな達を屋敷へ迎え入れる石本。構成員達が左右一列に並んでいる。
庭からししおどしが聞こえる。

石本「(驚かず)ほぉ、こいつは驚いた。アルテミス、あんた歩けたんだな」

あんな「…あんまり驚いてないですね?」

石本「ん?…まぁな、サンシャインシティものは胡散臭いもんが多いんでね、多少のことじゃ今更驚かないさ」

遊人胡散臭いのはお宅らもじゃないか。おかげでこっちは迷惑…ぶつぶつ」

石本「あん?なんか言ったかい?署長さんや?」

遊人「いやいやいや、別になにも、なーんも、はい」

石本「ふんっ。ともあれ無事で良かったなお嬢さん。先生から連絡があってな。感謝なら俺じゃなくて先生にしな」

あんな「先輩と話したんですか?」

石本「まぁな」

あんな「先輩は今どこに?」

石本「さぁな」

あんな「…時計台ですよね?サンシャインシティの」

石本「さぁな。なんも聞いてない。ただお嬢さんを護れと言われた。先生がどこ行ったか俺には関係ないさ」
あんな「関係ない?どうして?」

石本「そいつが雑司が谷のルールだからさ。お互いのことは詮索しない、困ってたら助けあう、借りが出来たら返す、そんなギブ&テイクの付合いさ。…さぁ、おしゃべりはここまでだ。アルマーニ、布団を用意してやれ。お嬢さんと、署長さんもついでだ…ん?」

あんな「ありがとうございました…失礼しますっ」

アルマーニ「ちょ、ちょっと待った!お嬢さん」

あんな「アルマーニさん!?離して下さい!先輩のところに行くんです。私は先輩の力になりたいの、だから通して!」

石本「…聞いてなかったのかい?俺は護れと言われたんだ。自由にさせろとは言われてない」

あんな「…2人で考えようって言ってくれたんです!私は先輩のついていくのっ!せっかく会えたのに、せっかくここまで来て、おいていかれるのは嫌なのっ!」

石本「お嬢さんが行ってどうかなるのかい?むしろ足手まといになるんじゃないのかい?」

あんな「…わかりません。でもっ」

石本「話にならんな。アルマーニ!お嬢さんたちを床の間にお連れしろ。強めに寝かしつけても構わねえさ、外に出すなよ」

アルマーニ「へ、へえ…」

あんな「待って!…じゃあ…連れってください」

石本「…は?」

あんな「護ってくれるんですよね?…じゃあ、私と一緒に来て」

石本「…小娘、俺が笑ってるうちに戯言は懐にしまっときねぇ」

あんな「戯言じゃありません!私は本気です!お願いです、一緒に来てください!」

石本「…行かせてくれないなら連れてって欲しいってか?はは、これだから最近の女子高生は…はは、あはは…ざけんなあぁ!」

あんな「!?」

石本「俺たちは正義の味方ごっこをしたいんじゃねえんだ!乳くせえ小娘の言うことをほいほい聞くと思ったか!たわけが!」

アルマーニ「若頭。お嬢さんも先生のことを思って」

石本「るせえ!黙ってろ!…お嬢さん、雑司が谷で暮らしたいなら言っとくぜ。この石本に軽々しくお願いごとをするなよ。過去は聞かねえ理由も聞かねえ、困ってるなら全力で助けてやる。ただこの石本を動かすにはそれ相応の対価をよこせ!…俺の背中にはな、組の、家族の命が乗っかってんだ。女子供の我がままで家族を危険にさらしたくねえんだよ!」

