美術館散歩 #9 アカデミア美術館
アカデミア美術館にはミケランジェロの最高傑作、ダビデ像があります。
彼は巨大な大理石の塊から2年半をかけて高さ4メートルを超える青年の姿を掘り出しました。
旧約聖書の物語、ダビデが巨人ゴリアテと戦う場面を描いています。
過去に造られたダビデ像は戦いに勝った姿を描いたものが多いのですが、ミケランジェロは、今まさに戦いを起こすその瞬間を表現しました。
敵は歴戦の強者。羊飼いの青年ダビデの武器は投石機ひとつ。
はたから見れば全く勝ち目の無い戦いに、今まさに挑もうとする闘志あふれる姿をミケランジェロは掘り出しました。
この像は大国に屈しないフィレンツェの象徴として、前回取り上げたヴェッキオ宮殿の入り口に置かれ、人々の心を鼓舞したといいます。
しかし、当然風雨に晒されると痛むわけで、1873年に現在のアカデミア美術館に移されました。
今でもヴェッキオ宮殿の入り口にはそのレプリカが置かれています。
ダビデ像に続く長い廊下にはミケランジェロの未完の彫刻が展示されていました。
ミケランジェロは言います。
「人間の魂がその肉体の内に宿るように、彫刻作品のあるべき姿はその石塊の内にあらかじめ現れているものだ」
石塊の中に元々あるものを掘り出していく――
これらの未完の作品を観ていると、天才のその信念が伝わってくるような気がします。
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