HOLY NIGHTS 第15話「洋介の決断」(連続短編小説)
翔子とは、
それから2日間、
連絡を取れずにいた洋介。
やっと純の容体が落ち着き、
連絡したとき、
翔子は心配と不審の塊だった。
「・・・誰が、どうしたの?
洋介には、私の他に、誰かいるの?」
洋介は包み隠さず語った。
「純が、手首切った。
親友のオレが放っておけなかった」
「じゃあ、なんでその時、
事情を説明してくれなかったの?
私、この2日間・・・」
翔子の声が泣き声に変わる。
普通の男友達の事件なら当然、
洋介は翔子に事情を説明して
出て行くはずだ。
「・・・洋介は、私より、
純が大事なの?」
その言葉に
しばらく固まる洋介。
翔子は好きだった。
だが、自分の人生に純が
いないことは想像できない。
「はっきり言って!!」
翔子のヒステリックな口調に、
洋介は深呼吸して、
そして、言った。
「・・・オレは、純を愛してる。
翔子と比べるつもりはないが、
愛している」
翔子は、数分間、
黙っていた。
「・・・つまり、逆でも・・・
私が自殺未遂して、
洋介が純と一緒にいても、
純を置いて、私のところに駆け付けて
くれたってこと?」
それは間違いない。
洋介はその通り言った。
が、翔子は、純と洋介の関係に
拒絶反応を示す。
「男の人と寝て、私とも寝てたの?
ありえない。
私か純か、どちらかにして。
それ以前に、洋介は私を
裏切っていたって自覚なかったの?」
女の子の責め立てに、
洋介はうんざりした。
そりゃ、浮気は、自分が悪い。
しかも相手が男なら、
女の翔子には耐えがたい
屈辱だろう。
しかし今、病室で、
いろんなチューブにつながれている
純をおいて、
翔子の自尊心を満たす気には、
洋介はとうていなれなかった。
「・・・ごめん・・・」
洋介の言葉に、
翔子は、がしゃん!と
電話を切った。
女の子として、
当然の反応だろう。
ぼんやりして病室に入って
来た洋介を、純は見つめた。
「・・・オレのせいで・・・」
そう言いかけた純を、
洋介は制した。
純のせいでもある。
しかし本当は、やはり、
自分の心の問題だ。
洋介は起き上がりかけた純の体を
そっとベッドに戻した。
「お前のせいじゃない。
それに、もうこんなこと、
二度としないと言うなら、
オレはお前のそばにいる。
お前の悩みも苦しみも
分かち合いたい。
翔子よりも、
国沢純と生きていきたい」
洋介の言葉に、純は、
しゃくり上げるくらい泣いた。
「・・・本当に、オレのそばに
いてくれるのか?」
「ああ、ずっと」
「オレが浮気しても?」
「そんな話、今、するな」
洋介はベッドに横たわった純の髪を
やさしくなでて言った。
「・・・ずっとそばにいるから、
ゆっくりお休み」
純はぐずぐず泣きながら、
洋介の手を握って目を閉じた。
「どこにも行かないで、ヨウ・・・。
これ以上、一人にしないでくれ・・・」
洋介は、純の手を握り、
うなずいた。
純は泣きながら、
すーっと眠りについていった。
その日以来、
洋介はずっと純を見守っている。
浮気で、気ままで、
繊細な国沢純を。
それは、男のやさしさなのだろうか、
洋介の想いはいまだに変わっていない。
続
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