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スタイリストの理想と現実。

ついに令和元年となりましたね。そんな時代になるんでしょうか。令和初出産、初結婚、初安打、初ホームランと令和初に注目が集まっていますが、「これが令和初逮捕!」とか次の警察24時でやってくれないかな。

 
元号が変わったついでに言うと、個人でスタイリストとして活動し始めて4年目を迎えます。その間にパーソナルスタイリスト的な活動をされる方も増え、著名なスタイリストさん個人にスポットが当たるようになったり、環境が変わってきたなと感じることも多くなりました。

 
僕個人としても一般の方からタレントの方、企業に向けた提案など領域が広がってきたのですが、その都度”スタイリストの理想と現実”ということについて考えさせられます。

 
結論から言うと、「センス良いワタシ」「スタイリッシュな仕事をしてるボク」を表現したいという方は向いてません。ファッションって裏方産業だからです。

 
パリコレとか見ていてもデザイナーさんは最後にサッと挨拶だけして風のように去って行く方が多いですよね。それは服が主役であって自分は裏方だからと言う意識があるからでしょう。デザイナーもパタンナーも販売員もスタイリストも、全ては服の魅力を伝えるため、着る人を輝かせるために存在しているわけです。

 
僕は元々バイヤー・販売員からスタートしたので、裏方産業だということは認識していました。表に出なくても仕事が入るなら出なくていいけど、個人でやってるので仕方なく露出してます。ホントですよ。

 
もちろん仕事に関わるのでセルフブランディングとしてある程度お洒落にキレイにしておくことは必要だし、仕事の一環としてSNSでの発信も必要な時代ではあるけど、仕事としては裏方であるという意識を忘れてはいけない。それはスタイリングに関わる人が多くなればなるほど実感することです。

 
例えば、個人と一対一ならお互いの意見を合わせて決めていけば良いわけですが、それがメディア対応になればマネージャーさんや関係者が増え、企業やコラボ案件になればさらに増えていきます。自分のペースでなんて出来ないし途中でオーダーが変わったり急に来たりすることも珍しくない。自分の意見を反映させることだけにこだわっていたら仕事は成り立ちません。

 
携わる人の意見をまとめて現段階でベストなスタイリング、着る人の評価に繋がるスタイリングを提供する。これしかないのです。スタイリスト個人にも洋服の好みはあるし自己顕示欲みたいなものもあるはずですが、それを越えてスタイリング出来るかどうかだと思います。”自分の好みを無視して提案された”なんて話を聞くと越えられてない人が多いのでしょう。

 
一部の売れっ子さんがピックアップされて、さも華やかでスタイリッシュな業界かのように思われている方も多いようですが、現場に居るとまったくそんな感覚はなくて。

 
ショップをアテンドするとなれば事前に下見して顔見知りのスタッフさんを作って融通利かせてもらったり、メディア向けにスタイリングするとなれば各所に打診しては「ファッション誌以外NG」「バラエティ番組NG」などと断られたら自前でも揃え、現場に行っては黙々とハンディスチーマーとブラシでセッティング。本番前に着せたら後の数時間は待機。地道な下準備が8割くらいの仕事です。相場から言ってコーデだけでは大きな収入にならないし時間効率は良くない。メディア関連なんかは丁稚奉公みたいな感じで最初はギャラ無しなんてケースも聞きます。

 
スタイリストをしてる自分が好きというだけでは間違いなく続かないし、洋服が好きというだけでも無理でしょう。「着せた時の化学反応が何より楽しみ、変化を一緒に喜べる」という人でなければ、長く続けていける仕事じゃない。

 
僕も、着せたときの変化や驚きをクライアントと同じテンションで喜べなくなったら引退だと思っています。それは着る人の気持ちが分からなくなったということを意味するから。いつまでも新鮮にビフォーアフターにワクワク出来る自分で居なければなりません。

 
結局、ファッション産業に従事する人は「矢印が自分から洋服を着る人」に向かっていなければ成立しないということです。良い仕事をした結果、作った人・コーディネートした人にも注目が集まる。矢印の向きが自然に変わる。いたって健全な業界だと僕は思う。

 
洋服もスタイリングもすべて着る人のためのもの。自分のセンスや力量をアピールするためのものではないと、僭越ながら改めて記しておきたいと思います。

 
どこの業界もそうですが、個人起業だ副業元年だとか言って安易に勧めるからおかしなことになるんですよ。そもそもファッション業界って安易に儲からないんだから。クライアントより自分が輝くためにやってる人とか本業の片手間にスタイリングしてる人に任せたいと思うのか、お客さん居ないのに講師ばっかり増やして大丈夫なのか、なんて余計な心配ですかね。

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