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サークル・プロセスについて

ネット検索する限り、日本語ではまだ知られていないようです。サークル・プロセスとは、より安全で深い対話をするためのコミュニケーションの道具です。参加者が輪(サークル)になって、平等に発言の機会を確保しながら、しっかり話し、またしっかり聞くことを実践する仕方の一つです。

サークル・プロセスでは、トーキング・ピース(talking piece)とよばれる《対話のバトン》を手渡しながら、話しを進めます。私は近所の公園で拾った木の枝を「お話し棒」とよんで愛用しています。サークル・プロセスでは「お話し棒」をもっている人だけが話すことができます。「お話し棒」をもたない人は、もっている人の話しを敬意をもって聞くことが求められています。トーキング・ピースを用いることで、話し手は話しのコシを折られたり、反論されたりすることを心配せずに、言いたいことを最後まで言えるようになり、話す機会は参加者全員に平等に与えられることになります。話したくない、安心して話せない、話す準備ができていない、と感じる人が、強いて話しをさせられることもありません。受け取ったバトンを黙って次の人に渡してもいいのです。

これだけだと、まるで独白の寄せ集め、ただの言いっぱなしで終わってしまいそうですが、サークルを運営する「キーパー」が、適切な問いを立てて話し合いを導くことで、互いをよく知りあい学びあう、対立点や不一致を明らかにする、認識を共有する、意思決定をする、喜びや悲しみを共有する、責任を明らかにする、人間関係を修復する、といったことができるようになります。

もともとサークル・プロセスは、先住民族の古来の知恵と伝統からヒントを得たものです。警察も弁護士も裁判所もない時代、人々は集団のトラブルやもめ事を、自分たちの力で解決してきました。焚き火や囲炉裏のまわりに輪になって座り、とことん話しあうことを通して、落とし前や踏ん切りをつけてきたわけです。そうした古(いにしえ)の知恵に学び、現代人のニーズを満たすように工夫を重ねて、サークル・プロセスはつくられてきました。

サークル・プロセスは、社会技能(ソーシャル・スキル)への関心の高まりとともに、日本にも移入されてきているようです。人材開発やチームづくりのためのワークショップ、ファシリテーションやメディエーションのスキルとその訓練、職場や学校におけるアクティブ・ラーニングの導入といった動きの中に取り入れられていますので、経験があるという人もおられるでしょう。一方、サークル・プロセスの効用についての研究や、体系的な理論書、実際に対話サークルを主催し継続的に実践しているケースはというと、まだまだ広く知られるには至っていないと思います。

私はここ10年ほど、東アジアの人々を対象にした平和教育プログラムで、サークル・プロセスを紹介・指導してきました。今年からは縁あって、日本語によるオンラインでのサークル・プロセスを実践する機会を得ています。私が本格的にサークル・プロセスを学んだときのネタ本を、いま翻訳しています。近いうちに、お目にかけられることを願っています。

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