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僕の見た風景 10 (連続短編小説)

その当時のエピソードを
時空を超えて聞く事が多かった。

時空というと大げさだけど、
時間は、今現在だったり、
過去だったり、
空間は、日本に帰国後だったり
インドネシアにいる当時だったり。

そこらへんの整理がつかないので、
思い出すエピソードを適当に
拾っていくことにする。

実はアキラとの付き合いは、
亜矢との付き合いや結婚の時期を
もちろんまたいでいるのだけど
ほとんど関連付いて覚えていることはない。

僕の結婚式は、
アキラはネシアにいたし、
アキラの結婚式は身内だけで行われた。

葉子は、アキラがネシアに旅だってすぐ、
『枕の上の葉』というネシア映画を観て
震えあがっていた。
その映画はネシアの
ストレートチルドレンたちの話なのだが、
あまりにも悲惨すぎる、とアキラに言ったら
アキラは、そんな国やで、と答えていた。

「車で人を轢いて、
しまった、と思って引き返して、
生きていたら、もう一回轢いて
死んだの確かめるお国柄やで」

怪我して生きている人間に払う
罰金のほうが、死んだ人より
高いのだという。

「映画のまんまやん」

と葉子は珍しく涙を浮かべていた。

                 続

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