【徹底比較】ららぽーとVSイオンモール強いのはどっち?
ショッピングモール戦国時代といえる昨今
一人でのお出かけからファミリーに至るまで、老若男女から人気のお出かけ先となっているショッピングモール。特に、買い物だけでなく、様々な娯楽施設を兼ね備えたショッピングモールも多く、近年では夏の暑さが厳しくなっていることから、全天候型の屋内ショッピングモールは、天気を気にせずに休日を楽しむことのできる絶好のお出かけスポットになりつつある。モール内のすべて回るだけでも一日かかってしまうような巨大ショッピングモールも多く林立し、ショッピングモール戦国時代ともいえる今、首都圏に多くの店舗を構えるのがららぽーととイオンモールの2つのショッピングセンターである。
都会派のららぽーととファミリー層を意識したイオンモール
この2つのショッピングセンターを特徴づけるとすると、比較的駅近の都心やサブアーバンエリアに店舗を構えるのがららぽーとで、イオンモールはロードサイド型で、ファミリー層を意識したモールづくりの手法を取り入れているといえる。都市居住の若年層やファミリー層向けのテナントを中心に構成されるららぽーととは対照的に、イオンモールはより郊外型で幅広い世代やターゲット層を意識した店舗構成となっていることも違いといえる。他方、近年ではイオンモールも、駅近の都市型店舗の開業に積極的で、それに合わせてテナント構成もややハイエンド向けにそろえた店舗も少なくなく、両社の出店戦略にも重なる部分が見え始めているともいえる。特に、大都市近郊の郊外では、立地上競合となる両ブランドの店舗も存在し、大型ショッピングセンター同士の集客競争が繰り広げられているといえる。今回は首都圏一都三県の、ららぽーとイオンモール両者を複数のポイントから比較することで、ショッピングセンター業界の雌雄ともいえる両SCのストロングポイント・ウィークポイントを明らかにしていきたい。
【比較①:店舗数】首都圏にららぽーと系列は10店舗、一方イオンモールは25店舗
まず、店舗数では首都圏に店舗を構えるららぽーと系列の店舗は10店舗(ららぽーとの店舗としてオープン予定だったラゾーナ川崎も含む)、一方イオンモールは25店舗と店舗数ではイオンモール(イオンモール運営のイオンレイクタウン含む)がダブルスコア以上の大差をつける結果となった。下図1がららぽーとおよびその10km商圏、図2がイオンモールおよびその10km商圏を表す。上述の通り、ららぽーとがより東京23区内およびそれにより近いエリアで店舗を展開しているのに対して、イオンモールは埼玉・千葉の郊外部にも店舗網を広げていることがわかる。
【比較②:10km商圏人口】両者互角ながらイオンモールに軍配
それでは、上述した10km商圏に居住する人口では、どちらが優位なのだろうか。10km商圏内に居住する人口を、2020年度国勢調査をもとに算出した結果、ららぽーとは18,272,209人、イオンモールは18,653,872人と店舗数とは対照的に意外にも僅差の結果となった。圧倒的に店舗数を誇るイオンモールが商圏面積の合計でも当然上をいく形だが、ららぽーとが人口密度のより大きい東京23区に近いエリアに多くの店舗を構えることが要因と考えられる。
【比較③:最寄駅からの平均距離】より都市型のららぽーとに軍配
次に、ららぽーとおよびイオンモール全店舗の、最寄りからの店舗の代表住所からの平均距離(複数棟からなるショッピングセンターの場合はショッピングセンター全体の代表住所を使用)で比較する。こちらはららぽーとが567m、イオンモールが1136mとららぽーとに軍配が上がった。上述の通り、都市型居住者をメインターゲット層にしたららぽーとは比較的都心または駅近に店舗を構えるケースが多く、今回対象の10店舗中8店舗で駅直結または駅前に立地している。一方、イオンモールはより千葉・埼玉の郊外型の店舗では幹線道路沿いに位置するロードサイド型店舗で、駅からの来訪者は意識しない出店戦略となっていることから、これらが最寄り駅(最も近い駅)からの平均距離を押し上げる要因となっている。
【比較④:SC内の平均店舗数】専門店志向のららぽーとに軍配