アルマーニ「若頭」

石本「きゃんきゃん吠えるだけの女子供に何ができるんだ!?ああ?口先だけじゃなく覚悟を見せてみろや!覚悟!」

あんな「(石本を睨み)…私だって家族を護りたいんだもん…(息を吸って)…護りたいんだもん!!」

あんなは畳に手の平をバンと置いて座り、

アルマーニ「お、お嬢!?」

遊人「ええっ!?ちょっと、それって」

あんな「私の覚悟です…石本さんの世界では、対価ってこれでもいいんですよね?」

石本「…ちょっと違うがな。指は落とし前で差し出すもんだが…でもいいのかい?指がない女の子じゃお嫁さんにもなれねえぜ?」

あんな「…さっき死にかけました。これくらい平気です」

石本「平気、ねえ?のワリには足が震えてないかい?お嬢ちゃん」

あんな「…ふ、震えてませんっ」

石本「俺の世界にはハッタリは通じないぞ?」

あんな「うるさい!ちゃっちゃとやっちゃってよ!」

石本「よしきたっ」

懐からドスを取り出し、刃を抜く石本。バンと畳に手をつく。
目をあわせる二人。

石本「…おい、そんなに睨むなよ…照れるじゃねえか、目ぇつぶれよ」

あんな「…はい」

遊人「ちょ、ちょっと、何この展開!?や、やめようよそんな痛いこと、ねえ!?」

アルテミス「やめて!あんなちゃん!そんなの駄目!やめて!」

ドスであんなの髪を切る石本。しゅぱっと。

あんな「んっ!?……え?」

石本「対価、確かに頂戴した。こいつは女の命だな?」

あんな「…石本…さん?」

石本「ふむ…女子高生ものとはいえ髪の毛じゃあな。裏の通販でも売れやしねえ。しゃあない、神棚にでも飾っておくか、髪だけに。ほら、アルマーニ、持ってけ」

アルマーニ「へい」

石本「はぁ…小娘に根負けするたぁ…俺もまだ青いなぁ」

アルマーニ「いや、それでこそ俺たちの若頭でさぁ!」

石本「…けっ。さてと。ようこそ雑司が谷へ、あんなちゃん。じゃあ連れ戻しに行くかね、お前さんの家族とやらを…(異変に気づき)ん?」

あんな「…くっ、えっ、えっく…切られちゃった…髪、切られちゃった…」

石本「あっ、ちょっと、おま」

あんな「うわーん、先輩との約束がぁー!切られちゃったよぉー!うええ(泣)」

石本「お、おま!?髪だぞ!?また伸びるだろ?おっ、おい、泣くな」

あんな「これじゃ結婚できないぃ!うええん(泣)」

アルマーニ「(棒読み)あーららこーらら泣ーかした泣かしーた。いーけないんだいけないんだ」

遊人「(棒読み)いーけないんだいけないんだ」

石本「おろ、おろおろ、おろ」

○サンシャインシティ 時計台(夜)

ビル風が吹く時計台屋上。時報の歌を歌う武。

武「らんらーん♪…ただいまより、午後11時をお知らせします。ピッピッピ、ポーン♪」

正樹の足音。

正樹「…武」

武「…やぁ。久しぶり、正樹」


■第五話


○(回想)サンシャインシティ 地下研究所 廊下

放送「音響デバイスアルゴリズム研究班の村木主任、至急地下B棟にお越し下さい…」

正樹を呼び止める武

武「(歩み寄り)正樹、正樹ー。」

正樹「ん?ああ、武」

武「久しぶりだね。そっちの方はどう」

正樹「ああ、おかげさまで順調だよ。武が作ったモジュールのおかげだ。これでサンシャインシティと時計台の同期はうまくいくと思う」

武「ごめんな。僕がもう少しそっちに出入り出来ればいいんだけど、こっちがなかなか手を離せなくて」

正樹「いや、心配するな。…それより、かなりやつれたな、大丈夫か?」

武「平気平気。極秘だから詳しいことは話せないけど、どうしても僕の力が必要なんだ。もうひとふんばりしないと」

正樹「…力のこと、本部に話したのか?」

武「まぁね。でも、隠す必要はないと思う。だって、僕の力が役に立つんだ。それで人が豊かになるんなら願ったりかなったりだよ…あ、それでね。ちょっと海外に行ってくる」

正樹「海外に?」

武「うん。プロジェクトの本体が海外にあるんだ。日本じゃ実験が難しいんだってさ」

正樹「そうか。1人で大丈夫か?」

武「平気平気。3年もあれば完成する。そしたら正樹に一番早く見せてあげるよ」

正樹「そいつは楽しみだな。途中で根をあげるなよ?」

武「そっちこそ、僕がいなくてもめげるなよ?お互いにがんばろう!『人の想いが技術を育てる』」

正樹「そして、『技術が人を豊かにする』…さぁ歩もう、」

武「『輝ける明日へ』!…あはは!」

笑う二人。

正樹(M)「どうしてあの時。俺は武を止められなかったのか…」

○サンシャインシティ 時計台(夜)

