移りゆく景色 5 (連続短編小説)
「あー、ジンが来てる~」
14歳の和人は生意気盛りだ。
「伊都だけやなくて、
ばぁちゃんも口説く気か?」
ジンは、破顔する。
「ようわかっとるやないか、
このクソガキが」
「お前かて、クソガキがちょっと
でかなっただけやん」
ジンと和人のやりとりを
10才の安人は、恐々と見ている。
どう見ても大人のジンに
兄の和人が不利に見えるらしい。
「カズ、やめときいや」
安人のその様子が可愛くて、
ジンは笑ってしまう。
「ヤスはええ子やなぁ、
カズとはえらい違いや」
「カズかて、偉いねんで!!」
ムキになって兄をかばう安人が
可愛くて、ジンも芙美も笑ってしまうが
当の和人は、恥ずかしいらしい。
「アホか、ヤス、マジになるなや」
和人になだめられて、ハッとして
安人は芙美の胸に飛び込む。
「ばぁちゃ~ん・・・」
芙美は安人の小さな体を受け止めると
大らかに笑う。
「ワルイ兄ちゃんたちやな、
安人も泣かんと」
安人は、芙美の腕につかまり
べそをかいてる。
「意外と、ヤスは世渡り上手かもな、
見習えよ、このアホ」
ジンは和人の頭を小突いた。
社会人になってばかりの
伊都が帰ってくるのは遅い。
その日の晩御飯も、岸田家に
誘われたが、ジンは、朋明との
約束があったので、
ありがたく辞退する。
芙美は、朋明も来ればいいやん、と
いうが、次回、またヨロシク、と
岸田家を後にした。
続
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