HOLY NIGHTS 第24話「純のゆくえ」(連続短編小説)
夕方、藤田のオフィスから
戻った洋介は、
何となくぼんやりしていた。
何を話したのか、
よく憶えていない。
が、藤田に引き出されるまま、
デライラのことや、
たわいもない日常を語り・・・
そして隠し遂せていたと
思っていた純の自殺未遂のことも、
あっさり藤田の耳に
入っていたことを知り、驚いた。
「純もブレイク前だったし、
マスコミにはリークしていない。
だから、今更こんな話もなんだが、
オレは洋介が純の命を救ったと
思っている」
それは藤田にとっては
感謝の言葉だったが、
洋介は、二人だけの秘密に
土足で踏み込まれたような
不快感をあらわにする。
「・・・なんで、そんな昔の話、
持ち出すんですか?」
「オレより、純を
理解している君を認めるため。
だから国沢純について、
一緒に考えていきたいと思う」
「・・・藤田さんは藤田さんで、
僕は僕で、純をサポート
すればいいんじゃないですか」
つれない洋介の言葉に、
藤田は声を立てて笑う。
「そりゃ、そうだな」
「・・・はぁ?」
藤田の本心が
別のところにあるのがわかり、
洋介はびっくりする。
「じゃあ、何でわざわざ僕を
呼び出したんですか?」
「二件ある。
まず一件。
今度、うちで食事会をする。
恒例なんだが、
純とペアで来てくれないか。
息子の大和が、純のファンで・・・」
「・・・それも、純に依頼すれば
いいことでしょう」
藤田は渋い顔で微笑む。
「直々に洋介の意向を
聞きたかった。
来てくれるか?」
「純次第ですね。
純はかれんさんと行きたがる
かもしれない」
やっと本題に入ったといった
顔になった藤田。
「・・・洋介は、どう思う?」
「・・・って、何がですか?」
「純とかれんを、このまま
組ませておいていいもんかどうか」
藤田の質問に、
洋介は面食らう。
「純が、かれんさんに
奪われてもいいかってことですか?
それこそ、純次第で・・・」
「洋介は、止めるつもりはない、と?」
「止めて、止まるヤツじゃないし」
ここで、藤田はニヒルな
笑いを浮かべる。
「オレなら、止めたい」
藤田の率直過ぎる意見に、
洋介は目を丸くした。
「・・・シット・・・ってやつですか?」
「当たり前だ。あの国沢純が、
女優とスキャンダルなんて、
つまらな過ぎる。
聖司のときよりも悪い」
洋介は思わず吹き出す。
「・・・じゃあ、僕と純も
許せないんじゃ・・・?」
「いや、それは仕方ない」
藤田の妙な落とし所に、
洋介は笑った。
そんな結論のない、
たわいもない会話をして帰って来ると、
洋介のマンションに、
デライラがいた。
「・・・純のヤツ、まさか、
かれんさんと・・・?」
続
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?