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HOLY NIGHTS 第39話「藤田の喝」(連続短編小説)

「バカタレが、
洋介の元カノが亡くなって、
何を仕事に支障きたしてるんだ」

全ての事情を話した上での、
藤田の喝に、純はうなだれる。

「洋介がお前を選んだ時点で、
運命はきまったんだ。
あとの人生は彼女自身のもの。
それに、洋介はともかく、
なんでお前が、そんなに心乱す? 
憶えておけ。
“篠原洋介は、国沢純を選んだんだ”!!
・・・お前のその脆いところが
大好物だが、男として、
いや、人間として、言っておく。
お前は自分が
一番愛する者を愛し、
一番愛されている者に応えれば、
それで十分だ。
グダグダ泣きに入るな!
男だろ! 一人前の大人だろ! 
しっかりしろよ、国沢純!」

そう言って、
純を抱きしめる傍ら、
藤田はつぶやく。

「・・・しかし、芸術面で、
それを排泄できれば、
お前はホンモノだ。
何でも糧にするんだ」

「・・・人の死さえも?」

「もちろんだ!」

非人間的な藤田のもの言いに、
純は、妙に納得する。

「・・・心の痛みを芸術に変えたら・・・
人生、意味のないことなんて
何もないね」

「ああ、そうさ。
オレがこんなにご執心なのにも
関わらず、純が洋介にドップリなのも、
父親にはむかって、純の唇を奪う
バカ息子がいることも、
全ては芸術の糧さ」

大和の話に、純は笑う。

「何?知ってたの?」

「・・・マジなのか? 
許せんな。
しかし、大和を追い詰めて、
潰しにかかったら、
目を白黒させてやがった。
オレの純に手出しする
なんて100年早いわ!」

「・・・いつも聞くけど、
洋介はOKなの?」

「ヤツは、お前の命綱なんだろ? 
そうじゃなきゃ、
とうに、ぶっ潰してる」

純はあたふたする。

「洋介を潰したら、
オレ、良樹を殺す。
っつーか、良樹、
殺しても死にそうにないから、
オレが洋介の後を追って死ぬ」

「・・・ほら、な」

藤田は恨みがましく、
純をにらむ。

「ムカつくけど、それが事実なら、
洋介は温存せざるを得ない。
だし、何事もそんなもんさ。
それが我慢できなけりゃ、
彼女のように、死ぬしかあるまい」


            続

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