HOLY NIGHTS 第20話「予想に難くない展開」(連続短編小説)
「え・・・? 純さんが作るの?」
「作詞は、する。作曲は未定。
但し、ド演歌にはしない。
・・・っていうか、
かれんさんはOKなの?」
純とかれんは、
隠れ家的カフェにいた。
都会の路地裏にある
そのカフェは、殆ど客がおらず、
ニット帽にメガネの純と、
カジュアルな服装に
サングラスのかれんは、
誰の目にも留まってなかった。
かれんは意味深にほほえむ。
「純さんは、まだ聖司くんと
繋がってたりするわけ?」
世間一般に知れ渡ったスクープを
かれんもやはり、つついてみたいようだ。
「いや、聖司とは、会ってない。
それに、これは、良樹の案だ」
藤田の名前に、
かれんは微妙な表情をする。
「純さんと藤田さんも、
おかしいんだよね」
「何が?」
「関係してるでしょ?」
純はちょっと言葉を選ぶ。
「ああ、ビジネスで関係してる」
純の慎重な回答に、
かれんは余計、複雑な表情になる。
「そういうイミじゃない」
純は黙ってしまう。
これ以上、明かす必要も
義務もない。
かれんは美しい顔を
プンと膨らませる。
「・・・藤田さんと私のコトも
知ってるんでしょ?」
そのストレートな問いに、
純は面食らった。
藤田から黙っておくよう、
念押しされていたこと。
すっとぼけるしか、なかった。
「何、何? かれんさんと良樹、
なんかあるの?」
純の態度にかれんは
本気で拗ねる。
「そーきますか。
なら、それでいい。
私のことは忘れて。
そして、純さんは聖司くんに
未練はない。
そーゆー現状でOK?」
かれんの意図がわからないが、
純はとりあえずうなずいた。
と、かれんは、純の顔に手を伸ばし、
ムギュッと頬をつねった。
「憶えておきなさいよ、その現状」
あまりの気迫に、
純はうなずくことしかできない。
「では、益子かれんこと
マリー・ゴールドは、その話、
乗ります」
「いいの? 事務所とか・・・」
「マリーが、かれんだってバレた時は、
一悶着あるでしょうけどね」
「え? かれんさん、
事務所にマリー・ゴールドの件は
話してないの?」
「サクッと話しいたけど、
お遊びなら、自己責任でやれって。
だから、マリーはフリー。
そして、マリーはちょっと
国沢純の生態が気になってる」
かれんは、ぐいっと
純の顔を引き寄せ、
頬にキスして、立ち上がった。
「曲ができるのを楽しみにしているわ。
お会計、よろしく」
さっそうと立ち去る
かれんの唇の柔らかさと、
これから起こると予測される
複雑な人間模様に、
純はしばし、固まっていた。
続
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