HOLY NIGHTS 第25話「かれんの宝物」(連続短編小説)
洋介の予想通り、
純はかれんと食事をしていた。
歌や芝居について
熱く語ったあと、
二人はかれんの専用車に
乗り込んだ。
「純さん、今夜、予定ある?」
運転手には会話が
聞こえない造りになっていて、
純は余計どぎまぎする。
「いや、特に・・・」
「じゃぁ、行きたいとこがあるの。
付き合ってくれる?」
純は大人しくうなずいた。
かれんの車は
都心を離れていく。
純は遠のく人工の光と、
近づいてくる大きな星の輝きに
魅入っていた。
てっきりかれんの別荘にでも
連れて来られたのかと
思いきや、車は東京のはずれの
下町で止まった。
かれんはそこから、
誰かに電話する。
「あずさ?
今、すぐそこまで来てるの。
行っていい?」
電話の向こうからは、
にぎやかな子供の声がする。
かれんは、純の手を取って、
車を降りた。
「ど、どこへいくんですか?」
かれんはいたずらっぽく笑うと、
一軒の民家に、
純を連れていった。
「妹のあずさです」
かれんが紹介した
妹のあずさは、
かれんの比べれば控え目であったが、
一般女性としては何か
ハッとするものがあった。
そして古い民家の奥から、
ドッと溢れ出してくる、
女の子三人。
「うわー!
かれんが国沢純を
連れてきたー!!」
歯に物着せぬ子供たち・・・
3歳から10歳くらいだろうか。
部屋の奥からは、
赤ん坊の泣き声もする。
ただただ茫然としている純に、
かれんは微笑んだ。
「むさ苦しいところに、
ご案内してごめんなさい。
でも、私の宝物を見せたかったの」
益子あずさは、
看護師をしていて、
4人の女の子の母親で、
シングルマザーだった。
「もう、お姉ちゃん、
突然、国沢純さんは、ヒドイ!
私、すっぴんじゃん!」
素顔でも十分美しいあずさ。
かれんとよく似ていて、
内に秘めたる情熱を純は感じた。
「・・・お邪魔します」
女所帯に、のこのこ上がり込む
違和感が恥ずかしくて、
純は小さくなって家に入る。
子供たちは大喜びで、
かれんと純にじゃれついた。
続
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