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HOLY NIGHTS 第17話「歌をめぐって」(連続短編小説)

「あんなバカバカしい歌に、
よく、かれんがOKしたな」

藤田のオフィスの応接室で、
純は悪態をつかれていた。

「洋介のアレンジがなけりゃ、
ひどいもんだ」

「でも、良樹が見せてくれた
アニメーションとは、
合ってただろう?」

純の言葉に、藤田は
ムッとする。

「オレのせいで、
あの三文歌ができたのか?」

「三文歌?? 
じゃあ、かれんさんが
歌ってるの聞いてから、
『チェンジ・ザ・サウンド』での
採用決めれば?」

実はまだ、洋介の音源と
純の歌詞しか手にしていない
藤田は溜息をつく。

「・・・かれんが、これを歌ったって
ことは、お前、もう、彼女と
デキてるのか?」

藤田の言葉に、
純はカッとする。

「オレの歌詞は三文かも
しれないけど、
洋介の音源はバッチリだ。
それくらい認めてくれよ」

「ああ、だから、
洋介のおかげだと・・・」

「かれんさんは、
音と詞の両方をみて、
納得したんだ。
ついでに良樹の
アニメーションのイメージも
理解して。
ぐだぐだ疑うんなら、
かれんさんは、良樹のアニメと
番組に惹かれて、この話に
のったって言いきってやる!! 
オレは彼女に、
指一本触れてない。
それに、そんなことよか、
オレと洋介の楽曲に
ケチつけられるのが一番ムカつく。
オレが歌詞とメロディラインを
作った。
洋介がそれに賛同して、
曲を作り、アレンジした。
それをかれんさんが聞いて、
納得して、歌った。
どの工程が気に入らないのか
知らないけど、
オレたちの正規ルートに
ケチつけるなら、
『チェンジ・ザ・サウンド』なんて、
お断りだね!」

純の言葉に、
藤田がまたムッとする。

「・・・経緯はわかった。
が、お断りとゆーのは、何だ? 
最初に持ちかけてきたのは、
お前の方だぞ。
オレの賛否に関わらず、
番組に出してもらえるよう
オファーするのが筋じゃないのか?」

藤田の意見は正しかった。

が、純も引くに引けない。

その理由は、
自分とかれんの関係を疑われたこと。

そしてそれ以前に
藤田とかれんの関係を
知らされていたこと。

「・・・わかったよ。
良樹のテイストに
合わない楽曲かもしれないけど、
でも、どうか番組で使ってください」

そう言うしか、かれんや洋介の
メンツを保つ手が、
純にはなかった。
 
しかし、何か仕返しがしたい。

満足気に笑う藤田が、
かれんの歌声を聞いて
びっくりするまで、
何日とないのだが、
その前に、純は誓約が
ほしかった。

「オレのお願いに対して、
良樹の返答方法を指定したい」

「・・・はぁ?」

藤田はあきれたように、
純を見つめる。

「誓約書にサインでもするのか?」

純は首を振ると、
ちょっと上目使いに藤田を見つめた。

「・・・いっぱつ殴らせろ。
そしたら、契約完了だ」

藤田は吹き出す。

「殴る? ここで?」

純はうなずく。

藤田はフッと笑うと、
目を閉じた。

純は、けっこうな勢いで
藤田の頬をはたくと
軽くその頬に頬を寄せる。

「・・・バカバカしい」

藤田は苦笑した。

数日後、かれんの
歌声入りのデモテープを
受け取って、藤田は驚愕する。

すれっからしの女の歌を、
見事に歌い切るかれん。

「・・・かれんの方が、
純にホレてんのかもしんねぇーな」

藤田は、そのハスキーで、
ドスの効いたかれんの
歌声に聴き入る。

「いい女になったな、かれん」

藤田はデモテープを、
早速『チェンジ・ザ・サウンド』の
ディレクターに回した。

    
              続

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