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僕の見た風景 8 (連続短編小説)

僕の姉は、葉子といって、
僕より5つ年上だから
アキラより、一回りくらい
上なんだけど
いち早くアキラの個性に気付いて
アキラを可愛がっていた。

僕が大学を卒業するくらいに
アキラの父親が西宮から大阪に
店を移した。
台湾人気質は、大阪人と合うらしい。

おかげで比較的近所になり、
アキラの親父さんの店に姉を連れて
行ったのがきっかけだった。

話は前後するけど
当時、僕は22才、アキラは中学生、
姉は独身だった。

「アキラが、
もう10年早く生まれてきてたら、
私、アキラの嫁になったのになー」

アラサーの葉子にそんなことを
言われて、アキラはへへっと笑った。

「ヨーコちゃん、オレにも
選ぶ権利あんで」

「失敬なガキやな」

「オレは年齢でオンナ選べへんよ」

「ほな、なんで私はアカンの?」

「ヨーコちゃん、女王様タイプやからな、
イタイわ」

「イタイ?
なんなん、その言い草」

「あ、ごめん、オレには、ってこと。
ヨーコちゃんを好きになるオトコも
おると思うで」

中学生のアドバイスにマジ切れ
している姉の姿は、
弟としては、なかなかおもしろい
ものであった。

「俊兄は、あんなキョーレツな
ねーちゃんがいるから、
そんな優男になったんやなぁ」

アキラがそんなことを言うので

「もしかして、うちのねーちゃん、
お前んとこのかーちゃんと
似てたりするん?」

と聞いたら、また鼻で笑われた。

「分類的には、な。
やけど、ヨーコの方が100倍ましや」

アキラの母親というのは、どんな
怪物なのだろうか、と思ったものだ。

                 続

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