ビル風吹く時計台の屋上。対峙する二人。

武「やぁ、久しぶり、正樹」

正樹「武…生きていたのか」

武「いや、実際ひどいめにあった。思い出すだけで腹が立つ、ベッドに拘束したり、あちこちいじったりしやがって、モルモットかい僕は!ああもう。…ともあれ、また会えて嬉しいよ、正樹」

正樹「そのワリには、洒落の効かない招待状だったな」

武「アルテミスのこと?いや、自分でも挨拶にしてはやり過ぎかなぁと…反省。でも君ならあれ位簡単だったろ?」

正樹「(結局あんなに助けられたから苦々しく)…まぁな」

武「うん、間違いない。やっぱり君は、天才だ」

正樹「買い被るな。俺は天才じゃないぞ。お前のような力もないしな」

武「だからこそ、だよ。自覚ないの?君には力がある。事実、僕の課題をクリア出来たじゃないか?正直言って羨ましかった、僕にはない力だ。生まれもって与えられた力じゃない、時と環境に柔軟に対応し、答えを手繰りよせる力。そんな君の力が、欲しい。力をかして欲しいんだ」

正樹「…何を考えてる?」

武「素敵だと思わないかい、ここから見る景色は?近代的なビルが立ち並び、明かりが絶えない。その内部は日本で、いや世界でも指折りのハイテクノロジーに満ち溢れている」

正樹「そうだな。…そしてここには人がいる。豊かになったこの場所で、時には出会い、時には癒され、時には救われる」

武「でもここは邪な想いの上に成り立っている。たくさんの人が騙され、犠牲になった。僕を含めて」

正樹「進んだ時間は戻せない。だが見守ることは出来る。歪んだ歯車だけ取り除き、直せばいい」

武「ひとつ、簡単な方法がある。なかったことにすればいい。ここで起こったこと、これから起こること、すべて」

正樹「直すのさ。『輝ける明日のために』」

武「いや、壊すのさ。『輝ける明日のために』…ふふ。想いは同じ、でも道が分かれたね。さようなら正樹。…いけ、アポロン!」

襲い掛かるアポロン改

○石本の屋敷 大広間 作戦会議(夜)

アルマーニ「若頭」

石本「おう、あんなちゃんは?」

アルマーニ「泣きつかれて隣の部屋で寝てます。アルテミスがついてますが」

石本「そうか。…さてさて、正味なところこれから何をどうしたらよいか…ふうむ」

広間のふすまが開いて、山崎が顔をだす。

山崎「ごめんなすってー?若頭ー?いるかしらー?」

石本「おう?乙女塾の?こんな夜更けにどうしたい?」

山崎「聞いちゃったわよう。なんだかマサちゃん、えらいことに巻き込まれてるわねぇ?」

石本「お前さん、どこでその話を?」

山崎「どこで?っというかこの黒いのから、ほっ」

首根っこを捕まえていた黒服(エプロン的なもので縛られている)を中央に放り投げる山崎。

SP1「ぐはっ!がほっごほっ」

アルマーニ「こいつは!さっきの黒服!」

山崎「なんだか知らないけどー、サンシャインシティの専属部隊だとか?マサちゃんに関わりがあるところを手当たり次第あたってたみていでね、うちの店にも押しかけて来たわよ?…まったく、うちの娘たちが怖がるからやめてほしいのよねぇ」

SP1「き、きさま…こんなことして池袋に居られると思うのか…」

山崎、SP1の首根っこを掴まえて

山崎「ああ!?もっぺん言ってみろ!股間のタマ串刺しにして焼いちまうぞ?ああ!?」

SP1「ひ、ひいいぃ…やめてくれぇ…」

アルマーニ「…こええ」

遊人「いったい何者だよ…このオカマ…」

山崎「あら、はしたない(SPを落とす。SP「ぐはっ」)…こほん。それでね、こいつらが探してるのっ
てアルテミスちゃんみたいよ?」

石本「アルテミス?…時計屋の先生じゃないのか?」

山崎「うーん。ちょっとややこしくてねぇ。…どうやら、サンシャインの時計台が誰かに乗っ取られたみたいなの。それでアルテミスが奪われて、元関係者であるマサちゃんが共犯だと疑われたみたいよ?」

