HOLY NIGHTS 第19話「藤田の新案」(連続連続小説)
「え・・・? かれんさんに演歌?」
藤田の案に、洋介は驚いた。
純は話しを続ける。
「あの番組自体が
ノー・ジャンルだし、
良樹はかれんさんの
声質を聞いて、プロデューサーの
血が騒いだらしい」
「これは演歌だ!・・・と?」
「いや、どんぴしゃ演歌じゃなくて、
マリー・ゴールドが演歌を歌う意外性、
みたいなものにピンときたみたい」
洋介は、ふーん、と
純を見つめる。
「・・・何?」
「何って・・・
藤田さんもお前も、遊び心というか、
いろんなことナメてるというか」
ニヤリと笑う純に、
洋介はたたみかける。
「作詞家が誰かわかったときに、
世間の騒動が再燃するのも
狙いのうちだろ?」
純はデライラのように、
洋介にすり寄る。
「・・・そう言うなよ」
「っつーか、お前も藤田さんの
お遊びに賛成なわけ?
お前が張本人なんだぜ、
世間騒がせの。
それとも、まだアイツに
ちょっかい出したいのか?」
アイツとは、
演歌界のプリンス、田中聖司。
何年か前、
純と聖司が付き合っていることが
大スクープになり、
純のゲイ体質が世間一般に
知れ渡ったと言っても過言ではない。
珍しく、年下の聖司の夢中になり、
純がプロデュースして、
今回とは逆に、聖司に
自作のPOPSを歌わせた純。
世間は騒然としたが、
その曲はCMソングにもなり、
いまだに誰もが忘れられない
名曲となった。
そんなに長い期間ではなかったが、
純の中から聖司がフェイドアウト
していくまで、洋介はなんとも
複雑な思いでいた。
この甘えたの純が、
がっつり男になって聖司を
守ろうとする様は、
洋介が今まで見たことのない姿であり、
違和感を覚えた。
が、それも名曲へのステップへと
変えていく純。
今度はかれんを使って、
どんなものを作るのだろうか。
それを見越した藤田の考えに、
洋介は職人魂を感じる。
人を商品として扱い、
時代のニーズに応えた適所に
あてがい、そして、秘密裏に進んでいる
このお遊びがバレた時の
お楽しみまで、計算している藤田。
洋介は、敵わないな、
とつぶやいた。
続
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