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HOLY NIGHTS 第8話「かれんと純」(連続短編小説)

「え・・・? 純さん、
藤田良樹さんと
お知り合いなんですか?」

高級イタリアンの店で、
かれんが驚く。

二人は2度目の打合せ、
というか、話し合いをしていた。

「それよか、かれんさんが
良樹を知っているのも驚きなんだけど」

「知ってますよー、『笑いのタネ』も
『ガツ・バラ』も『不思議ちゃん』も、
藤田さんの番組でしょう?」

意外に藤田に詳しいかれんに、
純は首をかしげる。
まさか、良樹はかれんに
手を出しているのだろか。

そんな様子は微塵もなかったが、
TVプロデューサーなど、
一番アテにならない人種である。

それを察してか、かれんは
コロコロと笑う。

「藤田さんね、ある地方のラジオ番組で、
言ってたの。
‘オレが長年、興味ある人物は、
国沢純っていうシンガーだ’って」

「えええ~?」

公共の場に藤田が
現れることはありえないし、
そんな偏った発言をする男でもない。

「だから、てっきり、
すごい距離があるお二人だと
思ってたの。
それが、そんなに近しい関係なのに、
わざわざそんなこと言うなんて・・・
藤田さん、間接的に、地方で
告白しちゃってたのね」

これは一度、藤田に正そうと、
純は胸に収める。
ありえるとすれば、
深夜ベロンベロンに酔っぱらって、
地方のラジオ局に引っ張り出され、
東京でオンエアされないことがない
という安堵感から思わず出た
セリフなのだろう。

それを益子かれんが
聴いていたというのも驚きである。

かれんは笑いながら言った。

「私、その地方の出身なんです。
たまたま親戚の結婚式で帰省していたら・・・」

都会派女優とばかり思っていた純は、
びっくりする。

「じゃあ、方言とかも?」

「直しましたけど、帰省すると出ますよ」

「たとえば?」

「元気にしとるがか?とか」

「どこの言葉?」

「能登の方です」

「へーぇ、日本海側か。
もしかして演歌とか好き?」

話しの流れに、かれんは笑う。

「キライではないですけど、私、
自分で歌うと声が低いので、
男の人のバラードとかが好き」

「僕のバラードも、歌ってくれた?」

「もちろん! たぶん、純さんより
低い音程で・・・」

普通のかれんの声は、
高すぎず、低すぎず、
ただ、しっかり通る声ではあった。

一方、純の声は甘く、歌に関しては、
女性も出せないような高音から、
かなりの低音まで、音域は尋常ならぬ
くらい広かった。

「ごめんなさい、歌で純さんと
比べるなんて、図々しいですよね」

純は笑って首をふる。

「ちょうどいいタイミングで、
いい話が聞けましたよ」

「え?」

「今のドラマで、僕の曲の女性像を
かれんさんが演じてくれるという
ご相談には乗れなかったけど・・・
良樹とも相談して、かれんさんに
僕の歌を歌ってもらえないかなって」

洋介の案を、純はすでに藤田にも相談し、
承諾を得ていた。

かれんは、美しい顔を、
パッと輝かして驚く。

「ま、まさか、そんな・・・」

純はいたずらっぽく笑う。

「但し、まずはちょっとお遊び的要素から。
それをかれんさんがOKしてくれたらな、と」

「・・・お遊び? お笑いのネタとか?」

藤田の傾向を察し、かれんは
ちょっと微妙な表情をする。
かれんの豊かな表情の変化に
見とれながら、純は笑った。

「いえ、まさか!
まず第一に、突然メジャー番組にではなく、
良樹がやっているマイナーな深夜枠での出演」

「チェンジ・ザ・サウンド?」

それも知っていたかれんに、
純は驚く。

「僕も知らなかったのに、
かれんさん、すごい!」

純は更に、洋介と藤田の提案を
持ち出す。

「そして、PV制作。
曲を作っているのが誰なのか、
歌っているのが誰なのかわかない状態で
やってみる。」

かれんは首をかしげる。

「私、かぶりモノとかしなくちゃダメ?」

純は大笑いする。

「ははっ!! それも面白いね! 
でも案としては、かれんさんの
映像なしのPV・・・たとえば風景だけとか、
アニメとかのPVにする」

「・・・曲の提供者が純さんで、
歌っているのが私だと
わかっていたら、ネームバリューで
皆引いちゃうから?」

「引く場合もあるけど、
楽曲以上に注目されて、
内容以上の評価を受けるのは、
面白くないでしょう?」

かれんは勝気な眼差しでうなずいた。

「是非、チャレンジしたい! 
純さんの歌を歌えるなんて、夢見たい!」

「こちらこそ、かれんさんに
歌ってもらえるなんで、
願ったりかなったりですよ」

              続

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