見出し画像

僕たちの景色 4 (連続短編小説)

話を今に戻そう。

「ハルちゃんと同じ学年なら
朋明くんは中学1年生?」

僕の問いに、ジンは面倒くさそうに
答える。

「俊さんは、年齢気にするけど、
オレの適正年齢は30才くらいだ。
朋明も、苦労してるから、
中学生とは思えない」

ここら辺もジンはアキラと
似ていて、考え方や行動が
すでに大人なのである。

「朋明くんとどんな話するん?」

「樫井のおばちゃんの話や
アキラのこと。
なんで、アキラは樫井のおばちゃんと
結婚しなかったんだろう」

それは、幼少の時期から
聞かされている、「ジンができちゃった」
からである。

「それは、まぁ、しゃあないやん。
オトコとしてのけじめとして
いったん、かーちゃんと結婚した。
でも朋明がいるってことは、
ハルが生まれる頃には
アキラはまた、樫井のおばちゃんと
付き合っていたわけやろ?
そこらへんがようわからん」

自称30才のジンも
さすがに実年齢16才とあっては、
そこらへんのあいまいさは
わからないだろう。

僕は言葉を濁した。

「大人の事情っつーのがあるんだよ。
それに樫井さんも、朋明くんが
生まれたこと、アキラに言ってなかったんだろ?」

なんとなく気まずくなり、
僕はその樫井さんと朋明くんの様子を
伺う。

「樫井のおばちゃんは、かーちゃんより
少し年上だけど、賢くて落ち着いた
人だと思う。
少なくても、ダンナが死んで1年で
再婚するタイプじゃない」

ジンは、すでに、実の母より
アキラの愛人を慕っていた。

「朋明くんは?」

「やっぱ、アキラに似てる。
目力とか、洞察力とか。
いつか、一緒に仕事したい」

ジンの話に僕も亜矢も驚いた。
ジンは、アキラ仕込みで
中国語も堪能だ。
朋明は、語学は得意ではないそうだが、
何か別のセンスを持っているようだ、
とジンは言う。

今更、アキラの前妻、由佳里に
気をつかうことはないが、
どうもその朋明とも遠からず
出会う予感がした。

                続

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?