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僕の見た風景 16 (連続短編小説)

よく覚えてないのだけど
アキラの四十九日が
過ぎたころだろか。

アキラが豪快に
僕の夢の中に出てきた。
姉の葉子さえ、出て来ないので
僕はびっくりした。

「俊兄、オレ、そろそろ
行くけど、あんまりオレに
心残すなよ」

驚くことに、アキラは僕が
自分のことについて
回想しているのを
知っているらしい。

「アキラは、何で僕の
夢に出てくるんや?」

「アンテナが似てるんやろ。
由佳里なんか、全然あかんし、
ジンもハルも、もひとつやな。
家族ってなんなんやろ」

由佳里とは、アキラの嫁で、
ジン(仁)は息子、
ハル(春香)は娘である。

「家族を残して心配ないんか?」

「うーん、なんか由佳里に、
オトコいるみたいやわ」

そんな事情は、夢の中だけと
いうことにしておこう。

葉子とのことも聞きたかったが
夢で聞いても、自分の願望が
反映するだけのような気がした。

「誰かに何か伝えたかったら
言っとくで。内容によるけど」

アキラは大らかに笑った。

「人にそんなこと
頼めるかいな。
ほな、俊兄、またな。
こっちで待ってるで」

大きなアキラの姿が
すーっと消えていって、
僕はぼんやり目を覚ました。

           続


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