小さな船
レトロな商店街。タイムスリップでもしたかのようなその世界観の中を抜けると、洗礼された店が現れる。
街路に飛び出すような看板もないその店は、真っ白な壁に優しい木材の扉があり、初見ではなんの店かわからないかもしれない。
扉をあけると、先程までレトロな商店街で漂っていた一個60円のコロッケの匂いは、深呼吸したくなるような甘いような少し苦味を残すような、そんな香りに変わる。
扉一枚しか隔てていないのに、外の喧騒は消え、森の中の店にいるような感覚になる。
もちろん、音楽も流れているし、耳をすませば外の音は聞こえるのだけれど…。とにかく落ち着いた空間なのだ。
いらっしゃいませ。と優しい笑顔の紳士に案内される。
大きな鏡の前にある、革のふかふかの椅子に座ると、後ろから覗き込むように笑顔が降ってきた。
あなたに会いに来ました。と言いたくなるほどの笑顔に癒やされながら、紳士に魔法をかけてもらう。この紳士、とんでもないほどの大魔法師だった。
シャワーの音。
髪に触れる優しい手。
上から降ってくる優しい声。
このまま全てを委ねたくなるような…そんな落ち着いた、優雅な空間。
水音を聞いていて、紳士の声がして、ふと思う。
ここは森の中じゃなくて、「小さな船」の中だ。
潜水艦のようなものの中に匿ってもらっているような感覚。街の喧騒から隔離されて、私だけのための魔法使いが、私だけのために魔法を披露してくれる。
またこの船に私は乗るだろう。
乗りたいと願うだろう。
紳士の優しい笑顔と素敵な魔法にかかるために。
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ノーチラスとゎラテン語で「小さな船」という意味だそうです。
神奈川県、白楽駅の近くのノーチラスヘアという美容室。
久々にあたりの美容室を発見しました。
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