HOLY NIGHTS 第27話「姉妹の半生」(連続短編小説)
かれんは、自分と、妹あずさの
バックグラウンドを語る。
「私は若くして、女優業に入った。
3つ年下のあずさは、私を
反面教師とした両親の方針で、
とにかく手堅い資格を取らされる
ハメになって、看護師の資格を
取ったの。
ま、いわば、私の被害者」
あずさは、くすっと笑う。
「そうそう、
お姉ちゃんが独身だから、
私は4人の子持ち。
しかもそれぞれ父親が違って。
ここら辺は、かれんの妹っぽいでしょ?
女優業でも看護師でも、肉食は肉食」
「・・・お子さんは4人とも
・・・その・・・父親が違うの?」
純の素朴な質問に、
あずさは記憶をたどるように言う。
「上の子は、9歳なんだけど、
学生時代の彼との子供。
2番目と3番目は、
医者だった元ダンナの子供。
4番目は、まだ1歳で、
今の彼氏の子」
「両親は、あずさが手堅く
医者と結婚して、長女も引き取られ、
あずさが彼の子供を産んだことに
安心して、眠るように相次いで
亡くなったの。
まぁ、高齢だったんだけど」
「それからが大変だってのにね!」
あずさはテーブルの
引き出しからタバコを取り出すと、
純に一言断った。
「いいですか?」
純は、もちろん、
あずさの家で断る理由もない。
「子供たちが寝静まってから、
唯一のくつろぎが、この時間なんです」
あずさは、タバコに火を付けて、
美味しそうに煙を吸う。
「そう、両親がなくなってから、
3人目が生まれて、医者と別れた。
で、もう、ゴチャゴチャで・・・
でも、捨てる神あれば拾う神あり、
で、今の彼氏に出会って、
4人目が生まれた」
それを聞いて、
純は胸の内をボソッとつぶやく。
「・・・その・・・出会いの度に、
子供が生まれるって、スゴイよね」
かれんもあずさも大爆笑した。
あずさはタバコの煙に
むせながら言う。
「でも、純さんだって、
新しい出会いの度に、
新しい曲が生まれるでしょう?」
そう言われて、純はハッとした。
「オレの曲は、オレの子供?」
「みたいなもんじゃないかしら」
かれんはそうつぶやくと、
続けた。
「みどり、沙穂、悠香、ゆい・・・
どの子も、あずさが生きた証しで、
人生を語るもの。
純さんの曲と同じようなものよ。
そして、姪っ子たちの存在が、
二人きりの姉妹に夢と希望と、
心地いい居場所を与えてくれるの」
「心地いいのは、
お姉ちゃんだけだよ!
毎日、4人の世話してる
私の身にもなって!」
あずさの反論に、
かれんも純も笑う。
純は、かれんの意外な
一面を真摯に受け止める。
と、ともに、
まず自分の脆く大切な部分を
見せたかれんの思いと、
若干の計算を感じていた。
続
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