バスが行く-800

作品解説 「バスが来た」、「バスが行く」

画像1

「バスが来た」(左)
使用画材:紙、オイルパステル
 サイズ :228 × 318     

「バスが行く」(右)
使用画材:紙、オイルパステル
 サイズ :236 × 322     

 幼稚園の時、歩いて幼稚園まで通っていました。子供の足で片道40分ほどかかっていたと思います。堤防沿いに走る国道の脇を車がたてる砂埃にまみれながら雨の日も風の日も歩いて通っていました。台風の暴風雨のなかを傘をさしながら帰ったこともあります。
 しかし春先や秋口の天気のいい時はすこぶる快適でした。道沿いのキャベツ畑に群れ飛ぶモンシロチョウと戯れたり、秋は稲刈りの終わった田んぼで友達と追いかけっこをしながら帰ったりしていました。
 ある日、友達三人で帰りにそんな道を追いかけっこをしながら帰っていました。狭い道路なので歩道なんか無くて白線が引かれているだけです。私が追いかけられて先頭を走っていて、その後二人が追っかけて来ました。後ろから手が届きそうになって私は思わず目をつぶって車道側に逃げてしまいました。その時ちょうど後ろからバスが来ていたのです。バスは寸前のところで急ブレーキで止まってくれて、体にあたりもせず無事でした。その時のフロントガラス越しに見えた運転手の驚いた顔がいまだに浮かんで来ます。
 怒られるかと思いましたが、前後を走っていた車から皆が降りて来て「大丈夫か?」と心配してくれました。私は泣きもせずただ呆然としていたような気がします。
 バスの後ろにはタクシーが止まっていて、お客さんを乗せていたにもかかわらず家まで相乗りで送ってくれることになりました。その時乗っていたのが綺麗な花嫁衣装のお嫁さんでした。ニコッと笑ってくれたような記憶があります。あやふやな記憶ですが、本当は迷惑そうな顔をしていたのかも知れません。大事な時にややこしい事に関わらせて申し訳けなかったと思っています。ましてやバスではなく一つ遅れてこのタクシーに轢かれてしまっていたら、一生で一番大事な日を台無しにしてしまうところでした。


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