戦後、「鉄は国家なり」と言われ、日本の産業復興の中心的存在だった八幡製鉄所。その黒煙を毎日見ながら育ちました。物心がつく頃、私が生まれ育った八幡市は産業と商業の中心として繁栄していました。私の知らない間に、1936年に政令都市「北九州市」が五市の対等合併で誕生し、北九州市の発展が市民にとって当然のこととして期待され、市民は浮かれていました。そんな中、目に見える変化が始まりました。最初に八幡駅が移転し、八幡製鉄所の社員の移動が始まりました。その後、中小企業の減少が顕著になり、商店街からは友達がいなくなり、店舗が次々と消えていきました。八幡から黒崎へと商業の中心が移る様子を見て、当時はなぜこうした変化が起きているのか理解できませんでした。
国策による産業の転換やエネルギー政策の変更によって石炭産業が崩壊し、現実社会でのパラダイムシフトが進んでいることを実感したのは、最近のことでした。北九州市の歴史を学び、ようやく世間の変化が如実に理解できるようになりました。さらに、繁栄していた旧長崎街道・黒崎商店街の没落を目の当たりにし、商業の興隆から衰退に至るまで、私は傍観者としてその歴史的過程を見守ってきました。
私が政治の世界に関心を向けるきっかけとなった出来事がありました。それは、2018年にフジテレビで放映された「北九州市議公費無駄遣い海外視察旅行」の特集でした。放映前に、当事者である市会議員の事務所を訪れ、話を聞いたことが印象に残っています。特に心に残ったのは、その議員が言い訳をする一方で、家族に迷惑をかけたことを反省しているという姿でした。後日、友人から電話があり、「テレビで北九州市議の公費800万円の無駄遣いの実態が放映されているから見た方がいい」と伝えられ、私はその内容を見ました。市民の怒りはしばらく収まりませんでしたが、結局、市民の関心は薄れ、政治家に対する不信感から無関心へと変わっていきました。しかし、市民オンブズマン北九州と7人の弁護士団とともに、市議の不正行為を調査し、最初に住民監査請求を提出しました。ところが、市監査委員は「明らかに不合理と言えない」「裁量権の範囲の逸脱や乱用は認められない」として請求を棄却しました。私たちの怒りはますます膨らみ、すぐに市民オンブズマン北九州の弁護士が「市議会海外視察費用返還請求」を福岡地方裁判所に提訴しました。現在、7回目の口頭弁論が行われていますが、裁判所での時間を無駄に感じ、怒りが収まらないのが現状です。それでも、長期にわたる裁判を見守ることになりそうです。
その後、市議会を傍聴するたびに、市議会自体が制度疲労を起こしていることを感じました。その議会の議員たちでさえも、市議会の存在意義を疑問視しているように見受けられました。議会での議事審査すらも意味がないと感じるようになりました。予算審議をきちんと行える議員は少数派で、多くの議員は予算案さえ理解できていないのが実情です。
「原稿だけを読む市議には退場していただきたい」とのご意見について、市民の皆様がどのようにお考えかという点は、非常に重要な問題だと思います。この問いかけは、議会の本来の役割や市議会議員の責務に関する深い思索を促します。
市議会の議員は、市民を代表して政策を討議し、重要な決定を行う責任を負っています。原稿をただ読むだけの議員では、議会の審議に実質的な貢献ができないことになります。市民の声を反映させ、具体的な問題に対して真摯に取り組む姿勢が求められます。
もし議員が原稿を読むことだけに終始し、実質的な議論や問題解決に参加していないのであれば、市民としてそのような議員に対して厳しい評価を下すのは当然のことです。議員は市民からの信任を受けている立場であり、市民の生活に直接的な影響を与える決定を下す立場にあります。したがって、形式的な活動にとどまるような議員は、議会の存在意義を損なう恐れがあります。
市民としては、議会で積極的に意見を交わし、問題に取り組む議員に支持を送るべきです。また、市民の声を議会に届け、議会の質を向上させるために、選挙や市民活動を通じてその意思を反映させることが重要です。議員の役割について、市民の皆様がどのように感じているかを問うことは、今後の北九州市政をより良くするための第一歩となります。