石本「…ほう?」

山崎「それで、ここからが本題。どうやら…そいつは池袋中に爆弾を仕掛けたらしいわね」

遊人「ばば、ばくだん!?」

山崎「…その爆弾の起爆装置に時計台のシステムを使ったみたいなのよ。きっとその誰かもサンシャインシティの関係者ね。他にシステムを動かせるのはアルテミスだけ。あの娘がいないと自分たちは何もできない。だから、あの娘を取り戻そうと必死になってるみたいね」

アルマーニ「…待ってくだせえ!それじゃあアルテミスがいないと時計台は!」

山崎「爆破されちゃうかもね…恐らくそこにいるであろうマサちゃんごと」

アルマーニ「そいつはいけねえ!早くアルテミスを連れてかねえと!」

石本「…そいつは難しいな。サンシャイン中に黒服の連中が張ってるんだろ?流石にそいつらの目を盗んで時計台まで辿りつけねえさ」

アルマーニ「そんなら!真っ向突破で行きやしょう、若頭!」

遊人「だ、だめだよ。そんなことしたら警察に捕まっちゃうよ」

アルマーニ「ああ?警察が何を言うか」

遊人「…だ、だってあの人形には盗難届けが出されてるんだよ?」

アルマーニ「そこはそれ、お前さんの権力で」

遊人「あ、あそこは本庁の息がかかっているので…僕の力では…」

アルマーニ「…んあ?(じと)」

遊人「なんだよー!しょうがないだろー!?縦社会なんだからさぁー!」

石本「…が、まぁ、お巡りのおかげでサンシャインのやつらも表立った動きが出来ないんだろうな。条件は同じか」

山崎「かと言って、大人しくアルテミスちゃんを黒服に渡したらマサちゃんの身が危ないわね」

石本「ん?」

山崎「だって、あいつらマサちゃんがアルテミスちゃんを隠したと思ってるんでしょ?あの娘が戻ってきたら時計台にいるマサちゃんは即刻用なしよ?」

石本「…ふーむ…まいったな。八方ふさがりか…何か良い手はないものか…考えろ、考えろ、石本、ふうむ…」

広間中に携帯の着信音が鳴り響く(間抜けな音希望)

アルマーニ「ああ?誰でい!?空気読めや!」

石本「…すまん、俺だ」

アルマーニ「あ、え、いや…すんません、どうぞ」

遊人「くくっ」

携帯をとる石本

石本「あ…もしもし?ああ、町内会の、どうもお世話になってます。…は?はぁ…ああ、いえ、ちょっと今夜は取り込んでましてね、すんません、ええ…じゃあまたいずれ」

携帯を切る石本。

アルマーニ「どなたですかい?」

石本「町内会の会長さんだ。夏祭りの片付けが終わったんでこれから一杯やるけどどうですかって。…申し訳ないが、今は祭りどこじゃ……ん?まてよ…そうか!祭りか!使えるな!おう、アルマーニ!今すぐ若いもんつれて自治会所行け!あれ借りてこいや!」

アルマーニ「へぇ!…へぇ?あれですかい?」

石本「あれだよあれ。今からやるんだよ、祭りをよぉ」

山崎「…!なるほど。木を隠すなら森ってやつ?」

石本「そうよ。あえて堂々と騒いじまえば日陰もんは手も出せねえさ。雑司が谷と時計台は乙女ロードで繋がってる!幸いこっちには乙女ロードに顔が利く署長さんもいるしな」

遊人「へっ?僕?」

山崎「おもしろくなってきたわぁ…うちの娘たちもアルテミスのこと好きだから喜ぶわよぉ。さぁさぁ連絡しなくっちゃ、わくわく」

遊人「ちょ、君達…またよからぬことを…」

石本「ふふ、ふふふ、ふっふっふ」
山崎「ふふ、ふふふ、ふっふっふ」

遊人「ああ…僕お腹いたい…」

隣の部屋で覗き見していたアルテミス。襖を閉じてあんなの傍に座り、

アルテミス「あんなちゃん…起きて、あんなちゃん…お話があるの」

○サンシャインシティ 時計台 屋上(夜)

