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HOLY NIGHTS 第33話「さみしくて、さみしくて~かれん」(連続短編小説)

今日は午後からオフで、
かれんは妹あずさの
娘4人と戯れたあと、
一人、自宅マンション
に戻った。

かれん御殿とも
ウワサされるかれんの住居。

高級マンションの
1フロアを丸々借りているのだが、
あずさの古い民家のほうが
居心地がいい。

それは姪っ子たちも
同様のようで、かれんの
マンションに来ても、
よそいきの顔で、
固くなっている子供たちを見ると、
胸が痛んだ。

「・・・空虚な名誉・・・」

おまけに、純には、
何の予告もなく、
自分の一番柔らかい部分
・・・妹あずさ母子に
いきなり会わせてしまった。

決して計算して
そうしたわけではないが、
いつも勘違いされる、
自分のオープンさに、
純も少し引いていることが、
かれんにはわかっていた。

「強いトコ見せて、
引かれるのは慣れっこだけど、
一番脆いところを見せて引かれたら、
さすがの益子かれんも、悲しいな」

かれんはバスルームで
ゆっくりくつろぎながら、
汗が涙か水滴かわからぬもので、
頬が濡れているのを感じた。

「こんな時、
誰と話したらいいの? 
あずさはいっぱいいっぱい。
純さんは当然ムリ。
・・・藤田さん?」

しかし、そんな打算に
かれんは苦笑した。

「ますます引かれる女に
なっちゃうよ、かれん」

かつて付き合いのあった
藤田良樹は、もうとっくに、
純に傾倒している。

純自身にぶつけたところで、
純にそれを受け止められる
キャパがあるか
どうかも疑わしい。

いや、ないから
引いてるのだろう。

そういう意味では、
かれんのほうが男らしいと
感じる部分がある。

かれんは湯を両手ですくい、
頬を流れる何かを
ぬぐいさった。

「・・・損な女だけど、
仕方ないよね」

本当の自分を見せて
純が身を引いたなら、
それまでの男だ。

かれんは湯舟の中で、
両膝を抱えて、
顔を湯の中に潜らせる。

女々しい自分はキライだ。

だけど、女々しい純は
・・・好きだ。

かれんは湯舟から顔をおこし、
大声で叫んでみる。

「国沢純のバカ!!
男なら、受け止めろ!
強い女の脆さを
ちゃんと受け止めろ!!」

口に出してしまうと、
かれんは涙があふれてくるのを
止められなくなった。

「バカバカバカ・・・
純さんに興味があったから、
マリーなんてやっちゃった。
純さんたちにしてみれば、
ただのお遊びなのは
わかっていたのに、
何よ、このザマ、バカみたい」

かれんは湯舟から上がり、
バスローブを身にまとう。

美しい肢体。

かれんは無理に
笑って見せる。

「わかっていても、
あなたたちのお遊びに乗るのが、
大人の女かもね。
わかっているからこそ、
知らない顔してるのが、
本当のプライドなのかも」

鏡には、涙を浮かべ、
不敵に微笑む女優、
益子かれんが映っていた。


             続


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