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インド駐在のリアル―夢の高待遇と大気汚染
はじめに
筆者は大学時代の友人がインドに駐在しており、インドに遊びに行った際に「どんな生活をしているの?」「給料や待遇は?」と気になることを色々聞かせてもらいました。
本記事では、その友人から直接聞いたリアルな声を交えながら、インド駐在の給与・待遇や生活スタイル、現地での楽しみ方などをまとめました。また健康問題として深刻な大気汚染や、運動面での苦労(歩道が未整備、外で走るのが難しいなど)にも触れています。今後インド赴任の可能性がある方の参考になれば幸いです。
1. インド駐在員の給与・待遇
ハードシップ手当(危険地手当)と給与水準
インドは治安や衛生環境が日本より劣る地域と見なされるため、多くの企業では「ハードシップ手当(危険地手当)」が支給されます。相場は月10万~20万円程度とされます。
私の友人の場合は日本円で1,200万円/年ほどで税金も会社負担ということで、ほとんどが手取りとなるということでした。給与の円とルピーの比率は自分で決められますが、ルピーが多すぎても使えきれず、円やドルと比べると安定した通貨とはいえないので、比率の決め方は重要と感じました。
一方で投資環境があまり良くないらしく、日本でやっていた株式投資や暗号資産投資ができていないことでの遺失損は最近の相場においては大きいものとなっているように思えます。
シンガポールでの筆者の海外駐在手当てについてはこちらで解説しました。
充実した手当と会社負担
海外勤務手当やハードシップ手当に加え、以下のようなサポートがあるとのことです。
住居家賃(月40万円相当)会社負担
年2回の帰国(もしくはシンガポール、タイ)航空券支給
子供の学校費用(日本人学校の費用分のみ支給)
インドは物価が日本の1/10程度といわれるほど安く、特に野菜や乳製品などの現地産品は驚くほど低価格。一方で輸入品や酒・タバコは関税+28%のGST(消費税)がかかり、割高です。とはいえ、大きな出費となる住居や車が会社負担の場合、現地での生活費は非常に抑えやすく、貯蓄を大幅に増やすことが可能です。給与・手当が増えたうえ物価が安い環境は、資産形成にも絶好のチャンスといえるでしょう。
2. インド駐在の生活スタイル
高級コンドミニアムと運転手付き社用車
多くの日系企業は、駐在員に対してセキュリティ万全の住宅(高級コンドミニアムや一戸建て)を会社契約で用意します。家賃は全額企業負担が一般的。月40万円近い豪華物件(4LDKクラス、広さ100㎡〜規模)に住むことができます。
さらにインドでは徒歩移動が現実的ではない(歩道がほぼ未整備、埃や車が多い)ため、運転手付きの専用車が支給されることが多いです。休日でも運転手を呼び出して使え、Door to Doorで安全に移動できるため、とても便利です。
家事はメイドにお任せ
駐在員家庭の多くが**メイド(家政婦)**を雇い、掃除・洗濯・料理を任せています。週数回のサービスを会社が負担する場合もあれば、個人で月1万~2万円ほどの給料を支払って毎日来てもらうケースも。
健康面で要注意:大気汚染と運動のしづらさ
一方で、インド(特にデリー周辺)では冬場の大気汚染が非常に深刻です。PM2.5の数値が世界最悪レベルになる日も珍しくなく、現地の人も外出時にはマスクや空気清浄機の使用が欠かせません。屋外でのランニングやウォーキングを続けるのは難しい状況です。
また、都市部でも歩道が整備されていない場所が多く、車もクラクションを頻繁に鳴らしながら猛スピードで走るため、「気軽に外を走る」環境はほぼ期待できないと言っていいでしょう。健康維持や運動不足解消には、室内でできる運動(ジム、ヨガなど)やエアロビクス系のレッスンに通うなど工夫が必要です。
3. インドの休日・娯楽事情
