ゴン散(エッセイ)
子供の頃、ゴン太(権太)という
雑種の犬を飼っていた。
柴犬とシェパートの間くらいの
大きさで、三河犬(みかわけん)と
いう噂もあったが、
たぶん雑種だったのだろう。
「絶対散歩に行くから飼って」
と誓いまくった子供は
決してその約束を守らない。
しばらくして、ゴンちゃんの散歩は
母の仕事となった。
そして、その省略が「ゴン散」。
私が妹に、「お母さんは?」と
聞けば、「ゴン散」だけでわかる。
父から帰るコールがあって、
「母さんは?」
「ゴン散」
で、会話が成り立った。
道を歩いていて、突然その
「ゴン散」という言葉を思い出した。
懐かしいエピソードのひとつである。