HOLY NIGHTS 第9話「藤田邸にて」(連続短編小説)
かれんのOKが出て、
さっそく藤田を交えて
ミーティングが行われることになった。
が、かれんも、今のドラマの撮影中、
藤田も新しい番組の立ち上げで、
スケジュールが少し先に
なってしまった。
その間、純はデモテープを
準備することにした。
しかし、その前に、
かれんと藤田との関係、
地方でのラジオの一件を正すべく、
純は藤田に電話する。
どこにいるか確かめるためだったが、
案の定、オフィスにはおらず、
自宅で缶詰状態だった。
藤田良樹には、妻がいた。
そして前妻との間に、
中学生になる息子がいる。
そんな自宅に押し掛けるのも
どうかと思ったが、
藤田の「来い!」という
強引な一言に、純はのこのこと
藤田邸にやってくる。
息子の大和は、昔から純の
大ファンで、大喜びである。
前妻の沙希によく似た美少年は、
背も伸びて男らしくなっていた。
藤田が今の妻、亜也子と
再婚したときに以来なので、
5年ぶりだろうか。
「よぉ、ヤマト、でかくなったな」
「だって純さんと前に会った時、
僕、小学4年生だったもん!」
「今は・・・中学・・・?」
「2年。もう14才」
亜也子より、前妻の沙希との方が
面識のあった純は、
大和を身内のように感じた。
「そうかー、大きくなったなぁ、
おじさんもうれしいよ」
まだ声変わりするか
しないかの声で、大和が
笑っていると、
亜也子がお茶をもって、
二人のいる応接室に入って来る。
「まぁ、本物の国沢純さんだわ」
結婚式以来、会っていなかった亜也子は、
質素ながら、透き通るような美人だった。
「ご無沙汰してます、突然すみません」
「母さん、純さん、甘いの好きだから、
さっきのケーキ持ってきたら?」
今までケーキを焼いていたらしく、
家中、甘い香りがしている。
「ああ、そうね、ヤマト、ナイス!」
キッチンへと引き返した亜也子を見届けて、
純はつぶやく。
「ヤマト、すごいな。
ホントの母さんみたいだな」
「ホントの母さんも、よく遊びに来るよ」
「へ?」
「みんなそろって、ここで
ご飯食べたりするんだ」
なんと開かれた家庭だろう。
純は感心した。
「さすが良樹だ・・・。
沙希さんは、再婚してないの?」
「いや、してる。旦那も連れてくるから、
5人で食事とか、
僕の彼女も入れて6人とか、だよ」
「おー、ヤマト、もう彼女いるのか?」
「あの父にして、
この息子アリだからね」
意外に父の性癖をあっさり
認めている大和がおかしくて、
純は笑ってしまう。
「純さんも、今度来ればいいのに」
その時、シフォンケーキを持って、
亜也子が戻って来る。
「ねぇ、母さん、今度、
純さんも、食事会来てもらおうよ」
亜也子は目を輝かして喜ぶ。
「ええ!? 純さん、
いいんですか?」
純は話しの展開についていけず、
笑ってうなずくことくらい
しかできない。
「純さんも、誰か連れておいでよ!
男女問わないよ」
大和の発言に、さすがに亜也子は、
大和の口を押さえる。
純は苦笑する。
「まいったなぁ、こんなに
藤田家が開かれたファミリー
だったとは。
ヤマト、じゃあ、今度、
オレのオトコ、紹介してやるよ」
三人で盛り上がっていると、
藤田がドアの前で咳払いした。
「コラ、純、まだ中学生の息子に、
何を教え込もうとしてるんだ?」
続
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