青の夏の夜(シナリオ)
人物
リョウ(21)バー・ブルーの店員
ユウジ(32)映画の助監督
レイア(21)バー・ブルーの店員
オスカー(28)商社マン
スミス(23)バー・ブルーの店員
バー・ブルー・店内(夜)
外国人がひしめくバー。
リョウ(21)は、
白人、黒人の男女から
声をかけられている。
小柄だが、やせすぎず、
太りすぎず、童顔で、
高校生にも見えなくもないリョウ。
笑顔は仔犬のように無邪気で、
女の客からは、子供のように
ハグされ、男の客には
怪しげな口笛を吹かれる。
同・バー・カウンター内(夜)
空になったグラスを集めて
戻ってきたリョウを、
レイア(21)は、ヒューッと
口笛でおちょくる。
リョウ「お前はゲイの外人客か?」
リョウの反応に、
大らかに笑うレイア。
レイア「自分の立場を正しく理解
しているようで、よろしい!
ところで、彼氏が来てるわよ」
レイアの目線に沿って、
店の入り口付近に目を向けるリョウ。
オスカー(28)が、目で合図している。
リョウ、レイアの方を見て
にやりと笑う。
レイア「バーカ。ごちそうさま」
パーク・ホテル・外観(夜)
超高級ホテル。
同ホテルの一室・中(夜)
ベッドに座り、一服する
オスカー。
リョウ「・・・今回は、いつまでいるの?」
それを聞いて、
リョウの髪をなでるオスカー。
オスカー「・・・商談次第」
リョウ「・・・早く帰っちまえよ、ヘンタイ野郎」
オスカー、笑いながら、
タバコを消すと、再び、リョウの上に
覆いかぶさる。
バー・ブルー・店内(夜)
店の時計は、7時半を指している。
まだ、客は少ない。
リョウとレイア、カウンター内にいる。
レイア「で、あの金髪のハンサム君、
何てったっけ?」
リョウ「・・・オスカーのこと?」
レイア「うんうん、そのオスカー君とは、
もちろん、そういうコトなわけ?」
リョウ「そういうコトって?
男同士で、高級ホテル泊まって、
ナニしてるかってこと?」
レイア、けらけら笑う。
レイア「高級ホテルなんだぁ、いいなぁ」
リョウも笑う。
レイア「で、ナニ?」
リョウ「・・・ナニ?」
変な間があって、吹き出す
リョウとレイア。
その間に、時々、客から
酒の注文が入る。
再び、落ち着いたところで、
リョウ「で、お前は、どうなんだよ?」
レイア「リョウと違って、そうそう
とっかえひっかえしてないわよ」
リョウ「おっ? 本命登場か?」
レイア「うーん、今んとこ、そうかな」
リョウ「おー、誰? 客?」
レイア「違うわよー。
映画関係の仕事してる人」
リョウ「すごいじゃん」
レイア「一回りくらい年上なんだけど
生きてる世界が違うインテリよ。
助監督やってるらしい」
ヒューッと口笛を吹くリョウ。
レイア、まんざらでもなく
喜んでいる。
バー・ブルー店内(夜)
混み始めた店内に、オスカーが
入って来る。
一直線に、他の客と話している
リョウのもとにやってるくオスカー。
オスカー「リョウ」
リョウ、振り向きざまに、
オスカーに抱きしめられ、
ディープキスをされる。
ざわめく周辺の客たち。
オスカー「明日の朝、NYへ戻る。
10日後、またこっちへ来るから・・・」
ポカンとしているリョウを
もう一度抱きしめるオスカー。
オスカー「(英語で)オレ以外の男と寝るなよ」
他の客にも聞こえるように言って
ウィンクすると、店を出ていくオスカー。
リョウ、終始、ポカンとしている。
バー・ブルー・店内(夜)
店内の客は、まだ、まばらな状態。
スミス(23)とカウンターの中に
いるリョウ。
スミス「昨夜は、オーナーに怒られたんだって?」
リョウ、ぷりぷりしながら、
リョウ「ここをゲイバーにする気か!?
