手紙 第八話「ごきげんよう」(仮想現実)
なんだか、あっという間に
年の瀬ですね。
漠然としたお話をしただけで
お恥ずかしい限りの一年でした。
何かのご縁があって、
この筆を執っているのでしょうが、
本当の私は、どこにいるのだろうか
と考えることがあります。
もしかして、もうとっくに
耄碌して、老人ホームの中で
空想しているだけのことかもしれません。
あるいは、誰かに乗り移って
筆を執っているのかもしれません。
娘が乗り移られたのだから
私が誰かの乗り移っても、
罰は当たらないかしら。
もう数えきれないほどの歳月を
過ごしてきました。
早く父の元に逝きたいのですが、
こればかりは、のうのうと
寿命を全うするしかありません。
また、新しい年に、ひょっこり現れたら
ああ、生きていたのか、とお笑いください。
ゆく年、くる年、その繰り返し。
みなさま、ごきげんよう。
高木南