ビル風吹く屋上。あちこち倒壊している。アポロン改がもんどり倒れ火花を散らす。

正樹「(息を切らし)はぁ…はぁ…」

武の拍手

武「凄い凄い。さすが正樹。僕が改造したアポロンを倒すなんて」

正樹「…はぁ…鍛えてるからな。時計屋は…肉体労働が多いんだ…はぁ…それより(武に銃を向け)次はお前だ、武」

武「おいおい待ってくれよ。喧嘩じゃ君に叶わないて」

正樹「なら…降参しろ」

武「うーん。どうしようかな…本当について来る気はないの?」

正樹「ない」

武「…はぁ…正樹がついてきてくれたらなぁ。うーん、仕方ない、君のことは諦めよう。今夜はサンシャインシティだけ壊して帰るとするよ」

正樹「…地下にあった爆弾は全部解体したぞ。遠隔操作しても爆発しない」

武「…なに?」

正樹「かって知ったるサンシャインシティだ。どこをどういじれば効率よく壊せるかわかってる。数が多すぎて解体できなかったが信管は全て外して来た…観念しろ、武」

武「…はは、ははは!あははは!凄いよ正樹、サイコー!…でもおしいね!」

正樹「なんだと?」

武僕のほうがうわて、ということさ…はぁああ!」

武の物を操る能力(イメージ)。時計台の激しい起動音が鳴リ響く。

正樹「なっ」

武「僕の能力はね、モノを操る力にレベルアップしていたのさ!時計台を自爆させる、地下の爆弾が誘爆に巻き込まれらどうなるかな?」

正樹、武に銃を向けて

正樹「武!」

武「アポロン!」

アポロン改、武に飛びつき抱えて夜空に消える。

武「(正樹に向かって)会えて嬉しかったよ、正樹!ちゃんと逃げてよ?生きてまた会おうね!」

正樹「武!武ぃいい!」

○サンシャインシティ 時計台 屋上(夜)

ビル風吹く屋上。時計の起動音が鳴り響き、時折火花を散らす。大きな時計の針の音が聞こえる。
(針の音はこの後シーンをまたいでじょじょに大きく早くなる。爆発までのカウントダウンのイメージ)

正樹、時計台のパネルを操作して、、

正樹「くそっ!止まれ!止まれよぉ!!お前、時計だろ!!時計なら時計屋の言うこときけや馬鹿野郎!お前は俺が作ったんだよ!?俺のこと覚えてんだろ!?だったら言うこと聞きやがれ!俺の声が聴こえないのかよ!?」

何度もビープ音が鳴る、正樹はパネルを力強く叩いて、

正樹「くそぉう!…何が時計屋だ…何が池袋を守るだ!!ヒーロー気取っても俺一人じゃ何もできやないじゃないか、馬鹿野郎…馬鹿野郎!」

パネルにつっぷして、泣き崩れる正樹。

正樹「…本当に何も出来ないのかよ…俺の力じゃ…誰一人護れねえのかよぉ…自分のケツを拭くことすら…。これじゃあ何のために池袋に留まっていたのかわからねえよぉ…。なぁ時計よぉ…俺はただ、みんなに幸せになってもらいたいだけなんだよ…そんな願いも聞いてくれねぇのか?ちくしょう……誰か、助けてくれよぉ…誰かぁ…」

正樹の携帯の着信が鳴る。電話を取る正樹。石本の声は電話越し

石本「(電話越し)よう、先生。まだ生きてるかい?」

正樹「…すまない石本、しくじった。逃げてくれ…みんなを…あんなを連れて池袋から…早く」

石本「(電話越し)なぁにをおっしゃいます、いつもの先生らしくない?まだ手駒があるでしょ?王手にはまだ早い」

正樹「…なに?」

石本「(電話越し)切り札、お持ちしましたよ?もうひと勝負と行きましょう」

下のほうから「そいや、そいや」という男達の掛け声と女の子たちの騒ぎ声がする。

○サンシャインシティ 乙女ロード大通り(夜)

「そいや、そいや」という大勢の男女の掛け声。御輿をかつぎ歩くゴスロリ服のヤクザたち。その周りを腐女子たちが取り囲む。御輿の上にはフードを被ったアルテミスが乗っている。

