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悲しかったタクシー事件

父が車椅子に乗っていた頃。

阪急の駅前で、
30年以上も阪急タクシーで
家まで帰っていたのに、
車椅子の父を見て、
「空」表示のドライバーが
タクシー乗り場をスルーして
行った。

たぶん、厄介な客だと
思ったのだろう。
私と妹は憤慨して、
泣きそうになった。
父一人ならともかく、
娘が二人、介護についてるのに。
しかも、30年もこの駅で
阪急タクシーを使ってきたのに。

以前の父なら、
私たちの同様、激怒しただろう。
しかし、車椅子で諦念して、
しかも、幼児化した父は、
「しゃあないやん」
とつぶやいた。
私はとても悲しかった。

あれ以来、実家では、
福祉タクシーを使うようになった。

駅前で、阪急タクシーが
待っていても、絶対使わず、
福祉タクシーを呼んだ。

今でも、私は、阪急タクシーを
避けて、違うタクシーに
乗り込む。
運転手さんが、順番抜かしのようで
気まずそうにしてると、
「阪急、嫌いなんで」
と伝える。


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