・・・だってさ」
手をたたいて笑うスミス。
と、突然、
スミス「あれ! レイア、おはよー!」
リョウが入口の方を見ると、
レイアがユウジ(32)と
店に入って来るところだ。
スミス「オフの日に、彼氏と
うちでデート?」
レイア、照れくさそうに
レイア「彼がどうしても、ここを
見てみたいって言うから。
すぐに帰るわよ。
スミス、ビール!」
ビールをつぎに行くスミス。
リョウ、ユウジと、バチリと目が合う。
180センチ近い長身で、ガタイのいいユウジ。
レイア「リョウ、こちらがユウジさん。
ユウジさん、これ、うちのゲイバーの
看板息子のリョウ」
ユウジ「ゲイバーなの、ここ?」
周囲の客の笑いの中、
ユウジの視線が興味津々に
リョウに突き刺さる。
リョウ、その視線から逃れようと、
目をそらす。
ユウジ、それに気づき、怪訝そうに
更に鋭くリョウを見つめる。
一方、レイアは何も気づかず、
スミスからビールを受け取り、
ユウジに渡す。
レイア「リョウと働いて、もう4年かな?
いい子なんだよ」
ビールを飲みながら、店の説明を
するレイナ。
それを聞きながら、ユウジ、何度も
リョウを見つめる。
同・バー・店内(夜)
レイアのいないところに、
リョウとユウジがいる。
ユウジ「・・・リョウっていうんだ」
リョウ「・・・」
ユウジ「・・・いい目をしてるね。
いつか手に入れたい類いの目だ」
フィルター越しに見るように、
リョウを見つめるユウジ。
リョウ、その視線に耐えられず、
目を伏せる。
かすかに体が震えている。
ユウジ「オレは、本当に手に入る気がする。
君は、どうだ?」
リョウの部屋・ベッドの中(夜)
一人、眠っているリョウ。
リョウの夢の中
ユウジの大きな体に抑え込まれる
リョウ。
身をよじるが、力の差で、
全く身動きがとれない。
ユウジ、リョウの抵抗に、フッと
笑うと、激しくリョウに唇を重ね、
その体をまさぐる。
オスカーと同じくらい逞しい
ユウジの肉体。
リョウ「・・・待って、アンタ、レイアの・・・」
もとのベッドの中(夜)
夢からさめたリョウ、
汗ぐっしょりで、肩で息をしている。
ベッドから出ると、バスルームに
駆け込むリョウ。
リョウ「・・・おい、レイアのオトコだぜ・・・?」
バー・ブルー店内(夜)
客もまばらな店内。
レイア「ねぇねぇ、彼のこと、どう思った?」
カウンター内で、リョウに
尋ねるレイア。
リョウ「うーん、いいんじゃん?
タッパもあるし、ツラも悪くないし」
レイア「外見のことじゃなくてさ、
彼、インテリだし、私なんかでいいのかな?」
女の子らしく恥らうレイアを見て
ちょっとためらうリョウ。
リョウ「レイアにしては、珍しく、
ずいぶん、惚れ込んだんだな」
頬を赤らめ、うなずくレイア。
レイア「芸術系の人って、すごいなって。
巡り合えたのが奇跡みたい」
リョウ、ビミョウな表情で、
しかし、陽気に、
リョウ「へーえ、意外と乙女なんだ。
見直したぜ、レイア」
幸せそうにしているレイアを
複雑な表情で見つめるリョウ。
バー・ブルー・出口(夜)
閉店して、店を出るリョウ、レイナ、
スミス。
レイアが携帯を見えて、怒る。
レイア「もー、ドタキャン、ヒドイ~!」
リョウ、ドキッとしながら、皆と
別れて、帰り道へ向かう。
そして、ハッと立ち止まる。
都内・マンション・寝室・中(夜)
リョウの声、ベッドがきしむ音。
同・寝室・中(夜)
ベッドに横たわるリョウ。
窓辺のソファでユウジがタバコを
吸っている。
リョウ「サイテーだな、オレたち・・・」
ユウジ「・・・」
リョウ「・・・レイアとも、このベッドで・・・?」
ユウジ、ベッドに戻ってくる。
ユウジ「オレは、本当に手に入れると言った。
君もそう思った。だろ?」
ユウジ、リョウの唇を吸うと、
その上にゆっくりのしかかる。
リョウの手が、恐る恐る、
ユウジの大きな背中に伸びていく。
ユウジ「・・・そうだ、坊や、君も
そう思ったんだ。そうだろう?」
リョウ、狂ったように、ユウジの
体にしがみつき、唇を重ね合う。
了
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