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断固たる決意 マッカーサーと吉田茂
こんにちは。
巣ごもりの日々で読書が捗ります。
「指導者とは」(リチャード・ニクソン著 徳岡孝夫訳 文藝春秋)を読んでいます。読了はしていないのですが、某雑誌で齋藤孝さんがおすすめしていた、「マッカーサーと吉田茂」の章をご紹介したいと思います。
本書は、第37代米国大統領のリチャード・ニクソンの回顧録であり、当事者の生々しい会話やエピソードによって、歴史の現場を垣間見ることができる良書です。
リーダー同志の厚い信頼関係を構築し、双方の信念を持って対峙して戦後日本の復興に取り組んだことを、初めて知ることができました。
「マッカーサーと吉田茂」
両国の代表として第二次世界大戦後の日本国のあるべき姿を追求し、マッカーサーは時代の趨勢、その後の世界の大局を見て理想的な日本の立ち位置を模索し、ビジョンを掲げます。
一方吉田茂は、日本の実情を踏まえ、取り入れるところは全面的に取り入れる。日本の過去の歴史、文化に鑑み浸透しないであろう施策については臆せず反対し、日本に取り込みやすい形で提案し、国民を説得する。
(引用)
「マッカーサーの部下が意図した改革に抵抗したことで、吉田は日米双方のリベラルから、激しく非難された。だが、振り返ってみると、彼は正しかったのである。労働、産業から教育や司法に至るまで、改革案の多くは戦後の日本の現実を無視していた。誰も占領軍への抵抗をあえてしなかった時に、吉田は日本の国益のため、過激すぎる改革案に対しては頑固に抵抗した。実はこれこそが、マッカーサーの占領を成功させた鍵であった。」
両国の立場を代表し真剣に日本の目指すロードマップを具体的施策に落とし込み、農地改革、新憲法制定などを、次々に実現していきました。
(引用)
「マッカーサーの高遠なビジョンがなければ、戦後日本の大改革はあり得なかった。だが、吉田が、慎重に細部まで目を配らなければ、そうした改革はいたずらに日本を混乱させ、混沌に陥れていたに違いない。
心の芯から西洋の子であったマッカーサーの生涯は、東洋に向かって開いた。東洋人であった吉田の人生は、西洋に向いて開いた。二人の人間性と、互いの文化を融合しようとする使命感が、日本列島の上で結びつき、お陰で新しい強力な戦後日本は誕生したのである。」
ニクソンの歴史考察は面白い!
本書は冒頭で紹介したとおり、ニクソン氏が立ち会った指導者たちの生の声とその瞬間を感じることができる良書ですが、もう一つ特筆すべき点は、ニクソン氏の深い洞察、その人物の詳細、その国の歴史的背景についても詳述されています。当然ながら、歴史の当事者であるニクソン氏サイドの見解であり、意見の偏りはあるとしてもその現場で生き抜いてきたリーダーたちの本音や決意、そしてその背景が読み取れることから歴史読み物としても大変興味深いです。
ぜひ戦後史で活躍したリーダーたちの生き方、考え方、生の声を感じて見たいという方にお勧めできる一冊です。(まだ、半分しか読んでいませんが、それぞれの人物談が1章ずつで完結しています。)