SP2「こちらαー2!いました、アルテミスです!顔は隠れて見えませんが、あの服装は間違いなく!…どこに?って、それが乙女ロードの大通りを!ゴシックロリータと呼ばれる服を来た野郎どもがかつぐ御輿に乗って!…ぐわぁあ!」

ゴスロリ服を来たアルマーニに蹴飛ばされるSP2

アルマーニ「あら、うっかり黒い何かを踏んでしまいましたわよ。本日ゴスロリ服着用以外の黒服様は参加お断りでーす、おほほ、そいや!そいや!」

山崎「さぁさぁ、みんなー!雑司が谷と乙女ロード合同のアルテミス祭りよー!」

ささみ「みんなー!あつまれー!時計台の歌姫、アルテミスの御輿だよー!さわごううたおうおどっちゃおー!そいやそいやー!」

女子たちの声「キャー/わー/アルテミスー!/かわいー」など

警官「ちょっと、君達!」

ささみ「え?あ?おまわりさん?」

警官「これは何の騒ぎだね?」

ささみ「何って、お祭りですよ。お祭り」

警官「それは見ればわかるが…あれは本当にアルテミスなのかい?ちょっとあらためさせてくれ」

ささみ「あ!ちょ、ちょっと!それは…」

警官「あの人形には盗難届けが出されているんだ。あれがアルテミスなら君達に話を聞かせてもらうよ?」

ささみ「ちょ、待って待って。ねえ、おまわりさんってばぁ!」

つくね「…きゃっ」

ドカッとつくねが警官にぶつかり、ドサッと倒れるつくね(無論つくねの策である)

警官「お?おお?」

ささみ「ああ!つくねちゃん!?大丈夫?」

つくね「…うん。ちょっとおまわりさんにぶつかって転んだだけ…いたた」

ささみ「ほんとに大丈夫?(警官に)ちょっとぉ!女の子に乱暴しないでくださいよぉ!」

つくね「待って、ささみちゃん。私が悪いの。私の不注意で転んだだけだから、おまわりさんを責めないで?ね?」

警官「え、あ…おう」

ささみ達に駆け寄るゴシックロリータと呼ばれる服を来た遊人。

遊人「(口で)ピピー!ピピー!ちょっと!何もめてるんだい君達ー!」

※おそらく着替えたときに、笛その他もろもろ私服に忘れてきたのかと。

警官「え?ああ!池袋署の署長!…その格好は…いったい」

遊人「うう、うるさーい!いろいろあったんだい!それより何があったの?女の子が倒れてるじゃあないか!」

つくね「ごめんなさい、私が悪いんです。私の不注意でこのおまわりさんにぶつかって、それで…」

遊人「なんだとぉ!?君、一般市民になんてことを!?」

警官「ええ!?ああ、いえ!本官は御輿の上のアルテミスを改めようとしただけで、その」

遊人「アルテミス?…何を言っているんだい?あれは、彼女たちが作った人形だよ」

警官「…は?」

遊人「ダミーだよ。あれはこの娘たちが作ったダミーなの。一般人がアルテミスを持ち出せるはずがないじゃないか。それとも署長の僕が嘘をついているというの?さぁ通してくれ、ここは僕にまかせて」

警官「え?あ!はい!失礼しました!」

遊人「さぁさぁ君達も祭りを楽しんでおくれ」

ささみ「はぁい、そいやそいやそいやー」

つくね「そいやそいやそいやー」

遊人(M)「…ああ…ばれたら出世ロードが遠のくなぁ…くそー!……そいや!そいやー!(ヤケ)」

○サンシャインシティ 時計台 屋上

祭りの光景を見下ろす正樹。

石本「(電話越し)いろいろ聞いちゃいましてなぁ…乗りかかった船、いや御輿ですわ。搬入エレベーターからそっちに上げます。なぁに、一般人のご迷惑にならないよう程よいところで撤収しますんで」

正樹「…恩に着る」

石本「(電話越し)みずくせえなぁ。先生と俺たちの仲じゃないですか。それに、対価ならお嬢さんに頂ましたよ?」

正樹「…あんなが?」

石本「(電話越し)先生んとこもいろいろ事情があるようですが、黙ってちゃ愛想つかされますぜ?一度膝を突き合わせて話し合ったらどうです?ま、仕事が終わったらみんなで一杯やりましょうか、歓迎会ということでね」

