HOLY NIGHTS 第11話「大和」(連続短編小説)
藤田大和は、
実母の沙希に電話をしていた。
「今日、純さん、来たよ」
「あら・・・」
沙希の心配そうな声。
「亜也さんは知ってるの?
あの人と純さんのこと」
幼い頃からそんな話ばかりを
聞かされてきた大和は
平気で答える。
「知ってんじゃない?
まぁ、僕の前で
そーゆー話してるの
聞いたことないけど。
大人同士、察してるんじゃないかな」
「そうね、バレちゃうわよね」
沙希のあきれたような溜息。
大和はちょっとして、尋ねた。
「・・・そのさ・・・大人っていろいろ
あるんだろうけど・・・
父さんは僕より、純さんが
好きなのかな?」
「はぁ?」
電話口で、
沙希は耳を疑う。
「妙な比較をする子ね~、
そんなの、ヤマトの方が
大事に決まってんじゃん。
愛情の種類によっては、
純さんや、亜也さんや、
それに今でもちょっと私にも
残っているかもしれないけど、
一番大切なのは、
ヤマトだってことは間違いない!」
大和は笑う。
「沙希ママにも、
まだ未練あるのかー」
大和は、亜也子のことを
‘母さん’と呼び、
沙希のことを‘沙希ママ’、
と呼ぶ。
‘先’のママ(幼児語を残した)という
大和風の皮肉だったが、
二人の母を区別するための
少年の苦肉の策でもあった。
「・・・純さんって、独身?」
大和の質問に、沙希は苦笑する。
「たぶんね。
でも、良樹と同じタイプ。
いろんなところで、
いろんな恋愛してるんじゃないかしら」
「沙希ママは、平気だったの?」
「・・・さぁ、平気じゃなかったから、
別れたんでしょうね」
「ふーん、大人ってややこしい」
大和の口調から、
母は何か本能的に感じ、忠告した。
「良樹にヤキモキするのは
結構だけど、
純さんのホレたりするのはナシよ」
大和はびっくりする。
「何で、そういう発想になるわけ?」
「さぁ、母親の直感?
あんたも良樹の息子だからね。
クギ刺しとくわ。純さんは、
年下の男の子、相手にしないから、
傷付く前に言っておく」
大和は笑ってしまう。
「でも、純さん、そんなに
若くないじゃん」
「まぁ、ヤマトからすればね。
でも、まだ、
30半ばくらいかな?」
「父さんよりは年下だ」
「そう、そして、あんたよりは、
ずいぶん年上」
大和はクスクス笑う。
「沙希ママ、やぶへびだよ。
僕の中で、まだ表面化してない
想いまで言いあてちゃって」
「悪い芽は、早いうちに摘め、よ。
もう男色はこりごりなの。
それに赤の他人ならまだしも、
同じメンバーでぐるぐると・・・」
「へー、すごい、アメリカの
青春ドラマみたいだね」
「バカバカしい!
そんなの地でやってる奴らに
巻き込まれないことね!」
沙希はいろいろ思い出したらしく、
憤慨して電話を切る。
大和は、良樹とそっくりな表情で
笑った。
「国沢純かぁ・・・」
続