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HOLY NIGHTS 第30話「食事会の当日」(連続短編小説)

藤田家恒例の食事会に、
初めて純と洋介が
顔を出した。

沙希夫婦は来ておらず、
3カップル・・・。
藤田と亜也子夫妻、
大和と彼女のローザ、
そして純と洋介。

大和の彼女はなんと
日本生まれのドイツ人だった。

お人形のように美しいローザは
しかし、本物の国沢純を見て
大はしゃぎである。

「きゃー、ヤマト、すごい! 
ジュンは、ドイツでも
大人気なんだよ!」

中学生の美少女に、ジュンと呼ばれ、
純はデレデレである。

その様子に男陣・・・
藤田、洋介、大和は
ドン引きである。

「・・・こいつ、ロリコンか?」

藤田のつぶやきに、
洋介は首を振る。

「と、いうよりも、
金髪碧眼コンプレックス
なんじゃないすか?」

「これは、おもしろい!」

自分の彼女と話し込む純を見て、
大和は喜ぶ。

「喜んでる場合じゃないぞ。
純はバイだから、
ローザを取られちまうかもよ」

父親にそう言われて、
大和はニッと笑う。

驚くほどの大胆不敵な笑みが
あまりにも藤田にそっくりで、
洋介は思わず笑ってしまう。

大和は洋介を見て、
頭を下げた。

さっき、ざっと藤田が
紹介したので、
純のパートナーだと
いうことはわかっている。

「洋介さんは、思っていた
通りの人だなぁ」

大和の言葉に、
洋介は首をかしげる。

「純さんが選ぶパートナーさんは、
やっぱりオーラが温かい」

少年の直球に、
洋介は「恐れ入ります」と
おどけて見せるしかない。

「父さんみたいな
ギラギラタイプは、
胃にもたれるもんね」

大和にそう言われ、
藤田は、フンッと鼻を鳴らす。

「子供がわかったような
口きくんじゃない。
お前みたいなガキが、
純や洋介のような
アーティストに会えるのは、
オレ様のおかげなんだぜ」

藤田の大人げないコメントに、
妻の亜也子は苦笑しながら、
料理を運んでくれる。

「純さん、洋介さん、
いっぱい食べて、飲んでいってね。
大和とローザは、お酒、ダメよ」

大人たちはワインで、
子供はソーダで乾杯ときて、
大和はつまらなそうな顔をする。

それを見て、ローザは
くすっと笑う。

「ヤマト、学校じゃ大人だけど、
おうちじゃ子供」

食事会は盛り上がり、
どういうわけか、
藤田と洋介の会話が中心になる。

純の関心がある者同士、
意気投合したという感じだ。

自分が話題になっているのに、
あまり会話に入れてもらえず、
純はさみしくも、うれしい思いで、
ワイン片手に、リビングとつながった
テラスから、庭に下りる。

月夜の晩は、
温かな藤田ファミリーを
照らしている。

純はまたそれもうれしくて、
顔をほころばせる。

大和はローザと話していたが、
ローザが化粧直しに
立ち上がると、
すぐさま純の後を追って
庭に下りてきた。

それを目の端で見ている藤田。

だが、庭の暗闇までは見えず、
フッとあきれて笑う。

突然追いかけてきた大和に、
純は驚く。

「ローザは?」

大和は何も答えず、
純の腕をつかんで、
自分より長身の純の身を
かがませる。

「・・・ん?」

なにか言いかけた純の唇に、
大和は唇を重ねた。

子供ではなく、大人の口づけ。

あっけにとられる純に、
大和は、藤田と同種の
笑みを浮かべて言った。

「親父にも、洋介さんにも
取られたくない」

大和はそう言い残すと、
リビングに戻って行った。

その間、わずか、数十秒。

あっという間に戻って来た
大和の表情を見て、
藤田は眉をひそめる。

そして、テーブルの下で、
大和の足を
思い切り踏みつけた。

突然うなる大和に、
洋介も亜也子もびっくりするが、
藤田は涼しげに話しを続ける。

純は庭に佇み、苦笑した。

「・・・さすが、良樹の息子だな」


              続

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