物語の風景が 私を包み込む~2021年8月に読んだ本から
読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしていく7回目。
8月に読んだ本の中から、印象に残った本4冊
1 もちじゅわ 中華まんの奇跡 石井睦美
シリーズ3作目。就職に苦労していた「ひぐま」こと樋口まりあは、秘書として食品会社に入社した。
社長の来客に手料理をふるまう仕事に 最初はとまどっていたが、かなり慣れてきた。
ボルシチ、七草粥、中華まん・・今回もおいしそうな料理がたくさん。
読書会 で友人に教えてもらった一冊。読みやすいし、まわりにいい人がたくさんいるし、食べ物は美味しそうだし、成長物語なので、安心して読める一冊。
この記事でとりあげた「彼女のこんだて帖」でも 「食べることの力」というのを感じたのだが、この本にも
食べ物を持つ力を 米田は信じているのだ。だれかと一緒に なにかを食べる、その行為が、その時間が ひとのこころを温め、励ますことを。
だれかの大切な思い出を 生き生きと蘇らせることを。
とあり、大いにうなずいた。
あっ!この本を読むまで、ピーターラビットが食べていたのは、「人参」だと思い込んでいた。たしかによく見ると、葉っぱが人参ではなかった。
2 哲夫の春休み 斎藤惇夫
6年生の春休み、父の故郷長岡に、1人で向かう哲夫。列車内でとなり合わせた女性順子(なおこ)と話すうち、不思議なことが次々とおこる。
長岡の古い屋敷では、見知らぬ少年とおばあさんに会うが、実はその人たちは・・・・。
ふわふわと現在と過去がいったりきたりする。この「ふわふわ感」、昔読んだ「時の旅人」を思い出した。
主人公本人だけではなく、知り合った女性の過去が重要になるというのがおもしろい。
タイムファンタジーという分類になるのかと思うが、「土の匂い」を感じて、しっとりと肌になじむお話だった。
3 ぼくの最高の日 はらだみずき
20代最後の クリスマスをひかえた 文房具店勤務の女性。
中学時代の卒業アルバムに なぜか穴が開いている リサイクルショップの青年。
なぜ「先生」と呼ばれているのか だれも知らない あご髭のある中年男性。
「バー・ピノッキオ」。72才のマスターが営むその店に 訪れる様々なお客たちの「人生の最高の日」は?
「本の中にすとんと引き込まれてしまう。」
本を読んでいると、時々そういう 幸せな状態におちいる。だが、私の「文章力」だと「面白くて夜中まで読んだ」「本の中に入った」「途中でやめられなかった」ぐらいしか表現できていない。
しかし、この本の一節に、
海で泳いだあとの 午睡のように、吸い込まれるように 本の世界に落ちた。活字が 像を結び、物語の風景が 私を包み込む。いつのまにか 自分ではない だれかの人生を 生きている。ひさしぶりに味わう、ひとりだけの 読書の時間―― 。
と、あり、
「そうよそうよ、そういう状態よ。さすが、作家さん。」と、えらくこの箇所が気に入ってしまった。
4 めぐりんと私 大崎梢
移動図書館「本バスめぐりん」。担当は司書のウメちゃんと運転手テルさん。
なくしたはずの図書館の本が、18年後、思いもかけないところから見つかった。なぜここに?
引っ越した同級生が残した 暗号を 必死にとくのは 小学生の男の子たち。
ちょっとした謎も、利用者の心も「とかしていく」移動図書館ミステリー。
小型のバス(?)の側面を開くと、ぎっしり並んでいる本たち、車内に乗り込んだ時のせまさと 両側にせまる本棚 ―― 昔むかしの そのまた昔、私が「移動図書館」を利用していた時のことが、よみがえってきた。移動図書館のバスが 近づいてくるとき、どんな音楽がなっていたっけ? それは思い出せない。でも楽しみにしてたことは確かだ。
前作「本バスめぐりん」より、「『本』や『めぐりん』にかかわることで、自分の人生を一歩すすめる」という要素が 強めだったような 印象を持った。
作中に岡田淳さんの「二分間の冒険」が出てきたのにはびっくり。
9月8日現在、北海道は緊急事態宣言中のため、またまたまた私の利用する図書館は閉館している。
閉館にそなえ、宮部みゆきさんの「三島屋シリーズ」(厚い本です)を4冊借りてきているが、もし、これを全部読んでも、開館しなかったら、「もう一度読みたい本」の中の「こそあどの森シリーズ」(岡田淳)を再読しようと思っているところ。
岡田淳さんと言えば、先日読んだ新聞の書評欄に、「めぐりんと私」と、岡田淳さんの「こそあどの森のおとなたちが 子どもだったころ」が載っていて、思わずにんまり(^^)v してしまった私である。