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HOLY NIGHTS 第38話「翔子の死」(連続短編小説)

洋介とのHUG・・・
それが常に純の心の
安定剤だった。

洋介は決して自分を
見捨てたりしない。

洋介の魂は自分と共にある。

なんだか宗教じみた
自分の信念に、純は苦笑した。

そして、その想いこそ、
歌詞にすべきだと思っていた。

が、日常的過ぎて、
なかなかうまく言葉にできない。

感謝というには照れくさい、
日々の温もり。

それがなければ
死んでしまうくらいなのに、
そうとは認めたくない自我。

いろんな感情が混ざり合って、
洋介との時間を歌詞にするには、
まだまだ時間がかかりそうだった。

いや、一生かけて作りたい、
と、純は思う。

今、現時点で軽々しい
LOVE SONGで
終わりにしたくない、洋介との時間。

前世も今世も、来世も
ずっと繋がって行く・・・

そんな安堵の中で、
最高の歌詞を書きたいと思った。

そんな中、
ある事件が起こった。

洋介の元彼女、
翔子が亡くなったのだ。

随分経って、それを聞いた洋介は、
ただ茫然としていた。

翔子より、純を選んだ洋介。
それはそれで正しかったのだろう。

しかし、なぜ、自分は翔子の最期を
見送ってやれなかったのだろう
という思いで、洋介は
ナイフで切り裂かれたように傷付き、
同じく、純の中でも洋介と
劣らぬくらいの傷となった。

「ごめん、オレがいなければ、
翔子さんは、洋介の腕の中で
逝けたかもしれない」

翔子は30半ばで、
独身のまま、亡くなった。

純がいなければ、ひょっとして、
翔子は洋介と
結婚していたかもしれない。

しかし、洋介は反論した。

「・・・そしたら、その間に、
純が死んでいた。
間違いなく、お前は自らの
命を絶っていた。
・・・翔子が天寿を全うしたのなら、
悲しいけれど、それは純のせいでも、
誰のせいでもない。
ただ、亡くなってから
聞いて驚いているオレが
間抜けなだけで・・・
それに、翔子にも、この十年の間に
いろいろあっただろと思う」

しかし、後々、翔子は、
自らを死に向かわす生活を続け、
病いを得て、ほっとして亡くなった、
つまり、ほぼ自死に近い状態
だったということを、
洋介ではなく、純が人づてに
聞くことになる。

純は心の底から、
翔子に詫びて、もし必要であれば、
自分の命さえ奪ってくれる
ことを祈った。

翔子の死に対する代償は、
自分にしか
払えないのだということが、
純には分かっていた。

純は、洋介のHUGを拒否して、
幾晩も、それを願い続けた。

―でも、どうか、
オレを残して、洋介だけを
連れていくのは勘弁して下さい。
洋介が死ねば、オレも死にます―

あの世で、翔子は、
どう思っているのだろう。
結局、洋介から離れられない
純をますます憎んでいるかもしれない。

とにかく、洋介も純も心乱れ、
ただただ翔子の死を悼む
ことしかできなかった。


               続

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