○サンシャインシティ 時計台 屋上

大きな時計の針の音がする。正樹に歩み寄るアルテミス。

正樹「アルテミス…お前なら、止められるか?」

あんな「(アルテミスの変装したあんな)(コク)」

正樹「…頼む、時計を止めてくれ」

時計台のパネルに手を当てるアルテミス。操作音(電子音)がして時計台が動きだす。

※音声は出来れば男性。

時計台識別完了。人工知能搭載型インターフェース『アルテミス』と確認」

※武の声は時計台に残したメッセージ(スピーカー的なものから)。

武「ハハ!ハハハ」

正樹「…!?武!?」

武「あまいね、正樹。物を操れるようになったって言っただろ?時計台もアルテミスもとっくに僕のものさ!」

時計台「…警告。アルテミスを強制的に制御下へ移します」

正樹「…なっ!?」

パネルから火花が散り、アルテミスを襲う。

あんな「(アルテミスの変装したあんな)!?」

正樹「あ、アルテミスー!」

時計台異常発生。警告、120秒以内に爆発の可能性あり。ただちに周辺都市を含むサンシャインシティの全システムの電源を強制終了させて下さい」

※以下時計台が警告音を発する。

武「さぁ、これで手駒は尽きたかな?君の力はこんなもの?まだまだいける?…もっと魅せておくれよ?君の力を?奇跡を?さぁ!…あは、はは、ははは!」

あんな「(アルテミスの変装したあんな)(ぼそっ)…うるさい……(パネルを叩いて)…うるさいっ!!お兄ちゃんはだまっててよ!」

正樹「…!?…アルテミス?」

あんな「(アルテミスの変装したあんな)どうしてみんな私達の邪魔するの!?先輩はただ、みんなに幸せになってもらいたいだけなんでしょ!?」

正樹「…まさか、お前は…」

あんな「(時計台に)ええい!キミもうるさい!時計なら時計屋の言うこと聞けー!…そして、先輩と二人きりで…膝をつきあわせて…話を、させ、ろぉおお!!※」

(※「そして」から構え、「話を」で力をため、「させろ」でパネルに向かって力を放つ。かめはめ波)
バサッと覆っていたフードがおち、顔を出すあんな。

正樹「あんなの…時計を操る、力…」

眩い光。時計台の電源が落ちる。

○(回想)石本の屋敷

あんな「…ダメ?」

アルテミス「…うん、きっと私じゃダメ、操られちゃう。だから、あんなちゃんが行って」

あんな「…え?私」

アルテミス「あんなちゃんなら大丈夫。大好きな人を、助けてあげて?」

○サンシャインシティ 時計台 屋上

ビル風吹く屋上。明かりは消えシンと静まりかえっている。

あんな「静かですねぇ…」

正樹「…そうだな」

あんな「街の明かりがみんな消えちゃった。お月さまの明かりだけ…あれ?あっちの街だけ明かりがついてる?…あれって、雑司が谷?」

正樹「池袋でも雑司が谷は別格さ。雑司が谷はサンシャインシティの管理を受けていない。街の人が反対したんだ、いくら便利なもんでもホイホイ受け入れるもんじゃないって…古臭いんだよ、あの街は」

あんな「そうなんですか。でも私、あの街好きですよ。人のぬくもりっていうのかな?そういうのありますよね…。ああ、疲れたぁ…お風呂入りたぁい。さぁ、帰りましょう。あの明かりに向かって歩けばいいんですよね?大丈夫です、今度は道に迷いませんよ?先輩もいるし、暗闇で襲われそうになっても守ってくれますよね?」

正樹「…あんな」

あんな「はい?」

正樹「田舎へ戻れ」

あんな「…(きょとん)はい?」

正樹「俺は…この先、お前を守りきる自信がない」

あんな「…はぁ(相槌的な)」

正樹「時計屋ついで修行して、力をつけて、お前を守れるくらい成長したと思ってた。でも…やっぱり無理だった。これから先もこんなことが起こる。俺の手にあまったらお前を守りきれない」

