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オーディオ用語「ゲイン」と「トリム」の違いについて
オーディオ用語の「ゲイン」や「トリム」。どちらも「音の大きさ」に関係していますが、それぞれ異なった役割を持っています。
この記事では、ゲインとトリムの違いについて解説していきます。
ゲイン(Gain)とは?
ゲインとは、簡単に言ってしまえば「音声信号を大きくする」ためのものです。
たとえば、マイクで声をひろうとき、声が小さくて聞こえにくいことがあります。そういうときに、ゲインを上げるとマイクからの音(音声信号)が大きくなります。
つまり、ゲインは音を増幅する役割を担います。
ポイント
・小さい音を大きく「増幅」するためにつかう。
・英語の「Gain」はもともと「得る」や「増やす」という意味。
トリム(Trim)とは?
一方、トリムは「音声信号を調整する」ために使うものです。
すでに大きな音をさらに大きくするのではなく、音のレベルを適切な範囲に保つ、揃えるために使用されます。
音が大きすぎて歪んでしまう(音が割れてしまう)ことを防ぐために、トリムで音量を調整します。
ポイント
・音のレベルを調整するために使う。
・例: 音が大きすぎて歪んでいるとき、トリムで音量を下げる。
ゲインとトリムの違い
ゲインとトリムはどちらも音の大きさを変えるという点で同じですが、上記の通り役割が違います。
ゲインは、音を増幅して大きくする。
トリムは、すでにある音のレベルを微調整する。
たとえばライブのときにマイクの音が小さかったら、まずゲインを上げて音を大きくします。
次に、その音が大きすぎたり、他の音とのバランスが整っていないときは、トリムで音の大きさを整えるという感じです。
なぜ、ゲインで音の大きさを調整しないのか?
そもそも、ゲインで音のレベルを調整すれば良くないか?と思いがちですが、ゲインは細かい調整には不向きな設計になっています。
本来、マイクや楽器などから入力される信号は非常に小さく、ゲインはまずその信号を聞こえる範囲まで大きく増幅させます。
この増幅の役割を果たすために、ゲインは入力信号を一定の割合で大きくするシンプルな機能になっています。
そのため、細かい調整ではなく、大まかな「音量を持ち上げる」働きに焦点が当てられているというわけです。
ゲインとトリムの使いどき
ここでは、具体的にどのような場面でゲインとトリムを使い分けるべきか見ていきましょう。
ゲインは録音時に使う
ゲインは、主に録音やライブ等で最初に音を入力する際に使います。
先に書いた通り、ゲインの役割は、マイクや楽器から入ってくる小さな信号を、聞こえるレベルまで増幅することにあります。
録音時の声や楽器の音が小さい場合、ゲインを使って音を増幅します。ただし、ゲインを上げすぎると音が歪んでしまうこともあるので、適切な量を増幅させる必要があります。
トリムは後編集やミックス時に使う
トリムは、すでに増幅された音を微調整するためのツールなので、細かい音量の調整に向いています。
特にミックスダウンをするときんなどに、トリムを使って各トラックの音を微調整します。
ミックスダウンについて
ミックスダウンとは、複数のトラックを1つにまとめる作業のことを言います。音楽では、ボーカルやギター、ベース、ドラムなど別々のトラックに収録された音を、バランスよく組み合わせて、聴きやすい曲にまとめます。
そのまとめる過程において、音量の微調整をおこなうのが「トリム」となります。
また、単に1トラックにまとめる作業自体は「バウンス」といったり、「ダウンミックス」といったりします。
ミックスダウンは「調整してまとめる作業工程」を指す言葉となります。
また、ゲインの小さい音をトリムで大きくすると、ノイズ(バックグラウンドノイズ)や音の劣化や歪みによる音質の低下の原因となります。
なので、音を収録する際に、適切なゲイン調整をしておかなければ、後から音を増幅させることができなくなります。
最近は、32bitフロート形式のレコーダーも手に入りやすく、従来の録音形式(例えば16ビットや24ビット)と比較して、後からトリムで音を大きくする幅が広がりました。
32ビットフロート形式を使用することで、ゲインが小さい音をトリムで持ち上げる際のノイズの問題はある程度解消されます。
しかし、完全にノイズを排除できるわけではなく、録音環境や使用する機材も影響するため、適切な設定と注意が必要です。
特に録音時のゲイン設定は、音質を良好に保つために重要です。
まとめ
ゲインは録音時やライブ演奏など、音の信号を入力する「最初の段階」で使います。まずは、ゲインで聞き取りやすいレベルに持っていきます。
トリムは、録音後やライブ演奏途中で、音量が大きすぎる場合や、適切なバランスが取れていない場合の微調整に使います。
いかがでしょうか。ゲインとトリムの違いについてなんとなくでも使えますが、違いをわかっていた方がクオリティアップに使えますので、ぜひ押さえておきましょう