日本人向けカラオケバー
デリー首都圏、とくにグルガオンには日本人向けカラオケバーが存在しています。日本語が話せるホステスがいたり、日本食をつまみながらカラオケも楽しめたりと、「インドにこんなお店が!」と驚く駐在員も多い模様。料金はインドにしては高額で、2人で4万円前後でした。(初回のボトルオーダーあり)
ゴルフ天国
デリー近郊はゴルフコースの数が多く、料金もキャディ付きで数千円程度と日本に比べて破格。ゴルフ好きにはたまらない環境で、駐在員同士のコンペや対抗戦も盛んに行われています。
ただし、大気汚染が悪化する時期には屋外スポーツを控える人も増えるので、駐在時期や季節によっては思う存分楽しめないこともある点は要留意です。
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サークル・コミュニティ活動
インド駐在員の間では、日本人会や各種サークル活動が盛んです。フットサル、ダンス、料理研究会、県人会、太鼓(和太鼓)サークルなど、その種類は実に多彩。「ボリウッドダンスを踊る日本人サークル」なんていうインドならではのユニークなものも。
観光やショッピング
デリーやグルガオンは大都市ゆえ、大型ショッピングモールや日本食レストランも多く、想像以上に生活が便利です。オンライン宅配サービスを利用する人も増えており、重い荷物をわざわざ買いに行かなくて済むのも助かります。
観光面では、世界遺産のタージマハル(アグラ)やピンクシティジャイプールなどが車で3~4時間圏内で行けるため、週末の小旅行が定番。一方で、冬は大気汚染がひどく外出しづらいシーズンもあるので、家でNetflixや読書を楽しむ駐在員も少なくありません。
4. デリー・エアロシティの“別世界”
日本企業のオフィスが集積
デリー空港近くのエアロシティ(Aerocity) は、近年急速に開発が進んだビジネス拠点です。商社や金融機関のインド拠点が集まっています。ホテルやショッピングモールも整備され、道路や街並みがピカピカで「ここだけ欧米のよう」と言われるほど。空港から至近なので、出張者や旅行客にとっても利便性が高いエリアです。
エアロシティは「インドじゃない」?
エアロシティは新興の計画都市のように作られたため、インド特有の雑踏や喧騒、未整備の道路とは無縁。高級ホテルやオフィスビルが整然と並び、清掃や緑化が行き届いています。飲食店も各国料理が揃っており、日本食レストランやラーメン店まであるので、長期滞在の日本人にとっては“心のオアシス”のような場所。その分、モールやレストランの価格帯はローカルエリアより高めですが、安全・快適さを買うという意味で価値を見出す駐在員が多いようです。
5. 日本人コミュニティのヒエラルキーと結束力
商社・大手企業が中心的存在
インド駐在社会は伝統的に総合商社や大手メーカーの駐在員が多く、そのネットワークや情報発信力が大きいです。商社の場合、給与・住宅手当も他社より厚遇されるケースがあり、「同じ駐在でも別格」という話を聞くことも。ただし現地での仕事は業種を跨いだ連携も多く、商社・メーカー・金融などが協力し合う場面が少なくありません。
おわりに
ここまでインド駐在員の給与・待遇から普段の生活、娯楽・コミュニティ事情まで紹介してきました。筆者の友人いわく、「大気汚染さえもう少しマシなら、これほどおいしい駐在先はない!」というほど金銭面や生活コストの面ではメリットが大きいとのこと。ただし外の空気環境は厳しく、運動不足への対処や健康管理はしっかり意識する必要があります。
とはいえ、メイドや運転手付きの暮らしは日本では味わえない快適さ。物価が安く、お金も貯めやすい。さらに日本食レストランやゴルフ場、週末の小旅行など、娯楽の選択肢も十分にあります。インドはネガティブな面も多々語られがちですが、現地の楽しみ方や対策を知ることで「思ったより快適に暮らせる」と感じる方も多いようです。