ららぽーと、イオンモールともに多くの専門店から構成されているショッピングセンターだが、SC内の平均店舗数で比較するとららぽーとは258店舗、イオンモールは172店舗と、100近い差をつけてららぽーとの店舗数が多きことがわかった。一方、店舗別にみるともっとも多い専門店を抱えるのは埼玉県越谷市の「イオンレイクタウン」であり、2位の店舗数を誇る千葉県船橋市の「ららぽーとTOKYO-BAY」の400店舗と比較してもダブルスコアに近い巨大店舗だということがよくわかる。一方で、イオンモールの店舗構成は核店舗として各フロアにまたがるイオンまたはイオンスタイルを配置したうえで、専門店を配置する形となっており、ららぽーとの多くが各フロアにまたがる各店舗を持たない(イオンまたはイオンスタイルに匹敵する各店舗をもつのは現時点ではららぽーと横浜のイトーヨーカドーのみ、ららぽーとTOKYO-BAYは開業時はそごう・ダイエーが核店舗だった)ため、店舗数がSCの規模全体を反映してはいない側面もあるといえる。また、今回はイオンモールおよびららぽーとブランドに限って比較を行ったが、イオンモールが大~中規模のSC店舗をすべてイオンモールブランドとして展開している(単体のイオン店舗などを除く、総合スーパーを核とするSC形態の店舗は現在イオンモールとして展開されている。一方、食品スーパーを核店舗とするネイバーフッド型のイオンタウンブランドなども存在。)のに対し、ららぽーとを展開する三井不動産はららぽーとよりも若干規模の小さいSCをららガーデンまたはららテラスブランドとして展開しており、ららガーデン(首都圏内にはららガーデン川口、ららガーデン春日部の2店舗が展開)は上述のイオンモールの中規模店舗と同程度の規模となるものもある。従い、これらの店舗を含めた場合、上記の店舗数に若干の下振れが発生する可能性もある。
【比較⑤:面積】専門店数の多いららぽーとに軍配
面積は、店舗エリアを表す賃貸面積および施設全体の面積を表す延床面積の2つの尺度から比較したい。結果は、平均賃貸面積および延べ床面積とも店舗数で大きくイオンモールを大きく引き離していたららぽーとに軍配が上がる結果となった。賃貸面積は、首都圏のららぽーと系列10店舗の平均で69,780㎡、イオンモール25店舗で平均58,076㎡。また、延床面積でもららぽーとは176,300㎡、イオンモールは130,168㎡とこちらは40,000㎡以上の大差をつける結果となった。一方で、ららぽーとおよびイオンモール両者の中で、延床面積および賃貸面積ともにトップに立ったのは、日本一の規模を誇るショッピングモールとして名高い「イオンレイクタウン」で延床面積は3棟合わせて403,000㎡、賃貸面積は163,00平方メートルと圧倒的なスケールを示す結果となった。
【比較⑥:駐車台数】意外にも都市型店舗の多いららぽーとが勝利
最後の比較である駐車場の収容可能台数に関しては、意外にも駅近店舗の多いららぽーとの平均駐車可能台数が3600台、イオンモールの平均駐車可能台数は3152台と、僅差ではありながらもららぽーと軍配が上がる結果となった。 上述の通り、イオンモールはららぽーとに比べてより郊外のロードサイド型店舗を展開戦略
の主とするため、イオンモールが駐車台数で上回ることが予想されたが、意外にもららぽーとが上回る結果となった。これは、総店舗数および面積においても規模の大きい店舗がららぽーとに比較的多いことが要因と考えられる。イオンモールも、首都圏の2大店舗であるイオンレイクタウンの収容台数は9400台、イオンモール幕張新都心では7300台と首都圏のいずれのららぽーとよりも多い結果となったが、駐車台数1000~2000台の中規模店舗や、イオンモール多摩平の森などの一部の都市型店舗ががその影響を縮めているといえる。
まとめ
全体としてはららぽーとが各店舗の平均規模が大きく、上図3~5の店舗数、賃貸および延床面積、駐車収容台数でも、ららぽーとが上位に並ぶケースが多かった。結果として、平均値での比較では、ららぽーとに軍配の上がる項目が多いという結果になっている。他方、イオンモールは首都圏内での店舗数やカバーする10km圏内人口でららぽーとを上回るという結果となり、カバー率を含めると互角の競争を繰り広げているといえることが分かった。イオンモールも店舗単体では、イオンレイクタウンおよびイオンモール幕張新都心が他を凌駕する規模であることは上記からも明白で、三井不動産が1981年に開業し、アメリカ・ハワイのショッピングモールをコンセプトを取り入れた超大型ショッピングモールの先駆けである「ららぽーとTOKYO-BAY」に匹敵する。上述の通り、都市型でクオリティを意識した、充実した専門店のバリエーションに重きを置く「ららぽーと」と郊外型でイオンを核店舗にファミリー向けのテナント構成に強みを持つ「イオンモール」それぞれでモールのコンセプトやターゲット層が異なる部分もあるが、昨今大型ショッピングモール業界の雌雄といっても過言ではない両者を比較することで、改めて浮き上がる一面もあったといえよう。今後も、成長と店舗網の拡大を続ける両者の展開から目が離せない。