あんな「だから、田舎へ戻れ…とぉ?」

正樹「あんな、わかってくれ、俺は、お前のためを思って」

あんな「そぉうぃやぁああ!!」

正樹の顔面に向かってキックをかます、あんな。吹き飛ぶアホ眼鏡。

正樹「がはっ、眼がっ!?眼がぁ!?顔面にドロップキックだとぉ!?眼鏡割れたらどうすんだ!馬鹿野郎!」

あんな「馬鹿野郎は先輩です!もうっ!どうして先輩は自分勝手なの!?信じらんないっ!あたしがどんだけ磨り減ってここまで来たかわかってるの!?」

正樹「…磨り減る」

あんな「爆弾膝枕して拳銃突きつけられて指切られそうになって髪切られてお兄ちゃんが爆弾好きの愉快犯だって!それは家庭の事情なの!家庭の事情は人それぞれでしょ!家庭の事情は家族で解決するもんじゃないの!?…だから、寂しいこと言わないで…あたしは…ただ、中川正樹と家族になりたいんです…ずっと前から…だから…寂しいこと…言わな…ひっく…こわかった、こわかったよぉ…せんぱぁい…」

○正樹の心の中

穂富「そうだな若人。ヒントをくれてやろう。…時計と同じさ。人間も歯車ひとつじゃ動かねえんだ。2つ3つ、歯車同士が噛み合って動いてる。お前さんにもあるはずさ、そいつがモノであるか想いであるか…または人であるか。なぁに、うっかり磨り減らしちまってもいいじゃねえか。そうでもしねえと、時計の針はすすまねえんだよ」

○サンシャインシティ 時計台 屋上

泣き崩れる、あんな。正樹は抱きとめながら。

正樹(M)「磨り減らしたって構わない…か。師匠、こんな俺にもひとつあったよ…歯車」

正樹「…あんな」

あんな「ひっく…なに?」

正樹「すまな…いや…ありがとうな、お前のおかげで助かった」

あんな「ううん…いいの。家族だもん」

正樹「帰ろうな、家に」

あんな「うん、帰る、帰るの」

暗闇の中、ブォンと時計台の明かりがつく。

あんな「…うわっ、まぶし」

正樹「予備電源?時計台の照明が回復したのか…」

下の群集がざわめき、手拍子と「アルテミス」というコールが始まる。

あんな「え?なに?下が騒がしいですね…どうしたのかな?」

正樹「…ひょっとして…勘違いしてるんじゃないか?下の連中はお前のことアルテミスだと思ってるんだろ?時計台の明かりがついて、何かショーが始まると思ってるんだ」

あんな「…え?ええ!?そんな…どうしよう!?」

時計台から起動音。舞台がせり上がる。
音楽が流れ出す

あんな「ちょ、ちょっと?時計台さん?どうしたの?」

正樹「そうだな…そうしないとこの騒ぎは収まらんな」

あんな「え?なに?先輩、どういうことですか?」

正樹「つまり…アルテミスの代わりに、お前が歌えってことさ」

あんな「え?……えええ!?」

群集の拍手喝采。

〇:エピローグ 乙女塾の店前

乙女塾に向かって歩く二人。

正樹「…おおげさだよなぁ、あいつら。…今更歓迎会なんてやらんでも…」

あんな「いいじゃないですか!私は嬉しいですよ?はい!」

正樹「おいおい騙されるなー?あれこれ理由つけてどんちゃんやりたいだけなんだよ…まったく…ん?」

短くなった髪をいじるあんな。

正樹「なんだ?落ち着かないな?」

あんな「…え?ああ、いえ。ちょっと襟のあたりがスースーして…」

正樹「ああ、石本にバッサリ切られたもんなぁ…。まぁ、そのうち伸びるさ」

あんな「え…ええ…でも…。…先輩との約束守れなかったなぁ…って」

正樹「は?…ふふ、はは…あはは!」

あんな「ちょ、ちょっと、笑うとこですか!?私は真剣にですねぇ!」

正樹「あーんな?」

あんな「えっ?はい?」

正樹「俺はショートカットのお前も、じゅうぶん可愛いと…思うぞ?…さ、行こう」

店のドアをあける正樹。

ささみ・つくね「おかえりなさいませ!ご主人様、お嬢様」

一同「ようこそ、池袋へ!」


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