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【超図解】100倍解るカメラのハナシ| 写真のザラザラ感を解析する

暗い場所で撮影した写真のザラザラ感を「画像のヒストグラム」を起点として解説!「標準偏差を用いたノイズの評価の妥当性」まで踏み込みます。


以下の記事で、ヒストグラムによって明るいピクセルや暗いピクセルの量を客観的に示せる事を解説しました。

さらに、こちらの記事では「標準偏差」という値を用いて高感度ノイズの評価を行っています。


この二つの記事の架け橋となるのが今回のお話。ややマニアックになりますが、身のある記事に仕上がりました。お付き合いください!



高感度ノイズってなんだろう?

簡単に言えば、ISO感度を上げて撮った写真がザラザラして見える現象。

例えば、薄暗い飲み屋の写真や室内のペット撮影、夜景撮影、このようなシチュエーションで撮った写真って、何だかボヤッとしませんか?一方、晴れの日のお散歩や明るいお店、ドッグランで撮った愛犬等、そんな写真はなんだか綺麗に撮れる。こんな経験みなさんお持ちではないでしょうか。

ILCE-7RM3 ISO102400で撮影
ILCE-7RM3 ISO100で撮影

最近のカメラ(スマホ含む)は、暗い環境で撮影ると、ほぼ自動で「ISO感度」を上げて写真を明るくしてくれます。

デジタルカメラにおける「ISO感度を上げる」という行為。これ、すごーく乱暴に言うと、「暗い写真を無理やり後処理で明るくする」みたいな事をしています(詳しい方、大目に見てください!)

その時、明るくする必要のないブツブツとしたゴミデータも一緒に明るくしちゃうんです。
そのせいで、本来写真に不要なツブツブが眼に見えるようになってしまい、それが写真の「ザラザラ感」を産んでいるわけです。

ザラザラした写真は精細感を欠き、「なんとなくイマイチ」になってしまいます。

高感度ノイズを見てみよう

一応この記事、「図解」ですからね。とにかく見てみましょう。

ILCE-7RM3 ISO102400 モノクロモードで撮影

全体としての印象は、なんかザラザラした感じだったり、細かい模様などの描写が潰れていたり、のっぺりした印象だったり、といったところでしょうか。

ちょっと試みに、部分的に拡大してみてみましょう。

ザラザラしてますね。
ちなみに比較用に低感度で撮影したものも用意しました。同じように見てみましょう。

ILCE-7RM3 ISO100 モノクロモードで撮影

ツルツルですね!細かい模様もしっかり残っていますし、暗いところから明るいところまで何が映っているか分かります。

このザラザラ感は、基本的には感度が高くなるほど強くなり、感度が低くなるほど弱くなります。

小クイズ

ここでクイズです。
以下の4枚の写真を感度の低い方から順番に並べてみてください

答えは以下の通り。正解できましたか?
②(ISO 100) → ①(ISO 1600) → ④(ISO 12800) → ③ (ISO 102400)

定量化することの意義

さて。
目で見た感じで比較するのも大切ですが、この「見た感じ」を数値で表せたら便利ではありませんか。

目で見ただけでは、人によって感じ方が違うかもしれません。環境が違えば自分の中でも見え方が変わることさえあります。
数値に表す(定量化する)ことで、何時でも何処でも誰が見ても、揺らぐことのない結果を得ることができます。

高感度ノイズを定量化してみよう

私達は写真の中で明るいピクセルや暗いピクセルの個数を数値で表現する方法をすでに知っています。

そう、ヒストグラムですね。

ヒストグラムは、写真の中におけるある明るさを持ったピクセルがいくつあるのかの個数を棒グラフ状に表したものでした。

これを使って、ノイズ感を一つの数値で表せられないか考えてみます。

ここで新たに写真を一枚。
チャートを撮影しました。
18%グレーのパッチのみに着目し、そのヒストグラムを描いてみます。

ILCE-7RM3 ISO32000で撮影した18%グレーのヒストグラム

一つの釣鐘状の形が現れましたね。

何パターンかザラザラ感を変えて同じ事をしてみます。

ISO 102400
ISO 51200
ISO 25600
ISO 12800
ISO 1600
ISO 100


特徴が見えてきましたね!
そう、ヒストグラムの釣鐘形状の幅です。
ザラザラ感の強い写真ほど広く、ザラザラ感の弱い写真ほど狭くなるんです。

そしたら話は簡単で、その幅を数値にしてあげれば数値化完了です。

このような釣鐘状のヒストグラムには名前があって、「正規分布」や「ガウス分布」と呼びます。
(ここもやや乱暴に語っています!お詳しい方、勘弁してください)

正規分布において、その幅を代表する値は一般的に「標準偏差」で考えられます。
釣鐘形状の中心軸から曲がり方が変わるポイント(変曲点)までの距離が標準偏差そのものになっているためです。
(ガウス分布でググって出てきた式を2階微分して0になる点を解いてみてください。)


実測

早速上記の方法で測定を行ってみましょう。
ISO102400, 12800, 1600, 100の18%グレーパッチについて、拡大画像とそのヒストグラム、標準偏差の値を以下に示します。

各感度の撮影データ 18%グレーパッチ部分を5倍に拡大した
それぞれのヒストグラムと算出された標準偏差の値

ザラザラ感が強いほど、ヒストグラムの幅が広がり、標準偏差の値が大きくなることが結果として得られました。見た目との相関も取れていることをご確認いただければと思います。

ザラザラ感は標準偏差の大きさによって説明されることを示すことが出来た
見た目との相関により、評価指標としての妥当性も確認できた。

ISO感度と標準偏差の関係・法則性

一般的にはISO感度を上げればザラザラ感が増します。
その前提で、ザラザラ感の強さ(ISO感度)と標準偏差の大きさの関係をグラフにしてみてみましょう。

ISO1600あたりを境目にやや傾きがに変化があるものの、両対数グラフ上でほぼ直線的なふるまいを見せることもわかりました。きれいな法則があるんですね。

まとめ

今回の記事では、写真のノイズ感を定量化(数値で表す)方法を、実写と実測を交えて解説いたしました。
ザラザラ感の定量化ができると、異なるカメラのノイズ量の違いを客観的に評価出来たり、各種現像アプリなどのノイズ除去機能の強さなどを測定・比較することが出来るようになったりします。
興味があればぜひ、お持ちのカメラや写真データで遊んでみてください。

最後に、ここまで読んでいただいたことに感謝申し上げます。ありがとうございました!
気に入っていただけたらスキとフォロー、チップまでいただけたら筆者が大変喜びます!!

今後ともよろしくお願いいたします。


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